表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/11

1話



「お前っていいよなぁ〜。昔から近くに超絶美少女の幼馴染がいてさぁ……。これだけ長くいるとそのうち恋仲とかになったりするんじゃねえの?」


おい、今この男なんて言った?「そのうち恋仲になったりするんじゃねえの」………だと?


水谷(みずたに)宏太(こうた)の友人は普段から、くだらない話ばかり持ち込んでくる人だった。今日も変わらずくだらぬ妄言を吐き散らしては俺に考えを問うてくる。そうに決まってる。そうに違いない。

はっきり言って面倒だったから聞き流していた………のだが、数秒後。


あ!これ、聞き捨てならねぇわ!



死んだカエルの目が生きのいいマグロの目に大変身したかのように、急に目の色を変えて、俺は友人の方を向く。

納得いかないという表情を全開に浮かべながら。


「え?今日はなんだが、今日はやけに食い付きがいいじゃん?何?俺の気のせい?」


友人の西村くんは、なんだが嬉しそうな表情を浮かべている。たがしかし、ここはニコニコしていい場面ではないよな?

俺の表情を見てくれ!!


本当なら、「あれ?俺なんか、ダメなこと言っちゃった?」とばつが悪そうにするものだと思うのだが、久々に釣竿に生きのいいマグロ(俺)が食いついたことによって嬉しさの方が勝ったらしい。


「気のせいじゃないな……猛烈に反抗したい気分だ」


「なにそれ、反抗期?」


「同級生に反抗期してどうすんだよ!?お前は俺のなんなんだ!?」


「ご主人様??」


「ペットじゃねぇよ!」


西村くんの俺への認識はどうなっているんだろうか?多分ふざけて言っていると思うのだが、実際のところは彼にしかわからない。ここで事実確認をして、万に1つ。微妙な雰囲気になったらそれはそれで気持ち悪いので詳しくは追求せずに、話を続けた。


「俺が抗議したいのは、『幼馴染と恋仲になる件』についてだ」


「なに……そのありふれたテンプレ属性ましましのタイトル……流石にセンスない」


うるせぇな、俺だってわかってるよ!


妙に辛辣な西村くんに対して、軽く拳を握ったがすんでのところで堪えた。

ここで争っていても勝ち目はないし、より辛辣な言葉が俺の胸にザクザクと生々しい音を立てて突き刺さって行くだけな気がした。

ここで一時撤退するのが得策に違いない。


「俺のセンスのなさは置いておいて、幼馴染と恋仲になるなんて、一部の人間だけだからな!?俺と千紗(ちさ)は、そんな関係になったことないからな!!」


千紗とは、俺の小学校からの幼馴染である。小学校一年生で同じクラスになったのをきっかけにそれから気持ち悪いくらいに一緒になることが多かった。これはもう、呪われているか、腐れ縁レベルかのどちらかだった。


「そうなのか?恋仲になったりしないのか?」


「しないんだなぁ〜……それが。まず第一に幼馴染とは仲良くないといけないだろ?」


「でも、お前ら仲良いじゃん……」


「ま、そうだけどさ!だけどさ、やっぱり信用されてないといけないだろ?」


「このクラスでアイツに信用されてると言ったらお前しかいないだろ?他の男子になんて目もくれてないし……」


「だけどさ!ほら、友情感覚と恋愛感情とはまたまた違ったもので……」


「お前、千紗のこと大好きって言ってたし……」


「そうだけども!!!違うんだよっ!!!!」


「もう、そこまで言って、違うって言う方が難しいと思うけど……」


次第に条件に当てはまっていくのに、俺の気持ちは興奮するところが逆に落ち込んでいく一方だった。


だって………


「俺、昨日さ。千紗に好きな人ができて、付き合いたいからその練習相手になってって言われたんだよね……」



その言葉を放った瞬間、教室がツンドラ地帯になったような気がした。あたりはただひたすらの静寂に包まれており、西村くんでさえも言葉が見つからないのか、沈黙を貫いていた。


「だから、幼馴染と恋仲になるのは、無理だと思うんだよ。所詮、仲のいい友達。なんでも相談できる良き理解者。そんなポジションなんだよ。幼馴染って……」



これは、俺が心から思うことであった。小学校五年生から抱いた甘い恋心。初恋を逃したくなくて、俺に対して恋愛感情がないであろう彼女に告らなかった……というのは、立派なカッコつけで、チキンで告るのが怖かったんですごめんなさい。


「そうだったんだな……なんか、ごめん」


自分の考えを話したのち自嘲して笑って見せると、西村くんはなんだが申し訳なさそうな表情でそう言ってきた。


「いいよ……俺としては、相談されて嬉しかったし……」


そうやって、また笑って見せたが、内心悔しいに決まってんじゃねーかこの野郎!!

納豆コーラを飲むよりも辛い罰ゲームだわ。


「あのさ、傷口に塩を塗って、さらに深く掘り下げてしまうようで悪いんだけど、もしよかったらその話聞かせてくんね?」


西村くんがそう言ってきた時は正気かこいつ?心とかそういうもの存在しないのか?もしかして悪魔なのか?とか色々考えたのだが、彼の瞳があまりにも真っ直ぐだった。


もしかして………


希望など皆無かもしれないが、俺はやはり―――だ。


だから………思い出したくない昨日の出来事を彼に伝える――

お久しぶりです。

4カ月ぶりの投稿となりました。作者のリアル世界が意外とヤバく。執筆に力を入れられない日々が続いておりましたが、12話ほどの短い話を書いてみたいと思います。


評価、ブックマークなどしてくれると嬉しいです。

なお、この作品はもうすでに半分以上書き上がっております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