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水の中の戦争  作者: 葉月 優奈
二話:テンタルスの死神将軍
16/56

016

――イラーク海域――

(SAHAGEY’S EYES)

この海域は、水岩石の岩場が多く高く積み重なっていた。

高い岩場は、移動を妨げた狭い場所だ。

水面の上には、大きな渦が見えた。激しく回る渦のある上から泳いでいくのは、難しい。


岩場で狭い場所は、俺は嫌いではない。むしろ得意だ。

白い烏賊の姿をするテンタルスは岩場の中を、素早く泳いでいた。

なにせ、俺たちは足が四本もあるのだから。


好戦的な俺は、いつも軍の先陣を突っ走って泳ぐ。

テンタルス一の武闘派将軍、サハギー・ギメルソンとしては当然だ。

真っ白な烏賊肌で金髪の男が、白い四本足を動かして岩場を抜けて進む。


ぶつかりそうになれば、白い六本の手が有効だ。

手を使い、岩場を受け止めながら方向転換をすればいい。

この岩場、超楽しい。俺たちテンタルスには絶好の戦場だ。


「敵は、マーマン。岩場を抜ければ、イラークの水中都市だ。

俺たちが一番槍で、イラークを手に入れるぞ!」

俺が移動しながら、後ろの兵士に檄を飛ばす。

「おうっ!」

「野郎ども、遅れるなよ!」

士気の高いテンタルス軍は、岩場をドンドン進んでいく。


「サハギー様」声をかけるのは、俺のテンタルスの副官だ。

俺なんかよりもずっと若い、金の短髪のテンタルスが姿を見せた。

着ている服は、赤いジャケット。六本の手の所には、穴が開いていた。


「どうした?」

「敵兵となかなか遭遇しませんね」

「それはそれで、いい事では無いか」

「意外ですね。サハギー将軍の性格から、退屈をしているのでは無いかと……」

「戦わずに得るものを得られれば、それが一番いい。

俺たちテンタルスは、規模が小さく領地も資源も乏しい。

クロコノイドとマーマンが戦っている最中に、奪えるモノは全部手に入れる」

「さすがはサハギー様」

「というのが、コチ王の考えよ!

まあ、俺にとってはどちらでもいいがな」

「サハギー様?」

「俺は戦場で、殺しができるだけでいい。

殺しているときは、生きている感覚が一番感じられる。

そういう意味では、軍神イエンツーユイと俺は気が合うダチなんだよ!」

「は、はあ……そうですか」

俺の言葉に、副官のテンタルスは呆れていた。

俺の考えは、サディストだと自分でも思う。


だけど、相手の死体を見るのが好きだ。

死んだ敵が、海で無気力に漂う姿を見るのが好きだ。


すると先鋒を進んでいる俺の前に、大軍の気配を感じた。

「来たか?」

「サハギー様、前に敵兵らしき集団を見つけました」

「臨戦態勢に入れ、敵だ。野郎共、さあ狩りの時間だぜ!」

敵の伏兵の登場に俺は、嬉しそうに叫びだした。

叫び声に反応して俺の目の前には、棘珊瑚の槍を持ったマーマン兵が岩場から出てきた。

全員が出たわけでは無いが、数は二百人ほどだろうか。


「ここから先は通さない」

出てきたのは、藍色の魚の下半身のマーマン。

どうやらこの男が、この伏兵部隊のリーダーだと俺は判断した。

マーマンなのに肩まである青く長い髪、金属鎧で上半身の体を覆っていた。

顔は若い少年のような顔、だけど目つきは険しい。


「ああ、いいさ。お前達は、俺が殺す」

相手に対して俺は、舌なめずりしながら六本の手が怪しく動いていた。



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