うかつ
やべぇ。一番あってはいけないやつに会ってしまった。ぐぐ。ぐぐぐ。
フレッドが続けようとした言葉を飲み込んだ。そして、変な間をおいてから、小さな声を出す。
「その、君は、誰?どうしてここに?……その、ここは、Fクラスの下駄箱だけれど……」
うん、ぶつかったこと謝らずに、誰だよってとぼけたな。
はいはい。忘れたふりですね。覚えてないふりかな。
って、余裕かましてフレッドの対応を評価してる場合じゃないって。逆に、私が追い詰められてるじゃん。Fクラスの下駄箱に何の用があるの?
クラスメイト以外用があるような場所じゃないよっ。
「殿下っ、これが、落ちていたので、殿下の持ち物ではないかと……」
とっさに手に持っていたトランプを差し出す。
「ああ、確かに僕の物だ。これを届けようとしてくれたの?」
こくんと頷いて、逃亡っ!
長居は無用!無用なのじゃぁぁぁっ!
ダッシュ。
「あ、待って!」
待つか、どあほぉぉぉぉっ!
聞こえないふりしてそのままかけ去る。
馬車に乗り込みぜーはーぜーはー。全力疾走したので息が……。
うぐぐぐ。こんなことなら、明日、学校で手渡せばよかったよ。
と、ふとぶつかった男の子の顔が浮かんだ。
うん、なんかマルヴェルのお兄さんっぽい人に会えたからいいか。なんか和んだ。マルヴェルは元気かなぁ。
やっぱり、高等部行かないって負い目はあるけど、会いたいなぁ。お母様がクレアさんに遊びに来てもらうって言ってたけど、いつになるのかなぁ。
家に帰ると、兄たち7人と両親で100マス計算大会が催されていた。
えーっと、お父様はとりあえず、仕事したほうが……え?計算が早くなれば仕事も早くなるからこれも仕事のうち?
お母様はなぜ……。1人だけのけものなんて寂しすぎますって、はい、ママァン、私が刺繍に付き合いますよ。だから、泣かないでください。
さて。晴れました。剣術大会の日もぴーかんでしたが、本日もぴーかん。良い天気です。
ちなみに、雨季とか乾季とかそんな感じはなくて、振るときは振るし、振らない時は振らない感じです。
いい天気なんですけどねぇ……。
「おい、フレッド、トランプかしてくれよ」
マージの伸ばした手を、フレッドがぱちんと叩いた。
「これは駄目です!僕の宝物なんですからっ!」
「はぁ?昨日は貸してくれたじゃん。なんで突然宝物……あ、クラスのみんなで特訓した記念のってやつか!そうだな!なら、クラスの皆で記念に1枚ずつ持ってようぜ!」
と、自己解釈でマージがフレッドが大事そうに持つトランプに触った。
「触るなっ!マージと言えど、これに触れることは許さないっ!」
あいやー。
「ちょっと、何があったの?」
「ああ、リザーク。マージも相談が」
と、また、人気のない教室にフレッドに連れていかれ、昨日の出来事を聞かされた。
「なんだ、会えたのか!よかったじゃないか!」
マージがニコニコ顔だ。
よくない。よくない。まったくもって、よくない。
「ちゃんと、あの時のことは知らないふりしたし、彼女もその気が付かなかったと思う」
いや、知らないふりは怪しさ満点だったし、気づいてるよっ!しっかり、ちゃっかり!
「もし、彼女があの時の人間が僕で、顔も見たくないと思っていたら、拾ったトランプなんて届けようとしないだろう?」
うかつ!
にゃーん




