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水の中の戦争  作者: 葉月 優奈
四話:天下無双のクロコノイド女将軍
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テトラ・アルバーニ、私はその名前だけは知っていた。

新しく半魚人四天王の一人になったマーメイドの名前を、私は情報で聞いていた。

赤い髪に金属鎧。小柄だけど気が強いマーメイドがど真ん中に立っていた。

持っていたのは、大きな両手剣だ。


私の軍を阻むように、マーメイドが軍団で壁を作っていた。

数は三千、間違いなくさっきのスキュラ軍より多い。


「お前が、メルを……」怒っているのは、ベージュだ。

歯を食いしばった顔でで、今まで見た事が無い怒りの感情を見せていた。

持っている棘産後の槍を、強く握っていた。


「この部隊は、クロコノイドの軍か?

ならば、イエンツーユイがいるのか?」なぜか、私の名を呼んでいたテトラ。

「うるさい、お前を殺すっ!」棘珊瑚の槍を持ったベージュが、突進していく。

怒りに身を任せて、ベージュがテトラに向かっていく。

だけど、無謀な突進のベージュに対しテトラは冷静だ。

突進したベージュを見つけて、簡単に避けたテトラ。

そのまま、大剣をベージュの背後を取った。


そのまま、無言で剣を振りかざす。

ベージュが不意を突かれて、目をつぶった。


だけど、素早く泳いだ私が反応していた。

大剣を振りかざしたテトラに対し、私が持った右手で重い剣を受け止めた。

ベージュの真上で、テトラの大剣が止まっていた。


「あたしの剣を、受け止めたっ!」驚いた顔を見せたテトラ。

「ベージュ、無謀な突進はするな。前にも言っただろう」

「イエンツーユイ将軍、だって……メルが、メルが……」

悔しさを滲ませて泣いていた、クロコノイドの少女ベージュ。

だけど私たちの会話を聞いたテトラの口元には、笑みを浮かべた。


「そうか、お前がイエンツーユイか?」

「だったらどうする?」私が振り返り、ベージュを後ろに隠した。

「お前を殺すっ!」

テトラの鼻息が荒い。剣を肩に担いだテトラは、私のことをはっきり睨んでいた。

私も又、両手に剣を握って彼女と対した。

見た目の重そうな金属鎧と堂々とした佇まいで、私は理解した。


(なかなかの使い手だ、いい構えをしている。顔もいい)

敵として対峙したマーメイドのテトラを、私はじっと見ていた。

大剣は重い、大きな両手剣だ。でも、マーメイドの体は小さい。


「私と戦いたいのか?」

「そうよ、あんたはあたしの仇。絶対に討たないと」

「それなら、ベージュも……」私の後ろのベージュが口出ししてきた。

「お前は下がれ!」私は、言い出すベージュに言い返した。

私の迫力に、ベージュはこれ以上言い出すことはできない。

私の後ろから離れて、戦場を見ていた。


戦場の独特な空気が、ベージュにこれ以上の行動を許さない。

素直に退くベージュ、周りの兵士もここの緊張感に手出しをできなかった。


私が前を向いた。

ふと気になったのが、彼女の持っている金属の大剣。

巨大な大剣、重くて大きな剣。刃が薄い紫がかった光を帯びていた。

「あの大剣は?見覚えが、あるのだが……」

「そうだとも、この武器はあたしの父……トルスク将軍の持っていた武器。

『ショックブレード』だ。イエンツーユイよ、思い出したか?」

「ああ、思い出した」

そうだ、薄紫の刀身は『ショックブレード』だ。

大きな剣は、かつての四天王トルスク将軍の武器だ。

紫の光は、魔力を帯びていて刀の威力を上げていた。


テトラは、あのトルスクの娘か。

トルスクを殺した私に、敵討ちをしようというのか。

それならばあのただならぬ存在感も、隙の無い構えも納得できた。


「よかろう、私も全力で相手になる」

両手に剣を持った私は、剣を両手でクロスさせた。

そのまま、テトラの方に素早く泳いで間合いを詰めていった。

「絶対に、お前を倒す」テトラも、並々ならぬ気迫で私を迎え撃つ。



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