5人の僕3-1
んあぁ?
何処だここはぁ。
俺は確かぁ……死刑になって死んだはずなんだけどなぁ。
だが、此処はいったいどこだ。明らかに日本じゃねぇ。てことは地獄か。天国ってことはねぇだろうがなぁ。
男は草原に寝ころんでいた。男の容姿は黒髪黒目にじんべえというTHE日本人というものになっていた。男は袖をはためかしながら立ち上がる。それに対して空を飛んでいた全長15m程のドラゴンが降りてくる。
「ふぅむ、ドラゴンですかぁ」
優しげな表情を浮かべて言う。くそがぁぁぁ。今ので分かったよ。俺ぁ、異世界に来ちまったらしい。つーか、風強くねぇかと思っていたらドラゴンかよぉ。まぁ、よく言ってみれば白銀の氷像のように美しい(筈)、感性がいかれてる俺に言わせてみれば調子乗ったアメリカの車みてーに目に悪い。そもそもの話、アメリカの車に乗って事故に遭わなかったことになんて無かったからなぁ。それに加えてこのドラゴン、俺と意図的に目を合わせていやがるなぁ。気に入らねぇ……
「人の子よ、汝は何故聖なる草原に…めんどくせぇ。やめだ、やめ。てめぇはみてぇな奴がここにいることがおかしいんだよ。それと、お前は人間なのか。」
白銀のドラゴン、ビャクシルは目の前にいる男を見据える。ビャクシルは聖なる草原を守護するドラゴンだ。聖なる草原に踏み入れた者の中には、この男程どす黒い感情は見合えなかった。
ビャクシルが口調を崩したということは歓迎する気は皆無だということ。常識的な者であれば間違いなく立ち退く。ビャクシルが来る者は選ぶが去る者は構わないというスタンスを200年近くつき通しているからだ。もっとも、常識的な者であれば、だが。
「聖なる草原?此処がどういったところか教えて頂いてもよろしいでしょうか。」
このドラゴンに仕方なしに質問する。くそがぁ。女みてぇな声出しやがってよぉ。気に入らねぇぜぇ。まぁ、今は状況を整理して確認することが先決だがなぁ。俺がそう考えていると目の前に、ラノベ風に言えばステータスプレート(的なもの)が出てきた。
種族:半人 個体名:なし レベル:1
体力:15/62(62) 魔力量:168/168(168) 力:55(55) 頑強:64(64) 魔力0(0)
スキル:盥回し 確認 検索 覚醒
スキルでいうとこ、鑑定みてぇなもんか?試しに、ドラゴンに意識を向けて確認を行う。
『対象のデータなし』
といった声が聞こえてできなかった。この検索ってのを使えばいいのかぁ。
そう思うなりステータスプレートもどきのような線で、変なものが現れた。横長の長方形の下にパソコンのキーボードがくっついた感じ。それが一番簡単な説明の仕方かねぇ。
気持ちを切り捨てて検索で現れたキーボードを用いて文字を打ち込む。
余談だが、この男はかつて人の気持ちを持たない化け物として扱われてきた。具体的には、社会的に阻害されるなど… そのため、誰かに悩みを相談することなど一度も無かった。したがって、余計な感情はいらないという人としてたどり着いてはならない極致に至ってしまったのだ。
『他者のステータスの閲覧を行うためには確認、ハック、他にクラックなどのスキルが必要になる。正確に言えば、ハックやクラック等の情報を抜き出すスキルを用いてから、その情報を可視化するために確認を用いる。高速演算又は超速演算のスキルを用いることで簡略化させることが可能。』
……ハックやクラックがダウンロードという工程で高速演算とかが解凍を行い、その情報を確認というアプリケーションを用いて確認しているって感じかな。
「それはねぇ、正確にはぁ、高速演算とかはぁ、ダウンロード補助ツールって言う方がぁ、合ってますねぇ。分かりましたかぁ。」
唐突に背後から声がしたのですり足で4m程前方へ移動しながら後ろを振り向く。そこには黒い液体……いや、流動体があった。人型の黒いポテトサラダ。それが一番わかりやすい表現だ。
ブジュジュジュジュ
音が聞こえた方向、ドラゴンがいた位置に振り向く。そこにはひき肉があった。まるで、体の内側から無数のナイフを切り付けられたかのように。
「いぃかがぁ、ございましたかぁ。」
ブラックポテトサラダ、略してブラポテサラが話しかけてきた。首をかしげながらも体は海中の藻類のように揺らめいていた。