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水の中の戦争  作者: 葉月 優奈
二話:テンタルスの死神将軍
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俺の得意技は、関節技。

全てのテンタルスは、この戦い方が基本的だ。

武器を扱うほど、テンタルスの長い手は器用にできていない。

六本も手があるので、操ろうとするにも脳が追いつかないのが理由だ。

だからテンタルスは、武器を使うのをやめた。ただ一人を覗いては。


「雑魚の死体は、つまらない」

首が折れたマーマンが、俺の前に漂っていた。

ここは水の中、死んだヤツはしばらく水中を彷徨っていた。

ふわふわと彷徨う死体(マーマン)を、俺はつまらない顔で眺めていた。


「お前ら、とっととこいつらを仕留めるぞ!」

「はい、サハギー様」俺は檄を飛ばした。

周りのテンタルスの兵士も、次々とマーマンやマーメイドの兵士を関節で絞め殺していた。


だが、戦況は互角だ。

こちらの軍は五千ではなく、三千だ。

二千の補充兵はルビアに残していた。

だが、敵であるマーマンとマーメイドの数が、減っていかない。

岩場から、次々と小出しで半魚人の増援が出てきた。


「おかしいな」

二十人ほど半魚人を絞め殺した俺も、さすがに気になっていた。

狭い岩場の戦場で、戦場で戦える兵士の数は限られていた。

それでも、次から次へと半魚人が行く手を阻む。


(キリがないな。これがマーマンの数の暴力か)

マーマンの兵士が、奥の岩場からすぐに加勢してきた。

敵の数は減らないし、こちらのテンタルス軍の兵士が疲れていた。


「ここは、絶対に通さない。ビアス様の為に」

再び出てくる、似たような金属鎧のマーマンだ。

マーマンの兵士が、軍勢を率いてこちらに向かってきた。

狭い岩場だけど、後ろにもかなりの兵士がいた。


「まだ、増援かよ」

「どうされます?サハギー将軍」

テンタルスの副官が、俺に指示を求めてきた。

副官の男も、疲れた様子が見えた。


俺は周囲を見回す。

周りのテンタスルは疲労が濃い。海にはテンタルスの同士の死体も漂っていた。

それでも次から出てくるマーマンを見て、俺は苦々しい顔で決意した。


「さすがに、これ以上の被害は出せない。一旦撤退するぞ!」

「ですがサハギー様、ここの戦線はどうされます?

ベタ様の指示では、ここの戦線を維持しないと戦況的に厳しくなるかと……」

「この地を取らなくても、なんとかなるだろう。

別働隊には、俺たちの軍神がいるんだ。

ここでは、無駄な消耗戦をするべきじゃ無い

引きつけて、兵力を分断させただけで俺たちの仕事は既に完了している」

「了解しました」

「ずらかるぞ!」俺が叫んだ。

テンタルスの副官に声をかけて、俺達は撤退を開始していた。

逃げる俺の目の前には、マーマンの死体とテンタルスの死体が、水中に漂っていた。



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