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第16話 逃避行②

 森を進む。

 かなり森の奥深くに来ているのか、木々の茂りは増している。

 昼間だというのに周りは薄暗い。


 稀に光が差し込んでくる場所があった。

 そこで時間と方角を確認しながら、地図を確認し前に進む。


 魔獣はマッドフォレストウルフを倒してからは一匹も出現していない。

 それに動物すらこの周辺にはいなかった。


 どうやらマッドフォレストウルフが徘徊しているエリアには他の魔獣も動物も近づかないようだった。


 それがどの範囲に及ぶのかは分からないが。少なくともあれから三日は無事だった。


 夜になる。


 俺達は野営にもすっかり慣れてしまっていた。

 いや、それは野営のプロである冒険者には失礼な話だろうか。


 ただただキッチンカーがあって本当に助かった。


 これは多機能で、おおよそ野営に必要な機能を持っている。

 調理器具はもちろんのこと、寝てる間は周囲に魔法結界を展開してくれるのだ。


 だから見張りの必要がない。

 シャルロット曰く、この結界は拠点防衛用の設置型結界の一種で、シールド魔法の用に移動しながらの展開は不可能だが防御力は抜群だという。

 これを突破できるのは中級魔法のほとんどを修めたマスター級の魔法使いか、それと同等以上の魔獣以外には不可能ということだ。


 今日もこのキッチンカーを中心にテントを張った。

 テントもこのキッチンカーに常備されている。


 ギリギリ5人が寝れる広さのテントだ。俺達は二人だからかなり余裕がある。


 好きな場所に寝床を作り寝ることが出来た。

 しかし、シャルロットはいいのだろうか、男と一つ屋根の下で寝るのは抵抗があるのでは。


 それとなく聞こうとしたが。彼女は俺に対してなんの警戒心もない。

 いや、さすがに俺だってどうこうしようって気はないが。


 少し無防備すぎではないか。魔法使いは無防備である……。

 って、そういう意味ではないだろう。


 俺は落ち着くために本を読んでいたが。

 魔法使いは無防備という言葉に別の意味を見出してしまったのだろう。

 いやいや、煩悩よされ、いくら大人びているとはいえ相手は12歳だ。


 俺の横で堂々と着替えている、この無防備な少女から視線を逸らし本に集中する。

 衣擦れの音が聞こえる。……本に集中しろ。相手は子供だぞ。集中だ。


 本にこう書いてあった。

 ――魔法使いとは無防備である。

 なぜなら魔力切れを起こしたものは、同時に身体能力が劇的に落ちてしまうのだ。

 特に戯曲魔法の使用後はそれが顕著である。


 ある日、高名な宮廷魔術師がセレモニーで戯曲魔法を披露したことがあった。

 観客はその魔法の華やかさに視線は釘付けになったが、私の関心はその術者にあった。


 極大魔法を使用した魔法使いは身の丈にあってなかったのだろう。

 魔力を完全に失ったようだった。直後にその場に倒れ身動きがとれなかった。


 普段なら、周りに威張りちらしていた、栄えある宮廷魔術師の彼女だったが。

 その瞬間の弱々しい姿に私の視線は釘付けになった。


 私は彼女ほどの才能はなく普段、疎ましく思っていたが。その瞬間に一目ぼれをしてしまったのだ。


 その一瞬の表情の変化に、読者の男性諸君は共感してくれるだろうか。

 私はその弱々しく無防備な姿に劣情を催してしまったのだ。

 それからというもの私は彼女に――馬鹿馬鹿馬鹿、変態変態変態――


 ……本を閉じる。

 ここにも落書があった。ページの途中に突然こういう落書は心臓に悪い。まったく誰の仕業だ。


 だが、おかげですっかり煩悩は去った。


 いつの間にかシャルロットの寝息が聞こえる。

 丁度いい。俺も落ち着いたし。明日は速く行動すれば、昼までに川に到着できるだろう。


 早朝。


 俺達はほぼ同時に目が覚め。

 既にお互いにルーティンワークとなっている、朝食作りを始めていた。


 朝食と言っても事前に作っておいた硬いパンを蒸気で蒸かし、コーヒーを入れる程度だが。

 しかし流石に貴族ご用達のキッチンカー。コーヒー豆と紅茶のストックは充実していた。


 パンしかないとはいえコーヒーがあると全然違う。

 俺は嗜好品の価値を見誤っていた。コーヒーの香りだけでこのみすぼらしいパンでも食欲が沸くのだ。


 朝食を済ませると、俺はシャルロットに言った。

「よし、今日は順調に進めば川に到達する。そこで少し食料調達でもしようじゃないか。魚は好きかな?」


「嫌いだったけど、きっと今なら好きになれるわ。いいえ食べられるなら何でもいいわ。さあ張り切って行きましょう!」


 うむ。元気いっぱいだ。俺も久しぶりに魚が食べられると思うと気分が高揚する。


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