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半魚人軍の王、ナスチュンはいつ現れても威圧感があった。
そしてナスチュンは、私をはっきりと睨んでいた。
だが、変わった状況はそれだけではない。
「水魔砲を、お前は打ったのか?」
「はい、打ちました」私は正直に答えた。嘘をつく必要は、これ以上無い。
何より、ナスチュンはこの状況を知っていた。
だが、私は一つ心に決めていたことがあった。
「精度が悪いと、聞いたのだが?緊急事態以外は、禁止したはずでは無いのか?」
「今は緊急事態かと思いますが……」
「いえ、今は緊急事態を表明しておりませぬ」言い返すのはビンナガ。
眼鏡を駆けたマーマンが、ナスチュンに離していた。
「ギマよ、勝手にやったのか?」ナスチュンが、私に問いただす。
「我が軍が、ライタルクまで奪われる寸前です。
ここで使える武器を使わなければ、勝つことはできません」
「それでも、水魔砲を許可した覚えは……」
「あなたは愚かだ」
私は不敵に笑った。
そんな中、城門付近に兵士の姿が見えた。
「どういうことだ?」
それは、半魚人軍の兵士達。
だか、それよりも多いクロコノイドの兵士が一緒に来ていた。
この軍団を、率いているのは二人。
一人は赤毛のマーメイド。
金属鎧を着ていて、大剣を背負ったマーメイド。
そいつは、四天王のテトラだ。だが、違和感はそいつと一緒にいたヤツだ。
「なぜ、イエンツーユイが……」
テトラと一緒に出てきたのは、イエンツーユイだ。
赤い鱗に、鰐頭と女の顔。黒いコートを着ていて、冷めた顔をして私を見ていた。
「お前が、ギマ・ジョンソンか?」
イエンツーユイは、私に問いただした。
いや、私もイエンツーユイを知っていた。
知っていたし、彼女は危険だ。ここで、殺さないといけない。
水魔砲で仕留め損なったが、単軍でイエンツーユイはやってきた。これは好機だ。
ここには四天王も二人、おまけのナスチュン王もいた。
「ああ、だが……」
「半魚人軍の王、ナスチュン王もいるのか」
イエンツーユイは、私の後ろのナスチュン王に気づいた。
だが、ここにはテトラも私もいる。水魔砲の射程外だけど、強い半魚人が揃っていた。
「そうだ。イエンツーユイ将軍。その前に……少しやるべきことができた。
お前の相手をする前に……」
ナスチュンのすぐそばに、二人のマーマン兵が姿を見せた。
二人のマーマンは、大きな一本の鉄の槍を持っていた。
だが、それは重そうに大事そうに泳いでナスチュン王の前に運んでいた。




