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#08 暗黒四天王ツヨスギルン


「ぼぼぼ僕は……暗黒四天王のひとり、ツヨスギルンです!」

 そう自己紹介をした生き物は、「よかった。うまく言えた」と安堵していた。


 剣士マトハズレイと魔道士ウラギールは鼻で笑った。

「どうやら今回の暗黒四天王はザコだな!」

「軽く倒しちゃいましょ!」


 マトハズレイの目は黄色く光り、周りには宇宙が広がった。

「読めた……」

 時が止まった中、マトハズレイはゆっくりと剣を構える。その剣は黄色く光雷が走った。

「雷神剣奥義チカライ・パイキール」


 マトハズレイは目にも止まらぬ速さで、ツヨスギルンを力いっぱい斬った。

 雷の残像が消え去ると、ツヨスギルンは跡形もなく消えていた。

「ふん、全く手応えのない敵だったな。」

 マトハズレイは剣をおさめた。


「あ、マトハズレイ、そんな必殺技を持っていたのか」

 ケンジャノッチが驚いてきいた。

「まあな」

「なんで今まで使わなかったんだよ!」

「え、いや、こういうのってあとで使った方がカッコいいかなって思って……」

 その理屈はケンジャノッチにはよくわからなかったが、妙に納得してしまった。


「さ、日が暮れる前にジンロー村に行きましょ」

 二人がウラギールについて歩こうとしたとき、背後から声が聞こえた。


「あ、危なかったよぉぉ……」

 ケンジャノッチたちが振り向くと、そこにはツヨスギルンがいた。



 ばかな……いつの間に……?

 やはり暗黒四天王……油断できない……!



 ツヨスギルンの口に光が満ちていた。



 まずい、回避が間に合わない……!



 ぽふんっ、と音を立て、ツヨシギルンの口から小さいエネルギー弾がノロノロと発射された。

 3人は当たり前のように回避した。


「ふん、そんなザコ攻撃で勝てると思っているのか?」

 マトハズレイが真剣な表情で言った。

 ケンジャノッチは、ツヨスギルンはやはりただ逃げ足が速いだけのザコなのかと思い直した。


「今度こそ仕留める」

 そう言うとウラギールが魔力を集中し始めた。ウラギールの目は青く光り、体の周りには青く冷たいオーラが漂い始めた。

 ケンジャノッチが何気なく背後を振り向くと、何本もの大木が根こそぎへし折られ無残な姿をさらしていた。



 ま……まさかのさっきのツヨスギルンのエネルギー弾で……?

 まずい……この暗黒四天王は本物だ……!



 ウラギールの周りにはより一層大きなオーラが漂い、幾千もの氷の結晶が景色を覆った。ツヨスギルンは悲鳴をあげながらあたふたしている。

「すべてを貫け。氷魔法奥義ダンガンミ・タイナコーリ」


 幾千もの氷の結晶が、弾丸みたいな速さで飛んでいく。その弾丸は木や土に無数の穴をあけ、煙が舞い上がる。



 ウラギールもこんな魔法を持っているなんて……!

 じゃあ最初のうちから使ってくれよ……!

 いや、単純に使う機会がなかっただけか……!

 魔力の消耗も激しいし魔力の集中に時間もかかるし……!



 ケンジャノッチがそんなことを考えているうちに舞い上がった煙は消え、今度こそツヨスギルンはあとかたもなく消え去っていった。


「ま、こんなとこね」

 強力な魔法を放ち少し疲れたウラギールが満足げにする。マトハズレイがジンロー村に向かおうと振り返ると、そこにはツヨスギルンの姿があった。ツヨスギルンは「ひいぃ怖かったぁ」などと言いながらあたふたしている。


「ちっ、ザコの分際でちょこまかと!」

マトハズレイがツヨスギルンに突進して斬りかかると、ビビったツヨスギルンはマトハズレイの足をくぐるようによけようとする。しかしツヨスギルンはマトハズレイの足にぶつかり、マトハズレイとツヨスギルンはそれぞれ前方に30回ほど回転しながら転んだ。


