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水の中の戦争  作者: 葉月 優奈
四話:天下無双のクロコノイド女将軍
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051

(YENTUYUI’S EYES)

私が初めて見た、半魚人マーマンの王。

ナスチュン王は、堂々としていた。圧倒的なオーラに、私はじっと彼を見ていた。

二人のマーマン兵士が、持ってきたのは鉄の槍。重そうな槍を、

ナスチュンは片手で持ち上げた。涼しげな顔で、ナスチュンが見ていたのは、ギマだ。


「ナスチュン様、どうしましたか?」

「お前はここで始末する」

「ふふっ、あはははっ!」

高笑いをした、ギマ。ナスチュンはそのままギマに突進してきた。

だが、ナスチュンの突進と共にギマの体はすり抜けていた。


「やはり、愚かな王よ」それは、ギマの幻影だ。

「幻影か?」

「いかにも、あなたの考えそうなことぐらい分かりますとも。

でも、残念でした。既に私はここにはいない」

「お前はどこにいる?」

「すでにお客様を、ここに迎える準備はできた。

だがら、イエンツーユイの始末をしたかったのだが残念だ」

「お前、トリトンか?」

私はギマの幻影に叫んだ。貫かれても、水の中にギマの姿が映っていた。


「違いますよ、でも……あなたは知ってしまった。

あなたはトリトンの正体を知ってしまった。それが、誰であるかも」

「だったら、何だというのだ?」

「ここで、始末しないといけない」

口惜しそうな声とともに、ギマの姿が形を崩していた。


私は、まだ聞かないといけない。

だけど、ギマの幻影がユラユラと消えていった。

ナスチュンも、またギマの事を険しい顔で睨んでいた。


「消えたか……」

「ああ」

「テトラよ、ビンナガよ」ナスチュンは、すぐさま二人の半魚人に声をかけた。

ナスチュンに言われて、畏まったテトラとビンナガ。


「お前達は、ギマを追え」

「ですが、クロコノイドの兵が……このセンブレルに来ています」

テトラは、私の方を指さした。


現状としては、クロコノイド軍は確かにこのセンブレルにいた。

城壁の中には、半魚人の町並みが見えた。

私の軍も、城壁の前に集まっていた。

対するセンブレルの町並み……城壁の辺りにも、半魚人の軍が構えていた。


「お前は弱い」

「な、ナスチュン様。あたしは……」

「テトラよ、その鎧を見て何も思わぬか?」

ナスチュンが、テトラの鎧を示した。

テトラの金属鎧は、傷だらけだ。ボロボロで、あちこち切られていた。


「テトラよ、お前のことだからイエンツーユイ将軍と戦ったのだろう。

そして、お前はイエンツーユイにどれぐらいダメージを与えた?」

「それは……」テトラは答えられない。

私は全ての攻撃を避けていて、ダメージは受けていない。

テトラは思い返して、自分の無力さを知ってしまった。


「ビンナガよ、ギマを追え!

幻影をかけるぐらいだ、それほど遠くには行っていない。そして処断せよ。

ギマは裏切り者だ、殺しても構わぬ。

テトラも……それから、二度とここに帰ってくるな」

「なぜですか?」テトラが食い下がらない。

だけど、ビンナガはナスチュンの言葉の意味を汲み取っていた。


「了解しました、テトラ。行くよ」

「ですが……敵がここにいるのに」

「ナスチュン王の命令は絶対だ」

ビンナガの言う言葉は、間違っていない。

テトラは、私を睨んでそのまま頬を膨らませた。


その後、テトラとビンナガはセンブレルの城門を出て離れていった。

残されたのは私と、ナスチュン王。

それと半魚人の軍一万と、私たちクロコノイド軍八千。


「イエンツーユイ将軍、それより感謝する。あの二人を逃がしてくれたことに」

「いいのか?ナスチュン王」

「構わぬ。それより、お前は俺の首が欲しいのだろう」

「ああ」私は肯定した。

私がトリトンを知っていることには、一切触れない。

ナスチュンは、真剣な顔で大きな槍を構えた。


「だから、俺一人でお前の相手は十分だと判断した」

ナスチュン王は立ち泳ぎをしながら、私を見ていた。

その姿は、まさに鬼神のごとく全身から強さを感じられた。



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