デブサイクな旦那様はとても優しい人でした
私はメレーヌ・クレマン。クレマン男爵家の長女です。両親とも健在で、下に弟と妹が七人います。みんな優しくて自慢の家族です。
そんな私の家族は、今ピンチです。具体的に言うと、借金で首が回らなくなっています。
元々堅実に領地経営を行っていた両親でしたが、突然クレマン男爵領は地震に見舞われました。平民達の生活を守るため、復興にお金をかけた両親。貯蓄も無くなり、借金をせざるを得ない状況になりました。
そして、利息の膨らんだ借金を返せない状況に陥り…借金をしたディオン・エマニュエル公爵様に頭を下げることに。するとディオン様は、それを許してくれました。ただし、借金をチャラにする代わりに私達姉妹の中から嫁を貰いたいと仰いました。
ディオン様は若くして公爵家を継いだため、十九歳。私もまだ十九歳になったばかり。ということで、私が嫁ぐことになりました。
問題はディオン様がデブ、ブサイクと呼ばれるような容姿であること。そして大変気難しい性格だと言われていることです。上手くやっていけるでしょうか…?
ー…
結局今日まで、顔合わせ無しで結婚式を迎えることになりました。両親は今にも泣きそうな顔で私達を見守ります。
「…メレーヌ嬢」
「はい、旦那様」
「もし私からの口付けが嫌なら、口付けするフリをするから早めに言いなさい」
「…え?」
「こんな醜い男の妻になるのは心苦しいだろう。せめて甘やかしてやることぐらいしか私には出来ない。…どうする?」
…あれ?気難しい性格どころか、優しくありませんか?
「い、いえ。口付けしてください。神の前での神聖な儀式ですから」
「…なるほど、我が妻は優しい上に誠実らしい。…君は嫌かも知れないが、私は君のような女性と一緒になれることがとても嬉しい」
微笑むディオン様。あれ、あれれ?聞いてた話と全然違うぞ?確かに、肉に塗れた顔で微笑まれてもときめきはしないけど、なんか良い人なのでは?
「では、誓いのキスを」
ディオン様に優しくそっと、触れるか触れないか、ギリギリ触れたかなくらいのキスをされた。やっぱりこの人優しいよ!
その後、慌ただしく披露宴などをこなして、気付いたら夕飯時。ディオン様と私だけの夕食の場で、ディオン様と会話をしてみる。
「その、旦那様」
「なんだ?」
「単刀直入に言わせてもらいますが」
ディオン様はごくりと息を呑んだ。緊張しているらしい。
「旦那様は、本当はお優しい方ですよね?なんで悪い噂が流れているのです?」
「あ…いや、その。私はまだ公爵家を継ぐ前は、自分で言うのもなんだが容姿が良い方でな」
それは小耳に挟んでます。
「それで、爵位とルックスに目が眩んだご令嬢達から求愛されることが多くて…冷たく突き放していたんだ。今考えると傲慢だった。だから、噂は強ち間違いではない。今は性格が矯正されただけだな」
「へぇ…」
「…爵位を継承してから、忙しさとそのストレスで醜くなり、それからは誰からも相手にされなくなった。そして借金を盾に君を娶るような卑怯者に成り下がったわけだな」
「何もそんな言い方しなくても…」
「ああ、すまない。君に失礼だった」
「いえ、そうじゃなくて、ご自分を卑下しないでください。私はディオン様の今の性格しか知りませんが、今のディオン様、すごく素敵だと思います」
「…メレーヌ嬢」
「もう夫婦なんだから、メレーヌでいいですよ。旦那様」
「わかった。メレーヌ…ありがとう」
「はい!」
その後は無言で食事が進み、さあデザートを食べてお風呂にというところで話かけられた。
「で、だな。一つ相談がある」
「なんでしょうか」
「夜の生活なんだが、私が痩せるまで待ってくれないか。清らかで嫋やかな君を押し潰してしまいそうでな…」
