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水の中の戦争  作者: 葉月 優奈
四話:天下無双のクロコノイド女将軍
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センシー門は、半魚人軍の領土だ。重要拠点の一つでもある。

それを同盟軍とはいえ、スキュラの兵士に守らせていた。

これを見るだけでも、半魚人軍の優秀な人材不足が露呈していた。

苦しい人材事情の中でも、重要拠点のセンシー門を守る異種族は異例だ。


「お前達、ここはどんなことがあっても守るよ」

前回イラーク海域でも戦った、オコゼの下半身を持つオコゼヘッドだ。

他の兵士も、全員オコゼヘッド。白いフリルシャツを着ていた。

数は千、スキュラの軍が防衛に徹していた。


クロコノイドの私の軍は八千、数の上では優勢。

それでも敵のスキュラは、壁に囲まれて防衛に務めた。

魔法戦と突進の両方で戦えるスキュラは、二人を相手にしているようなモノ。


だけど、私は迷うことが無い。

「全軍突撃!」

私が先頭に立って、敵のオコゼヘッド兵に挑む。

オコゼヘッドも、門を中心に防備を固めていた。

泳ぎながら私は二本の剣を抜いて、魔法を使うスキュラに近づいた。


すぐさま魔法の水弾を飛ばして、私を攻撃するオコゼヘッド。

それでも、私は一切怯まない。素早く泳いで、オコゼヘッドの間合いを詰めた。

オコゼの下半身が、口を開けて私に噛みついてきた。


でも私は冷静に左手の剣で、口を塞ぐ。

それと同時に、右手の剣でスキュラの首を跳ねた。


手際よく、私は次々と敵のオコゼヘッドを倒していく。

迫り来るオコゼヘッド兵を、私は全部蹴散らしていた。

いつの間にか、私の周りには七体のオコゼヘッドが横たわって流れていた。


「イエンツーユイ将軍に、我らも続け!」

士気の高い私の軍のクロコノイドは、奮闘した。

共闘して戦い、守備に回るオコゼヘッドの数が減って行くのが見えた。

代わりにオコゼヘッドの死体が、増えて水中を漂う。


戦っていた私のそばには、ニギスが近づいてきた。

「順調ですな」

「ああ、今のところはな。ニギス。そろそろ次の一手を……」

「四番隊、門壊の準備を」

ニギスが指示をすると、巨大な金属の柱を持ったクロコノイドの兵士が現れた。

大きな金属の柱を、右と左四人ずつで持って立ち泳ぎをしていた。

かなり重たそうにしているが、後ろには水流魔術師が立っていた。


「門壊を初めよ!」ニギスの声に合わせて、水流の魔法が発動。

水の流れに乗った巨大な金属の柱が、門に突進していく。

スキュラに邪魔されることも無く、柱が門に激突をした。


ガキンッと大きな音が、周囲に響く。

柱の一発を受けた大きな門だけど、大きくへこんでいた。

だけど、門はまだ破れていない。


「次の一撃を、用意しろ!」

ニギスの言葉に反応し、兵士が素早く動いていた。

大きな金属の柱を持った兵士が、準備を進めていた。

手際のいい見事な兵士の連携。だが、敵も黙って指をくわえてみていない。


「破壊を阻止しろ」リーダー格のオコゼヘッドが、門の前で叫んでいた。

必死に叫ぶスキュラだが、すぐに私が叫ぶオコゼヘッドを切り捨てた。

小部隊の隊長だろうか、それでも私の敵では無い。


「よし、ドンドン続けろ!」

ニギスの指示通りに、クロコノイドの兵士が水流の流れを利用して柱で突進した。


巨大な柱で、何度も門を攻撃していた。

そして、六発目に……ついに門が壊れた。

奥の海が、門のへこんで開いた穴からはっきり見えた。

さらに容赦なく七発目の鉄柱の一撃。穴は大きくなった。


「センシー門は、陥落したぞ!」黄色い門はへこんで穴が、はっきり開いていた。

「くそっ、絶対にクロコノイドを通すな!」叫んだオコゼヘッド。

だけど、敵兵は既に二百程まで激減した。

スキュラの部隊としては、ほぼ壊滅状態だ。


「このまま門を突破しろ!

このまま敵の王都センブレルを、一気に落とすぞ!」

私が叫ぶと、私たちの士気が上昇した。

同時に戦況は既に決していた。オコゼヘッドの部隊は、壊滅的な被害を受けていたからだ。


次々と、クロコノイドの兵士が門を越えていった。

私も、残党のスキュラを最後尾から防いでいた。

戦いながら、味方を壊れた門の穴の中に招き入れていた。


「イエンツーユイ様、門の中へ!」

近づいてきたのは、副官のニギスだ。

「そうだな、ここはもう大丈夫だし。私も、向かおうとしよう」

ニギスに後ろを任せて、私は泳いで前を向いた。


前を向いた瞬間、一人のクロコノイドが姿を見せた。いや、浮いていた。

それは白い鱗で、小さな子供のクロコノイドが浮いていた。

「メルルーサ?」私は二度見していた。

それは子供の新兵メルルーサの白い体が、私の前に漂っていた。


「どういうことだ?」

眉をひそめた私は、門の方を難しい顔で睨んだ。

メルルーサの大きな盾が流れる中、私は門の方に泳いでいく。

泳いだ先には、伏兵がいた。


「我が名は、『テトラ・アルバーニ』四天王の一人だ!」

強く叫ぶマーメイドが、狭い道を防ぐように前に現れたのだった。



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