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水の中の戦争  作者: 葉月 優奈
四話:天下無双のクロコノイド女将軍
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いきなりの光線は、戦場に混乱を招いた。

戦っていた中に、突然現れた光の光線。

しかも、これは破壊光線だ。たった一撃で、硬く大きな岩場をえぐる威力があった。


この威力を見て私は、ある攻撃を知っていた。

「『水魔砲』だな、噂には聞いていたが」

助けたテトラと一緒に、私は崩れた岩場を見ていた。

えぐられた岩場は、しっかりとくり抜かれた。


「何だと、なんでいきなり使ってきた?」

驚いていたのは、私よりもマーメイドのテトラだ。


それはポセイドンが、古き時代よりセンブレルの防衛のために与えた神器兵器。

その威力は文字通り、岩をも砕く破壊力だと言われていた。

かつては、半魚人軍とスキュラ軍の戦争時代に一度だけ使われた経験がある兵器。


だが『水魔砲』の欠点は、とにかく精度が悪い。

軍師ビアスもいない今回は、使われないと私たちの会議で予測されていた兵器だ。

届く距離もかなり遠くまで届くが、精度の悪い武器だと分かっていたから。


「でも、水魔砲の威力は凄いな。今回、使う予定は無いのか?」

「ないし、軍議でも使う予定は無かった」

「じゃあ誰が討たせた?テトラ将軍には心当たりは無いのか?」

「あるとすれば……ギマ魔術師」

ギマという名前は、ビアスからも聞かれた名前。


四天王の一人で、水弾魔術師ということだけだ。

後はビアスが言っていたこと、トリトンを探していたという話だ。

こちらに関しては、信憑性もないしまだテトラに言うこともない。


「ギマ・ジョンソンかしら?

魔術の達人と言うことらしいが、どんな人物だ?」

「確かに魔術の達人は、間違いないわね。

あたし達の軍でも、希少な魔術師だ。

水魔砲を扱うには、水弾魔術の心得がないと使えない」

「なるほど、それは初耳だ。だが今の威力の通り、水魔砲は無差別に攻撃する兵器だ。

ギマは、もしかして私たち全員を消滅させようとしているのじゃ無いか?」

「そんなはずは……ないと思う」

口に出したテトラは、腑に落ちないことがあった。


放たれた水魔砲は、正確な位置を狙えない。

精度が悪いが、この戦場や門の方角に放ってきた。

ここには、敵の私たちだけではない。味方もここで戦っていた。


「テトラ将軍、もしかしてギマは戦場ごと水魔砲で吹き飛ばすつもりか?」

「そんなこと……ないこともない」

「今は停戦を」

「それはできない」私から離れて、大きな剣を構えた。

だけど、回りの兵士は既に驚いて慌てていた。

半魚人の兵士も、クロコノイド兵士も、混乱していて迷っているように見えた。


「私の目の前には、仇が!」

「お前はそれでも将軍か?」

私は眉間にしわを寄せて、テトラを叱った。

テトラは、私の言葉に体を震わせていた。


「う、うるさい!あたしはやっと見つけた。仇を」

「でも、お前はテトラ将軍だろう。

将軍の役目は、兵士の安全を確保して勝利に導くことじゃないのか?」

「ううっ、それは……」

痛いところを突かれたのか、テトラは気まずい顔を見せていた。

すかさず私は、テトラに話を続けた。


「将軍は兵を預かっている。今は満足に戦える保証はない。

兵の安全を確保してから、戦い直してもよいではないか?」

「……確かにそうね」

テトラは、素直に自分の間違いを認めた。

意外と素直で聞き分けのいいマーメイドの将軍だ。

判断もこの若さで冷静にできる、トルスクはいい娘を育てたな。


「とにかく、水魔砲を止めないといけないのでは無いか?」

「そうだな。イエンツーユイ将軍、あたしたちはどうすればいい?」

「水魔砲には、装填時間がある。今、すぐには打てないはずだ。

おそらく、水魔砲のある場所ならばテトラ将軍は知っておろう」

「う、うん。王都センブレルよ」私に言われて、正直に答えたテトラ。


「よし、まずは水魔砲を封じ込めよう。

テトラ将軍、案内できるか?」

「わ、分かったわよ!」テトラは、すぐに折れた。

同時に、マーメイド兵が彼女の回りに集まった。


「一度停戦だ!皆のモノ、武器を治めよ」

私の言葉に、周りのクロコノイドの兵士は一斉に動きを止めていた。

すぐにテトラも反応して、半魚人の兵士と共に停戦の号令を出していた。



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