 マトハズレイは鼻血を垂らしながらりりしい顔で立ち上がる。

「くっ、石かなにかにつまずいたみたいだ。」



 いやいや……石につまずいてそんな転び方するわけないだろう……

 ツヨスギルンが超速でぶつかったんだ……

 無理だ……こんなやつに攻撃をあてられるわけがない……

 しかもあのエネルギー弾に当たれば即死……

 ありえない……このツヨスギルンとかいうやつ……強すぎる……



「いてててて……」と言いながらもツヨスギルンはまたパタパタと飛び始める。ケンジャノッチはツヨスギルンに声をかける。

「な、なあ、ツヨスギルン! キミは僕たちが怖いだろう? 僕たちもわざわざキミを倒す必要はないんだ。ここは引き分けということにしないか?」

 マトハズレイは鼻血を垂らしながら異議を唱える。

「何を言ってるんだケンジャノッチ。ザコとはいえ暗黒四天王。ここで始末するべきだ」


 く、余計なことを……ケンジャノッチはそう思った。


「ぼ、僕は魔王ユウ・シャノチーチ様にお前らを倒すよう命じられているんだ! たとえ怖くたって戦わないといけないんだ!」


 

 くそ……交渉決裂だ……!

 このまま戦いを続ければこちらが体力を消耗し続けるだけ……

 マトハズレイもウラギールも強力な技を使って少し疲れが見え始めている……

 いずれあのエネルギー弾にあたって全員おだぶつだ。いったいどうすれば……!



「この頭脳明晰(ずのうめいせき)なマトハズレイの計算によれば、私たちの勝率は99%だ。このザコに情けは無用だ。」

 マトハズレイが再び剣を構える。マトハズレイの目が再び黄色く光りだす。



 ダメだ……そんなことをしても無駄に体力を消耗するだけだ……!



「雷神剣奥義チカライ・パイキール」

 マトハズレイは鼻血を垂らしながら再び剣をふるうが、やはりツヨスギルンには当たらない。気づけばツヨスギルンは3人の背後をとっている。ツヨスギルンの口が光で満ち始めた。


「みんな、絶対によけろ!」

 ケンジャノッチが叫ぶと、 ぽふんっ、と音を立て、ツヨシギルンの口から小さいエネルギー弾がノロノロと発射された。

 マトハズレイとウラギールは当たり前のように避ける。しかし先ほどより少し反応が遅かった。ケンジャノッチだけは叫びながら大げさにエネルギー弾をよけた。


「く、くそぉ、当たらないよぉ」

 ツヨスギルンはやはりおどおどしていた。

 3人の背後ではやはり何本もの大木が根こそぎへし折られ無残な姿をさらしていたが、マトハズレイとウラギールは特に気づいている様子はなかった。



 無理だ……こんなやつに勝てるわけがない……!



 マトハズレイは「今度こそ」といい再び鼻血を垂らしながら剣を構え始める。



 無駄だ……その攻撃は当たらない……!

