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水の中の戦争  作者: 葉月 優奈
二話:テンタルスの死神将軍
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あたしは失敗した。

初陣で、功を焦った。

これならば、死んだ方がまだ良かったかもしれない。

だけど、ベージュは死んでいない。メルルーサも元気だ。


「なんで、なんで?」

イエンツーユイの傷だらけの背中が、とても大きく見えた。

それでも、半魚人の兵士を強引に蹴散らした。

黙って戦う将軍の背中を見て、あたしは唖然としてしまう。


「どうして?」

だけど、無言で戦うイエンツーユイ。

軍神として、いつも先頭で戦うイエンツーユイ将軍。


「馬鹿者」一言だけ呟いた、イエンツーユイ。

「ごめんなさい」あたしは謝った。

ここで謝っても、絶対に許されることじゃない。

あたしがやったことは、取り返しのつかないことだ。


あたしの失敗だ。

功を焦り、我を忘れたあたしが突っ込んでいった結果がこのザマだ。

軍から孤立してしまい、敵の罠にはまってしまった。

その結果、将軍の身を危険にさらしてしまった。


「やっと分かったか」

「ですが、将軍……そのキズは?」メルルーサは逆に、心配していた。

「私は大丈夫。ここを切り抜けるぞ」

「はい、将軍!」前を向いているイエンツーユイ。

あたしと、メルルーサに声をかけていた。

そのまま、将軍が半魚人軍を蹴散らした。


やはり、イエンツーユイ将軍は頼もしい。

剣で次々と、半魚人を倒していく。

その動きは、華麗で圧倒的だ。自分の前に敵がいなければ、見とれてしまうほどだ。


(やっぱり、将軍は凄い)

あたしもまた、半魚人軍を切り捨てた。

槍で襲ってくる半魚人の敵を、突き刺していた。

岩場の伏兵を、見える範囲蹴散らしていたイエンツーユイ将軍。

だけど、イエンツーユイは難しい顔を見せていた。


「これで、終わったよね?」

「そんなに、簡単にいかぬようだな」

周りには半魚人の兵士の死体が、いくつも浮いていた。

敵軍は沈静化していて、周りの軍は既に機能していない。


「だが、来るぞ」

「来るって?」

「敵の集団だ」

あたしたちがいる場所は、岩場が壁のように連なっているが少し広い空間が見えた。

ここは、広い場所。敵兵を隠す場所は無い。

だけどそれが、敵がこの広場におびき寄せる理由でもあった。


「どういうことですか?」メルルーサが、将軍に問う。

「そのままの意味だ、来るぞ」

イエンツーユイ将軍の言うとおり、前から大軍が姿を見せた。


そこにいたのは、半魚人の軍。数は千はいるだろうか。

マーマンとマーメイドの兵士が、珊瑚の槍をみな持っていた。

ただ、一人のマーマンを除いて。


そのマーマンは中央に陣取って、泳いで姿を見せていた。

小柄な体で、三角帽子に青いコート。兵士が着ている鎧とは、明らかに違う。

帽子を被ったマーマンは、じっとあたし達を見ていた。

そんなあたしの前にいた、イエンツーユイ将軍が口を開いた。


「あなたが、ビアス将軍ですか?」

イエンツーユイの言葉に、「ええ」とビアスは静かに答えた。



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