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水の中の戦争  作者: 葉月 優奈
三話:スキュラ女王の七種族会議
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――イラーク城:王の間――

(YENTUYUI’S EYES)

イラーク城は、大きな岩を加工した通称『岩の城』。

この辺りは海底山脈が多くて、岩場が多い。

元々岩の山が多く、水岩石の宝庫だ。また鉱石が採れる海底鉱山も存在していた。


イラーク城の中、私がいたのは王の間。大きな王座に、私は座っていた。

半魚人は、下半身が魚なので椅子に座る習慣が無い。

よって、ルビアから王座を持ち込ませていた。

私の前には、老人クロコノイドのニギスが立っていた。


「イラーク城も、肥沃な土地なのだな」

「ええ、そうでございます。

北洋は、海神ポセイドンの加護を強く受けている地域が多いですのぅ」

「相変わらず、いい生活をしているな。半魚人共は」

黒い鱗のクロコノイドは、にこやかな顔で私を見ていた。


「後は、報告書の通りです」

「今、見ておる」海藻紙に書かれたイラーク海域の情報を、見ていた。

資源に、食料。兵士を預かる将軍は、常に占領地の状況に気を配らないといけない。

この町で、どの程度物資を補充できるのか。


「なるほど、この地は水岩石と珊瑚が採れるようだな」

「はい、後は珍しいところで『深海真珠』が大量に採れるそうです」

「深海真珠とは?」

「宝飾用の金属で、高値で取引がされています」

「なるほど」

「興味は無いのですか?」

手を広げて話すニギスに、私は冷静な顔を見せていた。


「何の興味だ?」

「女性なら、深海真珠のアクセサリーは大好物でしょう。

イヤリングに、ピアス、ネックレスも。

女性は、輝くアクセサリーにお金を出してでも欲しがるモノです」

「そうか、私は気にしたことが無いが……」

私は、アクセサリーに興味がない。

目の前のニギスは、ニヤニヤしながら私を見ていた。


「何がオカシイのだ?ニギス殿」

「いや、イエンツーユイ将軍も真珠が似合うと思って」

「そうか?」

「イエンツーユイには、真珠は似合わないぞ」

ニギスの後ろから、白い体のテンタルス……サハギーが姿を見せていた。

四つ足を器用に動かして、水岩石の床を歩いて現れた。


「サハギー将軍、真珠に興味があるのか?」

「いや。それより前回の相手は、なかなか楽しめたぜ。殺し」

「相変わらず、「殺し」が好きだな」

「おうよ・俺に殺しが無けりゃ、生きていく意味が無いからな」

サハギーの言葉は、私も少し理解ができた。

圧倒的な強さで「殺し」を求める軍人サハギー。

戦うことでしか、価値を見いだせない私。

私とサハギーは、似たもの同士だ。


「それより、イエンツーユイ将軍。

次の戦はどこだ?いよいよ半魚人軍の首都センブレルか?」

「そうだな、今ならセンブレルも考えていいだろう」

イラークの地理的に、北の大都市センブレルは隣接していた。

だが、センブレルは半魚人最大の都市。

敵軍も多く、かなり厳しい戦いが予想されていた。


前回は、運良く半魚人軍の仲間割れがあって危機を乗り越えた。

サハギー殿やニギス殿の援軍が無ければ、敵の数で押し切られていたかもしれない。

私の赤い鱗には、まだいくつもキズが残っていた。痛みも残っていた。


「だが、考えるのは私では無い」

「皇帝エツか?」

サハギーは、つまらなさそうに私を見ていた。

不満そうなサハギーは、私にあることを問いただした。


「お前は、クロコノイドの女王になろうとは思わないのか?」

意外な一言が、サハギーの口から飛び出してきた。



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