てへぺろっ作戦
「何が起きたのか分からない……リザークの本来の剣の重さなんて感じないのに……」
「うん、相手の……今回はサーシャの、向かってくる力を利用しているからね。この方法だと、相手の剣がどれだけ重くても、ボクへの負担は軽いんだよ。手がしびれて剣を取り落とすようなことはな」
「教えてください、リザーク!」
食い気味にサーシャが私の手を取る。
いや、もう、教えてるでしょ……。
「私、どんなに辛くても、この技を身につけてみせます。これならば……力の弱い女の姿でも」
ん?
「力の弱い女の姿?」
女でもじゃなくて、女の姿でもって今言った?
ま、まさか……
背筋に冷たいものが流れる。
知られて……るわけないよね?
「あ、いえ、女の身でも、……女というだけで、その……騎士は無理だろうなんて、言わせませんわっ!私、……絶対、リザークと一緒に騎士になってみせますっ!」
あっれぇ?
なんで、私と一緒に騎士になるなんて話になってるのかな?
ならないよ?
なるなんて言ってないよぉぉぉぉっ。
だけど、ここで首を横に振ったりしたら、サーシャが騎士になるなんて無理だよ、ぷぷっって言ってるみたいに勘違いされそうだし……。
「ぜったい、一緒に、高等部の騎士科に進学しましょうね!」
ってキラキラした目で手を握られて、あああ、首を、首を、これ、横に振ったらどうなるんだろう……。
「おお、サーシャ。一緒に、騎士になろうぜ!」
「そうですね。皆で高等部に進学しましょう」
マージが、サーシャの肩をぽんっと叩いた。
フレッドが私の肩をぽんっと叩いた。にっこり笑っている。
その顔は、皆で一緒に高等部に進学することを信じて疑わない顔だ。
だーっ!騎士にもならないけど、高等部にも進学しない!
特に、第二王子(発狂死)とはご一緒しませんよぉぉぉぉっ。って、どうしたら伝わる?
ああ、そうだ、成績が足りなくて進学できなかった、ごめんねてへぺろ。みんなは高等部でがんばってね!
っていう方向があるじゃないか。うん。進学しないなんて言わなくたって、実力不足なら仕方がないって思ってもらえるよね。
そうだった、そうだった。3人は出来がいいからまぁ、問題なく……Fクラスが再開で4年修了するという問題さえ解決すれば進学できるんだろうな。ってなわけで、最下位脱出には協力するけど、高等部進学はご一緒しませんっていう感じで4年間頑張るからね!
「ボクも、頑張るよっ!」
にっこり笑って答える。うん。頑張ろう、頑張ろう。まぁ、4年のうちに、小学部さぼってたツケが出て来て、前世記憶とか兄特訓だけじゃなんともならない実力不足が露呈していくだろうけどね……あははは。
だって、悪役令嬢のリザベーナって、頭が弱いキャラだったもん。きっと、何年生の壁みたいな、ある時から全然勉強ついていけなくなる系な脳みそなんだよ……。だって、前世でも、算数から数学になって、サインコサインタンジェントっていう呪文が出てきたあたりから、チンプンカンプンチチンプイノプイ。なんだか魔法の呪文ばかりが頭の中に響くようになってきたからね。……まぁ、同時期にオタはまりしすぎて勉強に身が入らなくなったっていうのも、成績ダダ落ちの原因だったかも。それでも、得意な科目は得意……だったから、得意科目でそこそこの大学に進学して、そこそこの企業に就職して、バリキャリしてましたけどね。はい。
サーシャの思いとは裏腹に、騎士になる気のないリザークであった。




