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水の中の戦争  作者: 葉月 優奈
プロローグ
1/56

001

世界の七割が、海だというこの世界。

どこまでも広がり、どこまでも深い海。

海には多くの種族が住み、その全てが海神ポセイドンによる加護を受けていた。


ここは、地上七千メートル以上の深い深い海の中。

日の光も届かない、深海世界が存在していた。

そして、独自の文化が育まれていて地上には無い様々な生き物が住んでいた。



――海底歴344年・ルビア海域――

ルビアという海がある。この海の名前は、海神ポセイドンが名付けたものだ。

光が届かないはずの深海世界だけど、ここは暗くはない。

明るい理由は、地面が光っていた。砂の地面が、光を放っていた。

ぼんやりと光る地面は、周囲を照らしていた。


ここは深海、つまり水の中。

澄んだ青というより藍色の世界で、砂の明かりが幻想的に光っていた。

砂の明かりで育ったのか、地面には珊瑚が映えていた。


藍色の水の中、幻想的な世界が広がっていた。

そんな深海世界の中で、戦争が行われていた。


「邪魔をするな!」

戦っているのは、上半身が人の体で下半身が魚の人間。

下半身の魚は、青い鱗の尾びれを持つ。

半魚人(マーマン)と言われる種族が、太い棘珊瑚の槍を握り戦っていた。

マーマンの上半身は、藍色のジャンパーのようなピチピチの服だ。

筋肉質の体のマーマンの体で、青く薄い丸坊主の頭が特徴のマーマンには、戦っている相手がいた。


全身を鱗で覆われた、鰐のような種族だ。

だけど、二足歩行で足には独特なひれがついていた。

さらに特徴的には頭だ。鰐の被り物をしたような頭で、鰐の口の中には顔が見えた。

その顔は普通の人間の肌色の顔。若い男性の顔が、鰐の口から覗いていた。


鰐を進化させたようなこの種族を、クロコノイドという。

クロコノイドの武器は、主に剣で戦う。

鯨の革を使った服を着て、半魚人と戦う。


「お前こそ、この地を明け渡せ!化け物半魚人!」

「何を言う、侵略者鰐鱗族(クロコノイド)め!」

大柄のマーマンと、珊瑚で作られた剣を持った鰐鱗族が戦う。

だけど、マーマンの大きさは圧倒的で力の差は明白だ。


「ば、化け物だ!」押されるクロコノイド。

「死ねえっ!」

大柄マーマンが、クロコノイドを珊瑚の槍で突き刺した。

一撃でクロコノイドは絶命し、そのまま珊瑚の槍を抜かれた。

抜かれた瞬間、クロコノイドの体がその場に浮かび上がった。


命がなくなったクロコノイドは、そのまま意識無く水中を彷徨う。

まるで、水中にある軽い木くずのようだ。


この水中では、半魚人とクロコノイドが戦っていた。

だが、ここで戦った一回りも大きな体の半魚人は強さを見せていた。

大柄マーマンは、すぐに敵であるクロコノイドに突っ込んでいく。

大きなマーマンの体に、クロコノイドの兵士は怯えていた。


「これで11」

面白いようにマーマンの槍が、クロコノイドを貫いた。

倒れたクロコノイドは、そのまま魂が抜けて水中を漂っていく。

白目をむいたまま不気味な死体が漂った光景は、光の砂が放つ幻想的な明るさで異様にも見えた。


「コノシロ様」

「ん?」近づくのは一人のマーメイド。

半魚人の事を男女で区別するならば、男はマーマン、女をマーメイドと呼ぶ。


青く長い髪のマーメイドの顔は若く、着ている服は藍色のジャンパーだ。

半魚人軍の部隊の服として、黒いジャンパーを着ていた。

マーメイドが背負うは、ピンク色の槍。半魚人がよく使う武器は、槍だ。

特に『棘珊瑚』と言われた、棘のある珊瑚を加工した武器を用いる事が多い。


「どうした?」コノシロという大柄マーマンが声をかけた。

マーメイドはコノシロの前に、泳いで近づく。

そのまま、敬礼するマーメイドの兵士。


「報告です、第三部隊が壊滅しました」

「壊滅?そんなはずは無い。

あそこは、シャリー軍の千五百の兵士が防衛に当たっていたはずだ」

「ですが、残念なことにシェリー隊長が打ち取られて……」

「嘘では無いだろうな?」

「はい、私もシャリー様の軍の兵士ですが……」

「シェリーを討ったのは、誰だ?」険しい顔で、聞いてきたコノシロ。

「私よ」そんな中、一人のクロコノイドが姿を見せた。


鰐の頭の中に見えたクロコノイドの顔は、女だ。

鱗が深紅のように赤く、その鱗を真っ黒なコートで隠していた。

女のクロコノイドは、決して大きくは無い。

むしろ小柄なクロコノイドは、冷めた目で大きなマーマンを見上げていた。


「この女です、コイツがシェリー様を……」

怒った様子で、マーメイドが背中の棘珊瑚の槍を握った。

そのまま、怒りを込めたマーメイドがクロコノイドに向かって泳ぐ。

猛スピードで、クロコノイドに突進していく。女のクロコノイドは動かない。


槍先がクロコノイドに近づく瞬間、槍先が弾かれてマーメイドは槍を手放した。

槍は女のクロコノイドの横を、当たること無く飛んでいく。

一方突進したマーメイドは、クロコノイドの持つ左手の剣に腹を刺されていた。


「な、なんで……」

マーメイドは、悔しそうな顔でそのまま絶命した。

剣を抜かれると、彼女の体が水の中を漂っていた。


「お前は……」

「私の名はユナ・イエンツーユイ。私が、この軍の総大将です。

そこにいるのはコノシロ・ティラローニ将軍でしょ?」

イエンツーユイが抑揚のない声で、大きなマーマンのコノシロに言い放ってきた。

それを聞いて、コノシロは不敵に笑っていた。

「そうか……そうか……」と不敵な笑みが海の中に響いていた。



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