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水の中の戦争  作者: 葉月 優奈
四話:天下無双のクロコノイド女将軍
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宿命のライバル、ナスチュン王を初めて見たときに私は確信した。

青い髪のマーマンは、戦闘用の紺の鯨革鎧。

階級は違う、身分も違うし、種族も違う。


だけど、ナスチュン王を一目見たときに『宿命のライバル』だと思わせてくれた。


(この男は、今まであった全ての中で一番強い)

持っていた重い槍を、構えて私に突進した。


(早いっ!)

ナスチュンの姿が、消えたように見えた。

それぐらいの早さで私に一気に間合いを詰めてきた。

攻撃をかわすように、私は体をねじって体を一回転させた。


ナスチュンの槍の突進を、なんとか凌いだ。

遠心力で避けた私は、既に剣を抜いていた。

上にあるのはナスチュンの体。迷うこと無く、私はそのまま剣を振り回した。


冷静に私を見ていたナスチュン王は、私の動きを眺めた。

同時に、大きな槍を両手で握り防御してきた。


「ふんっ!」

私の回転切りを、軽く弾いた。

槍の力なのか、重そうな鉄の槍で簡単に弾かれた。


「なんだ、あの武器は?」

私が見ているのは一本槍先の大きな槍。

マーマン兵士二人がかりで、運ぶほどに重そうな槍だ。

攻撃にも防御にも優れた、金属の槍。

いや、その材質はただの金属じゃない。


「グングニル、半魚人に伝わる最強の槍。

この槍を使うことが許されるのは、半魚人の王だけだ」

「そんなモノがあるのか」私は苦々しく、ナスチュンの槍を見ていた。


「どんな攻撃も弾き……」

ナスチュンが、私に近づく。少し離れて槍を振るうと、急に伸びてきた。

魔力が込められた武器は、そのまま私の前に伸びてきた。

一瞬の判断で、私は後ろに下がったが槍が左肩に当たった。


「ううっ」痛みが、左肩にはっきりと感じられた。

血は流れない、だけど握力は無くなっていた。

持っていた(パッション)が、重くずっしりと握力の無い左手にのしかかった。


(あの槍、いきなり伸びただと……)

驚きと共に、痛みのある左肩を右手で押さえていた。

持っているナスチュンが持つグングニルは、まるで生き物のように変化した。

左手に持つ赤い刀身のパッションを、右手に持った。

右手には二本の剣が握られていた。かなり重い。


「この剣は私の相棒だ、手放すことはできない」

「さすがは、クロコノイド最強の武人だな」

歯を食いしばりながら、私は前を向いていた。


ナスチュンは強いし、グングニルも厄介だ。

だが、それでも私は楽しかった。


「初めてだ、この感覚は」

「どうした?何がおかしいのだ?」

「いや、お前はライバルだ。お前の強さは、とてつもなく強い。

王としてふさわしい、最強の強さだ。トルスク将軍よりも強い半魚人がいたのだな」

「イエンツーユイに言ってもらえて、俺は嬉しいぞ」

ナスチュンもまた、笑っていた。


(そうか、この戦いがやりたかったのか)

私もなぜ戦っていたのかを、初めて知った気がした。

それは、この最強の王と戦うためだ。今までの私のつまらない戦いも、意味があった。


ナスチュンと向き合って、自然と闘志が湧き上がった。こんな感情は、いつ以来だろうか。

生まれて初めて、恐怖と高揚感を感じていた。

(これが、生きていると言うことだろうか?)


今までの戦いに無い、絶望的な相手の強さだ。

そして、持つ武器も最強の武人にふさわしい最強の武器だ。

グングニルを持ったナスチュンは、やはり威風堂々としていた。


「さて、続けるか?」

「無論だ、こんな楽しい戦いをやめるつもりはない」

「よく言った!」

私は、ナスチュンに向かって高速で泳ぎ始めた。

ナスチュンは、向かってくる私に対してグングニルを構えていた。



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