 何かこの状態を打開できる方法は……


 待て……? ツヨスギルンは毎回僕たちの背後をとっていた……

 もしかして……もしかして……


「ウラギール、さっきの魔法、こっちに向かって撃ってくれ!」

 ケンジャノッチはツヨスギルンがいるのとは逆の方向を指さす。

「は? なんで?」

 ウラギールには意味がわからなかった。

「いいから早く!」

 ウラギールはケンジャノッチに気圧されて、魔力を集中し始めた。


 ケンジャノッチはマトハズレイの腕をつかんだ。

「な、じゃまをするな!」

「マトハズレイ、僕が腕を放したらさっきの技を出してくれ。それまでは待つんだ」

「は?」

「いいから!」

「わ、わかった!」


 ケンジャノッチはウラギールが魔法を放つタイミングを見計らっていた。ツヨスギルンは相変わらずあたふたしている。

「今だ!」

 ケンジャノッチがそう言ってマトハズレイの腕を放すと、マトハズレイは剣を構えた。

「雷神剣奥義チカライ・パイキール!」


 それと同時にウラギールも魔法を放つ。

「すべてを貫け。氷魔法奥義ダンガンミ・タイナコーリ」


 ツヨスギルンはマトハズレイの剣をよけた。しかしツヨスギルンが移動した先には無数の氷の弾丸が広がっていた。無数の氷の弾丸が土煙を巻き上げた。

「やったか!」

 ケンジャノッチがそう言って少しすると、煙は消えていった。


 そこには、翼で体を守っているツヨスギルンが立っていた。

 ツヨスギルンの口が光で満ち始めた。



 まずい……まだ倒しきってない……!



 ケンジャノッチが二人によけるように声をかけようとする前に、マトハズレイが鼻血を垂らしながら剣を振り上げツヨスギルンの前に躍り出ていた。

「く……ここはいったん攻撃をキャンセルしてよけるか……」

 ツヨスギルンはそう判断して翼を広げようとした。

「あ……翼が凍って動かない……」


「雷神剣奥義チカライ・パイキール!」

 ツヨスギルンはマトハズレイに力いっぱい斬られた。


 ツヨスギルンの体は溶け始め、あとには紫色の液体だけが地面に残った。



「ふん! 多少は手こずったがザコだったな!」

 マトハズレイは、ぜぇはぁ息を切らし鼻血を垂らしながら言った。


 ケンジャノッチは疲れ切っており、なにも返す気力はなかった。


「日が暮れないうちにジンロー村に行かないと」

 ウラギールとマトハズレイはずんずんと前に進んでいった。



 元気だな……二人とも……




 ケンジャノッチたちは日が暮れる前にジンロー村についた。

「ふう……よし、今日は日も暮れて来たしこの村に滞在させてもらおう」

 ケンジャノッチがそう言うと、ウラギールは同意した。


「いや、ちょっと待て! 本当に今ここでここに滞在すべきか頭の中で計算させてくれ!」

 マトハズレイはぶつぶついいながら、頭の中で何か難しい計算問題を解き始める。

「この場合は因数分解がこうで……ベクトルがああでこうで……」


 ケンジャノッチとウラギールはどういう気持ちでいればいいのかわからないまま突っ立っていた。


「ふふふ……なるほどそういうことか……面白い答えだ……」

 計算を解き終わったと思われるマトハズレイが口を開いた。

「みんなきいてくれ……意外にも面白い答えが導き出されたぞ! 今日は日も暮れてきたし……この村に滞在させてもらおう!」


 なんの意外性もない答えが導き出され、二人は沈黙した。

「さ、泊まれる場所を探しましょ!」とウラギールが切り替えた。


 遠くで誰かが手を振りながら、ケンジャノッチたちに声をかけてきた。

 三人が振り向くと、髪の毛を失った老人がこちらに歩いてくるのが見えた。

「みなさま、ジンロー村にようこそいらっしゃいました」

 老人は三人を歓迎するようにそう言うと、ケンジャノッチが軽く挨拶をした。


 「私は、村長のジン・ロウと申します」




【次回予告】

 村長のジン・ロウに歓迎され食事に招かれた三人は、この村で村人が毎晩ひとりずつ殺されていることを知らされる。村長ジン・ロウは、おそらく人間に化けたオオカミ、つまり人狼が人間を襲っていると考えている。怪しい人物が集められ、ケンジャノッチは誰が人狼かを見破り、その村人を殺すことになる。人間に化けたオオカミ、人狼はいったい誰なのか?


 次回、村長ジン・ロウ。


 ネタバレは禁止だよ。



――――――――――


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[良い点] ゾンビ作戦が小説版だとこうなるんですね 当たったら一撃の即死技やなかなか倒せない敵を小説版になおすのうまい思いました
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