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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

遠野紫の短編集

倫理観欠如ヒーラー、勇者パーティから追放される~そりゃそうじゃ~

作者: 遠野紫

 勇者パーティ、それは勇者の血を継いだ者たちが悪しき魔王を倒すために作ったパーティである。ウォリアーのリオ、キャスターのヤスタ、エンチャンターのチエ、ヒーラーのアキの四人はそれぞれの能力を駆使して魔王軍との戦いを繰り広げていた。


 そんなある日。


「はぁ、もういい加減うんざりだ。アキ、君には勇者パーティから降りてもらう」


 切り出したのはリオだった。


「ど、どういうことですか!?」


 当然アキは驚いた。突然パーティから追放されるとなれば、誰だってそうなるだろう。


「今まで一緒に戦ってきたと言うのに、何故急に……!!」

「何故……だって?」


 リオは恐怖と怒りの入り混じった表情でアキの言葉に反応する。


「お前自身がよくわかっているはずだ!」


 リオのその叫びを聞いたヤスタとチエもうんうんと頷いている。つまりはアキを追放するのはリオの独断では無く、他二人も含めたアキ以外の全員の総意という事だ。


「そ、そんな……確かに私には戦闘能力はありませんが、その代わりに蘇生魔法で役に立ってきたじゃないですか!」

「それだよ! その蘇生魔法が問題なんだよ!」

「……?」


 アキは頭の上にハテナマークでも浮かべるかのように首を傾げた。


「蘇生魔法自体は悪くないさ。それに、実際アキの魔法の腕は優秀だ」

「では何がいけないのでしょうか……」

「蘇生した方が効率が良いからって俺たちを殺すなってことだ!」


 またしても他二人が強く頷いている。心からの同意だ。


「確かに蘇生すれば状態異常を全解除して体力も全快するさ。でもだからと言ってそのために殺さないでくれ! 即死魔法を受けた瞬間、死の恐怖に頭の中が包まれるんだ……あぁぁっぁああぁっぁ」

「不味い、発作が!」

「私に任せて!」


 チエは発作を起こしたリオに対して即座に精神安定化魔法をかけた。その反応の速さから、今までにも何度も同じような発作が起こっていたのがわかる。


「ハァ……ハァ……すまない、取り乱した。それでだな、この本能的恐怖を回復される度にやられたんじゃやってらんねえのよ」

「そうかもしれませんが、これが一番効率が良いんですよ」

「頼むから効率よりも俺たちの心配をしてくれ。このままじゃ魔王城に辿り着く前に精神が死んでしまう……」


 こうしてアキは追放された。周りで話を聞いていた冒険者も、こればかりは誰も擁護のしようが無かった。


 それから数か月後。


「ぐっ……流石は勇者パーティと言ったところか。我をここまで追い詰めるとはな」


 魔王は剣を杖代わりにしてようやっと立っている状態だ。全身には切り傷や魔法による生傷がそこかしこにあり、もうそう長くは無いだろう。


「しかし、妙な勇者だ。それだけの攻撃を与えようとも、苦しむことも無く嘆くことも叫ぶことも無くただひたすらに攻撃をしてくるとはな」

「ァー……」


 魔王に言うように、アキを除いた勇者パーティの3人は皆傷だらけになっているにも関わらず、弱音も苦痛の声も上げない。口にするのは「ァー」といったうわ言のようなもののみだった。


「それもそのはずです。今のリオさんたちに意識はありませんから」

「……何だと?」

「恐怖を感じるのは意識があるからです。ですから意識を一時的に削除してさしあげたんです」


 アキは当然ことのようにそう話す。だがそれは全く当然の事では無い。イカれ狂っている。魔王もそう思っていた。


 そもそも何故追放された彼女が勇者パーティに戻っているのか。アキは追放された後、勇者パーティをストーキングしていたのだ。そして魔王城へとたどり着いた勇者パーティの全員の意識を削除し、自分の思い通りに動く人形へと仕立て上げたのだ。やはり狂っている。そもそも問答無用で即死魔法が使えるので、もう彼女だけでも良かったのでは無いかとも思える。


「な、なんということをしているのだ……流石の魔王もドン引きだ」

「例え四肢をもがれようと、例え死の間際に立たされようと、例え目を潰されようと心臓を潰されようと、今のリオさんたちは恐怖を感じないのでただただ攻めを行うことが出来るのです。死んだら私が蘇生すれば全回復ですから」

「お、おぉ……」


 アキの説明を聞いていた魔王は、もはや言葉も出なくなっていた。そんな彼が脳裏に思い描いていたのは幹部の面々だった。


「……普通に戦い普通に死していった幹部たちよ。我らはまだ幸せだったのかもしれない。ふぅ、我も今そっちへ行く。地獄で仲良くyギュベァッッ」


 全てを言い終えることなく、魔王はヤスタの爆発魔法によって肉片と化した。


「隙だらけなので攻撃してしまいましたが、勝利したので問題ありませんね」


 こうして魔王は滅び、世界は救われた。ちなみに、意識は削除されていたが魂に刻まれた恐怖は積み上げられていた。そのためアキ以外の全員は意識を戻した途端に壊れてしまったのだった。


 めでたしめでたし。

どうでも良いんですけど、状態異常になったままひんしになった後、かけらやかたまりを使ったら全部治るってなんかおかしくないですか?(便利なので良いですけど)

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