「…やっぱり旦那様はお優しい方ですよ。わかりました!そういうことならばお手伝い致します!」
「え?」
「我が家は貧乏で、使用人も最低限しかいなかったので実は私が自炊していたのです!私が旦那様を痩せさせてみせます!」
「だが、私は濃い味付けのモノしか受け付けないんだ」
「それが一番の問題ですか。でも、一ヶ月薄味レシピを食べ続ければ、味覚も元に戻りますよ。頑張りましょう!」
「…わ、わかった」
ということで、薄味かつ野菜中心の食生活をスタートさせました。ついでに筋トレもしてもらいます。
ー…
「旦那様、今日の朝ごはんは野菜のスムージーとスクランブルエッグ、パンになります」
「…スムージー」
「はい。頑張りましょう」
「…わ、わかった」
ー…
「旦那様、今日のお昼ご飯は野菜のスムージーと卵とベーコンと野菜のスープ、パンと、そしてトンテキになります」
「肉を食べてもいいのか?」
「たまになら大丈夫ですよ」
「…ソースが薄味だな」
「旦那様には薄味に慣れて頂かないと、です!」
ー…
「旦那様、今日のおやつは野菜のスムージーと野菜のケーキです」
「野菜の…ケーキ…?」
「一口どうぞ!」
「…美味い」
「でしょう?」
ー…
「旦那様、あとスクワット十回で終わりですよ!頑張って!」
「いきなりスクワット百回とか…無理だろう…」
「頑張ってください、旦那様!」
「…百!よし、解放されたぁっ!」
「では、少し休んだら腹筋も鍛えましょう」
「…!?」
ー…
「旦那様、今日の夕食は野菜のスムージーとシャケのムニエル、ツナと大根のひじき煮にパンとなります」
「野菜のスムージー率高いな…」
「だって、一番簡単に野菜を食べられるんですもの」
「そして薄味…」
「大丈夫です、慣れます」
ー…
そんなこんなで一ヶ月。旦那様はやっと薄味のお料理に慣れました。今までは何を出しても薄味だと言っていましたが、今では何を出しても美味しいと言ってくれるようになりました。そして薄味レシピと筋トレの効果は身体にも現れて…。
「旦那様!お肉に埋もれていたお顔が見えるようになりましたね!本当に美形だったのですね!」
「メレーヌははっきりとものを言うな…だが、そんな君とだからこそ頑張れた礼を言う。…ありがとう」
「いえいえ。…でも、痩せて美しくなったディオン様には引く手数多でしょう?…私と離婚されて、もっとお美しい方と結婚されますか?」
「…!?嫌だ、メレーヌ、捨てないでくれ!私が何かしたなら謝る!すまなかった!そんなことを言わないでくれ!」
「え?」
「私にはメレーヌしかいない、メレーヌだけを愛しているんだ!」
強く強く抱きしめられます。
「…旦那様」
「メレーヌ…」
「旦那様が、私が良いと言ってくださるなら、いつまでも側に居ます。さっきの言葉は忘れてください」
「!…わかった、忘れる。…愛してる、メレーヌ」
「私も、いつも私を気遣ってくれる優しい旦那様が大好きです。愛しています」
こうして私達はようやく本当の意味で結ばれて、子宝にも恵まれて愛のある素敵な家庭を築いていくことが出来ました。
実家の方も、旦那様がなにかと融通をきかせてくださったおかげで今ではなんとかやっていけているようです。本当に、旦那様には感謝してもしきれません。
「メレーヌ。私の妻になってくれてありがとう」
「旦那様こそ、私を愛してくれてありがとうございます」
「お父様とお母様、ラブラブだー!」
「ラブラブだー!」
「ええ、そうよ。貴方達も素敵なお嫁さんを見つけて、ラブラブになりなさいな」
「はーい!」
今、私は最高に幸せです!
敦君はいつだって楽しそう
という短編小説もよろしくお願いします!\\\\٩( 'ω' )و ////




