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水の中の戦争  作者: 葉月 優奈
四話:天下無双のクロコノイド女将軍
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042

――センブレル海域・ブレル門近辺――

(NAYOSI’S EYES)

私が移動していたのは、大きな岩場が見える海域だ。

このセンブレル海域は、いくつもの大きな岩盤があった。

だけど、イラークのような細かい岩柱はない。

あくまで大きな岩を避けながら、私たちは泳いでいた。


私の名前は、ナヨシ・シュレーム。クロコノイドの左将軍だ。

灰色の鱗に、水岩石の鎧。持っている武器は、長い金属製の槍。スピアだ。

眼鏡をかけた私は、周囲を気にしながら泳いでいた。

私が、銭湯の前線に出るのは久しぶりだ。というか、出たくなかった。


「ナヨシ様、作戦の方は大丈夫でしょうか?」

「ブレル門の攻略だよね?」

「はい、その通りです」

泳ぐクロコノイドの副官と会話。

私より、三つ年下のクロコノイドだ。持っている武器は、棘珊瑚の槍。


今の私達は、半魚人軍の支配する『ブレル門』攻略の為に向かっていた。

敵の半魚人軍の勢いは、連戦連敗で明らかに衰えていた。

それでも敵の半魚人軍が結ぼうとした停戦合意を、皇帝エツは一蹴した。


だかた、センブレル王都を攻略しないといけない。

その前哨戦が、ブレル門攻略戦だ。門を開ければ、いよいよ敵の首都に辿り着く。


「はあ、本当に門を落とすのか……」呟く私。

「ナヨシ様?」副官のクロコノイドの兵士の顔に、不安が滲む。


「正直こういう攻略戦に、私は向いていないんだよね。

イエンツーユイ右将軍とか、サハギー将軍が前線で戦うことが絵になるし」

「そういう問題では、無いと思うのですが……」呆れる副官。


「でも、イエンツーユイ将軍はもう一つの門、『センジー門』攻略に向かっているとしても……

サハギー将軍は、今回の戦いに参加していないでは無いか。どうしてだ?」

「会議で決まった、エツ皇帝のご指示です。

テンタルス軍は、セビド砦の防衛に当たると。

南洋のタートリアと、シュリンプスが攻略に向けて動いているとの報告をうけて防衛に戻りました」

副官の同じ報告を聞くのは、これで三度目だ。

だけど、私は納得できない。納得できないし、ボヤいた。


「じゃあさ、新しく将軍になったベタ前将軍は?

アイツは、どこでなにをしているのさ?

そもそもベタ前将軍は、繰り上げで三銃士になったのだよね?

こういう攻略戦を、積極的にするのが筋じゃ無いのか?」

「ベタ様は、エツ皇帝の防衛です」

「ベタ様も?どうして?」

「さあ、エツ皇帝に暗殺未遂が合ったようですし。

ベタ将軍は、どちらかというと参謀ですから。占術もありますし」

副官が飽き飽きした顔で、報告していた。

僕は、それを聞いてため息をついていた。顔色も悪く、辛くなってきた。


「ナヨシ様、覚悟を決めて攻略戦に向かってください」

「分かっているけど……」

「あなたは左将軍ですよ。全然、弱くはないのですから」

副官が、なんとか弱気の私を励まそうとしていた。


私は、弱気な左将軍だ。

前線に出て戦うのはイヤだ、軍人のくせに戦争が嫌いだ。

詩文を詠み、着の身着のままに暮らせればいいと思っていた。


だけど、運悪く僕は左将軍になってしまった。

槍の腕には、それなりに覚えもあって自信があったし弱くも無い自覚はあるんだ。

それでも、天才……いやあれは鬼才を見て自信を失った。


僕はイエンツーユイ将軍ほど、特別強くは無い。

というよりイエンツーユイ将軍が凄まじく強い、恐ろしく強い、化け物だ。

あの力を見て、私は絶望した。こんなにも、私と実力差があると思わなかった。


「それに、無理な遠征ばかりでみんなが疲れているよね」

「確かに、疲労はあります。

ですが、次の戦いは王都センブレル戦です。

このセンブレルを奪えば、半魚人軍は壊滅状態に也戦いは終わるでしょう」

「そうだけど……でもそういう仕事は……イエンツーユイ将軍に任せて……」

「なっさけないですね」

副官が、怒りに満ちた言葉を僕にはっきり浴びせてきた。


「情けないって、僕は防衛戦が得意で」

「はいはい、いいですよ!ナヨシ様。もう、着きましたし」

そんな僕らの軍の目の前には、岩場が狭まって細い道になっていく。

細い道をさらに泳ぐと、大きな赤い門が見えていた。

鉄の大きな扉には、既に半魚人軍が陣を敷いて待ち構えていた。


その先頭には、一人の半魚人。

いや、前線には赤毛のマーメイドが姿を見せていた。

「お前らは、クロコノイドか?

我が名は『テトラ・アルバーニ』四天王の一人である」

力強く、マーメイドが大声で名乗っていた。

彼女の後ろには、大量の半魚人軍を率いながら。



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