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水の中の戦争  作者: 葉月 優奈
三話:スキュラ女王の七種族会議
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クナシュア・エキドナ、半魚人軍の同盟盟主スキュラの女王だ。

藍色のロングヘアーに、胸は白いドレス。スカートはないものの、気品が漂っていた。

子供の頃からクナシュアのことは知っていたが、今のクナシュアは胸もかなり大きい。


かつては、スキュラとは俺たちの軍は戦争状態だった。

前女王、エキドナ女王時代だ。クナシュアの母親でもある。

エキドナを打ち倒した俺たちは、クナシュアが女王になって和平を結んだ。

今の関係は良好、今回の戦いでも同盟軍を送ってもらっていた。


「前回の戦いでは、オコゼヘッドの軍も被害が出た」

「そうだな、わらわも報告は受けておる」

大人の女性のクナシュアは、落ち着いていた。

犬の下半身の四つ足で犬かきをするクナシュアは、堂々としていた。


「戦っていれば、常に味方の被害は覚悟しないといけない」

「そう言ってもらえると……助かる」

「ナスチュン王、今の四天王は?」

「ここにいるテトラと、ギマの二人だけだ。

ビンナガは、今後四天王に推挙する予定だ。」

俺は円卓に座る、テトラとギマとビンナガを紹介した。

紹介している最中に、クナシュア専用の椅子が運ばれてきた。

どうやらクナシュアの椅子は、ふかふかクッションのような座椅子だ。

クナシュアは、慣れた手つきで犬の足を座らせていた。


それにしても、クナシュア女王がセンブレルを訪れたのは意外だ。

普段のクナシュア女王は、あまり外を出ない人だ。

スキュラの城は、北洋の端に存在しているのが理由だ。

だからこそ、ビンナガ……いやビアスが女王を呼んだのは、おそらく異例のことだろう。


「クナシュア、今日は何の用で来られたのですか?」

「ナスチュン王が苦労していると、ビアス殿から聞いた。

このまま行けば、再びセンブレルが陥落の危機だと言うだから。

わらわは、急ぎここに来たのだ」

「そうか、ビアスが救援を出したのか」

「うむ」クナシュアは、笑って見せた。

初めて出会ったときは、とっても小さな幼女のクナシュア女王。


スキュラの成長は、あまりにも早い。

俺たち半魚人よりも二倍の速さで年を取るから、成長も早い。

だけど、寿命もそのぶん短い。スキュラの平均寿命は、三十年と言われていた。

三十年余りで死んでしまうのは、なんとも悲しい種族だ。


「なんだ?わらわの顔に、なんかついているのか?」

「いえ、別に……」

「そうか。ビアス殿から、いくつか索を受けた。

自分にもしもの時があれば、わらわが動くようにと……な」

「そこまでビアスは、考えていたのか」

俺は、ビアスの凄さと忠誠心を改めて感じていた。


「だとしたら、クロコノイドを倒す索は一体何だ?」

「クロコノイドを倒すのでは無い。

ここ、センブレルの陥落を防ぐ方法だ」

「センブレルの陥落を、防ぐ方法?」

俺は首をかしげた。

センブレルの陥落を防ぐのは、敵であるクロコノイドの軍を倒すことではないのだろうか。

何が違うのかは、俺は分からない。


「ビアスは、何をクナシュア殿に言っていた?」

「わらわがここに来たと言うことは、何か感じぬか?お主とわらわと共通点は何だ?」

「いや、俺は半魚人の王で……クナシュアはスキュラの女王。だからまさか……」

「『七種族会議ポセイダルミーティング』を行なう」

「『七種族会議』?マジか!」俺は叫んでいた。

確かに『七種族会議』ならば、この危機を脱することもできるだろう。

だけど、俺には辛い思い出しかない。


「ああ、ナスチュン殿にやってもらうことが一つ」

「なんだ?それでセンブレルを守れるのだろうな?」

「お前は一度、体験をしているだろう。『七種族会議』を」

円卓に座るクナシュアが、手を叩く。


手を叩いたら、扉が開いて付き添いのスキュラがやってきた。

スキュラの下半身は、蛇。一般的なスネークヘッドだ。

無地のシャツを着たスネークヘッドは、そのまま俺の前にやってきた。

スキュラは俺のいた円卓に、五枚の書簡を差し出してきた。


「ああ、忘れていたよ」俺は忘れていた。

俺が浴びた、二年前の屈辱を。

二年前に行なった休戦合意と、賠償金の書面を思い出してしまった。



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