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――首都センブレル・城壁前――
(GIMA’S EYES)
ここは、センブレルの水魔砲が置かれた場所だ。
神器水魔砲は、センジー門を向けていた。真っ白な砲台は、珊瑚の城壁の中で堂々と鎮座していた。
青い髪に黒のローブを着たマーマンの私は、水魔砲を操れる数少ない一人。
この水魔砲は、威力は高いが水弾魔術の原理で放たれていた。
一般的に水弾魔術は精神エネルギーが高く、水流魔術は詠唱時間が長い特徴がある。
その精神エネルギーは、水神結晶で代用もできた。
水神結晶は、海神ポセイドンの力を得たエネルギー源。
水魔砲を放つには、大量の水神結晶を用いて使うことができた。
最も使うことは、半魚人の国の中でも使うことをためらわれていた。
精度が悪く、コスパも高い武器だから。
「ギマ様」マーマンの兵士が、水魔砲の前にいる私に声をかけた。
「センジー門にいたイエンツーユイ将軍は倒せたか?」
「残念ながら、当たりませんでした」
「そうか、まあ良かろう。本当はここで始末をしておかったのだが」
水魔砲を苦々しく、私は見ていた。
私にとって、これは賭けだった。
不意打ちで放つ一発は、最初で最後の逆転のチャンスだ。
この好機を逃した場合、当然こちらに攻めてくる可能性が高い。
「次の装填時間は?」
「あと十五分はかかるかと」
後ろでは、必死に燃料の袋を運ぶマーマンがいた。
水神結晶の入った袋だ、センブレルの城壁から、別の兵士が声を飛ばて指示を出していた。
「厳しいな、水魔砲は近づかれると討つことができない。
守護兵は、センブレルの守護に回れ」
「ギマ様」そんな中で、私に近づくマーメイドの兵士がいた。
「なんだ?」
「ナスチュン王が、こちらに」
「ナスチュン王が?」
確かに、私もいきなりのことで驚いていた。
聞いた後振り返ると、半魚人軍の王は、私の後ろから泳いできた。
真っ赤な革鎧を着ていた、青い髪の青年王のマーマンが姿を見せた。
ナスチュン王は、険しい顔で私を見ていた。
お供には三人の親衛隊のマーマン兵士。その他に、軍師ビンナガも一緒だ。
長い茶髪で黄色いコートを着たマーマン、下半身の魚は黄色い鱗だ。
半魚人軍の軍師であり、ビアス殿の副官だったマーマン。
「ギマよ、もうよい」
出会って一言目、それは衝撃的な一言で幕を開けていた。
それと同時にナスチュン王は、険しい顔で私を見ていた。




