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――神聖都市セビド・ポセイドン大神殿:神殿議事堂会議室――
(NASUTYUN’S EYES)
七種族会議の会場は、ポセイドン大神殿の一番奥の大きな部屋だ。
神殿の中央は、海神ポセイドンを奉る教壇があった。
広い天井に、水岩石の柱。壁も分厚い金属の壁。
並の水弾魔法や金属の剣では、キズを一つもつけることができないほど硬い壁。
広々とした会議場には、七つの席が用意されていた。
岩でゴツゴツした椅子に、テンタルスの王『コチ・アダムス』。
綺麗に飾られて、ピンク色の大きなクッションがある椅子に座る、シュリンプスの女王『チカ・ネイティル』。
質素な黒く大きな椅子に座るのは、タートリアの州領主『ヤマメ・イシュター』。
一番低く白い板のような椅子に座るのは、トードリンの族長『オグボンナ・ロビーナ』。
背もたれがやけに長い椅子に座るのは、クロコノイドの皇帝『ロッシーニ・エツ』。
ふかふかの座椅子に座ったのが、スキュラの女王『クナシュア・エキドナ』。
最後に両手を肘当てに手を置いたのは、俺『ナスチュン・ライアール』だ。
周囲の七王が、円卓を囲んでいた。
王達の姿は、壮観だ。着ている服も、正装を着ていた。
マーマンの王である俺の隣に座っていたクナシュア女王が、口を開く。
「さて、今回は一年ぶりの七種族会議。
今回は緊急で、集めることになったのだが……」
「クナシュア女王、まずは俺に言われてくれ」
隣で話し始めたクナシュアを、あえて制した俺。
そのまま、直立で立って頭を下げた。
「二年前の戦いで、多くの被害を出したこと。
深海を、混乱に招いたことを申し訳ないと思う」
「ナスチュン王、前回の戦いで謝罪を行ったであろう。
そこで既に禊ぎは済んでおるだろう……謝ることはない」
大きな体のオグボンナは太い声で、俺の事を慰めた。
「でも我が軍の犯した罪は、決して容易に消えるモノではない。
特に、ヤマメ殿とエツ殿には迷惑をかけた。
この場を借りて再び謝罪する、すまなかった」頭を下げた俺。
「いえ、仕方ないですよ。もう済んだ話ですし」
「まあ、謝罪は受け取っておこう」
ヤマメ州領主と、エツ皇帝がおのおのの対応で俺の謝罪を受け取った。
その上で、俺はエツ皇帝を真正面で見ていた。
「その謝罪の上で、お願いがある。エツ皇帝」
「なんだ?」エツ皇帝の、鰐頭の中にある碧眼が俺を見ていた。
その目は、大きくて澄んでいた。
淀みの無い目は、若い皇帝の目だ。
「エツ皇帝……クロコノイド軍は現在、我が半魚人軍を攻撃しております。
先日も、イラークを失ってしまいました。
現状半魚人軍は、戦力の多くを失ってしまい戦意を失っております。
そこで停戦をお願いしたく、エツ皇帝にお願いしたいと思いまして」
「なるほど、半魚人軍もすっかり戦意をそがれたと」
「はい。無論、相応の賠償をさせていただきます」
「ナスチュン王、何を賠償して抱けるのか?」
「賠償金として金1億イダルはどうでしょうか?」
俺は、早速停戦支度金の話を始めていた。




