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水の中の戦争  作者: 葉月 優奈
三話:スキュラ女王の七種族会議
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――セビド・セビド海域――

(YENTUYUI’S EYES)

三時間ほどの短い会議の後、私はエツ皇帝と合流した。

セビドの町を出て、外に来ていた。エツ皇帝と一緒に泳いでいた。


この場には、二人しかいない。護衛の仕事だからだ。

さらに言えば、エツ皇帝の戻る場所がセビド砦だ。

少し先に見える場所に、鉄の要塞が立っていた。


会議の間も待合室で、待機しながらも私はずっと考えていた。

会議の前に親友のヤマメ達が求めてきたことと、彼女たちが私に求めてきたことを。

ヤマメが、求めていることは分かっていた。

トリトンであれば、私は皇帝エツであっても戦わないといけない。

それは、クロコノイドであり……七種族(ポセイダル)として生を受けたから当然のことだ。


「エツ皇帝。結局停戦合意は、どうされたのですか?」

「持ち替えって、考えることにした」

「意外ですね。停戦には、応じないと初めはおっしゃっていましたが」

「気が変わったのだよ、君を見て」

彼が、ふと私を見てきた。

私は、首をかしげていた。


「私ですか?」

「疲労が、溜まっているのでは無いか?」

「確かに、兵士は連戦続きで疲労があります。

ナヨシ将軍も、その辺りを危惧しております」

「分かっておる。南洋から、北洋のイラーク。

短い期間で、かなり長いこと遠征をしていたからな。

今後のことを考えても、イラークやルビアの防衛も考えねばならぬ。

兵士の疲労も、しっかり考えておかねばならぬ。

イエンツーユイも、連戦で疲れているのか?」

「私は大丈夫です」

私は自信たっぷりに言っていた。だけど、エツ皇帝は私の体を見ていた。

赤い鱗にある傷だらけの体、イラーク海域戦で、私は負傷していた。


「イエンツーユイも、傷だらけでは無いか」

「でも、体力は問題ありません」

「やはり、疲れているだろう」

「いいえ、大丈夫です」

私は、決して強がってはいない。

かすり傷はあるけど、体力は有り余っていた。

イラーク戦から三週間、回復に使う時間としては十分だ。


「すでにシュリンプスが、動きを見せている。

あの海老女(チカ)、どうやら同盟を裏で準備しているしたたかな」

「そうですか」その話は知っていた。


シュリンプスの女王チカが、タートリアと同盟を継続して組んでいた。

さらに、クナシュア女王のスキュラとも会合をしていた。

七種族会議前に、三人が集まったのは我が軍への明らかな牽制だろう。

私にそれを見せることで、脅しの意味もあるのかもしれない。


「我が軍の戦線も、少し伸びているのが気になる。

遠征中に、周りの種族が恨まれたらかなり厄介だ。

こちらも、何らかの対策を練らねばならないな」

「はい」私は、空返事をしていた。

泳ぐ海域は、大きな岩盤がいくつか見えた。

この辺りは大きな岩場があって、近くにある砦の道を制御していた。


中立都市セビドには、兵士を置くことができない。

だが近くにあるセビド砦は、我が軍の領土だ。

それでも中立都市に兵士を送ることは、七種族の理として禁じられていた。


ここに来るまでの移動は、一人の護衛しか許されない。

七種族会議の憲章で、このことは盛り込まれていた。

だから、エツは私を選んだ。

軍神と言われている、強さに自信があるこの私が。


他の軍も同じだろう、たった一人の護衛を連れて今から帰宅していく。

七種族会議の期間中は、絶対に戦争をしてはいけない。

戦争は、大きな争いは勿論小さな種族間の争いも禁じられていた。


だが、それは突然破られた。

岩場に隠れた一つの人影、間もなくそれは姿を見えた。


「氷の槍よ、カノモノを貫け!」

それは魔法の詠唱、大きな岩場から氷の刃が飛んできた。


氷の槍の狙いは、エツ皇帝だと確信した。

氷の槍を見ても、エツ皇帝は冷静だ。

腰に隠していたナイフで、氷の槍を弾いた。


「誰だ?そこにいるのは」叫ぶエツ皇帝。

岩場に隠れた人物は、顔を隠した二人のスキュラだった。


蛇を下半身で女性の体の上半身が、声に反応して出てきた。

着ている服は、真っ黒な服。一目で、暗殺部隊のスキュラだと私は分かった。

エツもまた、魔法を使った相手を見て理解したのだろう。


「暗殺とは……クナシュアの仕業か」

エツは、登場したスキュラに対して睨んでいた。



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