1人の僕1-1
強い、弱い。
暖かい、冷たい。
楽しい、苦しい。
満ちている、飢えている。
『ようやく理解したかい。その通り、強ければ何もかも手に入り全てが思い通り。弱ければ何もかも奪われ何もできずに朽ちていくだけ。』
『君はどう生きたい。前回同様、迫害をうけて無様に生き足掻きたいのかい。いいや、君たちはどう生きたい。君たちの本体である少年に少なからず同情したからこそ被食という道を選んだのだろう。僕だって似たような理由さ。これから僕は君たちを転生させる。一つの魂にまとめてね。これが神である僕が君たちにしてあげられる最大限の救いだ。今まで助けてあげられなくてごめんね。それと、君たちの来世が辛いものにならないように祈っておくよ。ずっと、ね……』
「強くなりたいなぁ」
それは誰が言った言葉か。みんな、ではない… これは僕が言った言葉だ。
何者でもない僕に与えられた、つらい人生を送った人々の魂と記憶、そして想い。
それが僕にそう思わせているんだ。僕は強くなる。強くなって見せる。
僕らは弱かった。だからこそ知っている。強い、ただそれだけでは意味がない。
誰よりも強い弱者になる。
強者には余裕がある。だからこそ、人に優しくなれる。自分は『暖かい』ままでいられるのだから。
弱者には余裕がない。だからこそ、人に優しくなれる。他人の『冷たい』が解るのだから。
僕は誰にも優しくしない。僕が優しくするのは僕だけ。
例え何をしてでも『最強』になって見せる。