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■転性悪役令嬢 ~男になって破滅フラグを回避したいだけなのに、Fクラスの下克上とか溺愛とか知りませんっ!~  作者: 富士とまと


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うかつ

 やべぇ。一番あってはいけないやつに会ってしまった。ぐぐ。ぐぐぐ。

 フレッドが続けようとした言葉を飲み込んだ。そして、変な間をおいてから、小さな声を出す。

「その、君は、誰?どうしてここに?……その、ここは、Fクラスの下駄箱だけれど……」

 うん、ぶつかったこと謝らずに、誰だよってとぼけたな。

 はいはい。忘れたふりですね。覚えてないふりかな。

 って、余裕かましてフレッドの対応を評価してる場合じゃないって。逆に、私が追い詰められてるじゃん。Fクラスの下駄箱に何の用があるの?

 クラスメイト以外用があるような場所じゃないよっ。

「殿下っ、これが、落ちていたので、殿下の持ち物ではないかと……」

 とっさに手に持っていたトランプを差し出す。

「ああ、確かに僕の物だ。これを届けようとしてくれたの?」

 こくんと頷いて、逃亡っ!

 長居は無用!無用なのじゃぁぁぁっ!

 ダッシュ。

「あ、待って!」

 待つか、どあほぉぉぉぉっ!

 聞こえないふりしてそのままかけ去る。

 馬車に乗り込みぜーはーぜーはー。全力疾走したので息が……。

 うぐぐぐ。こんなことなら、明日、学校で手渡せばよかったよ。

 と、ふとぶつかった男の子の顔が浮かんだ。

 うん、なんかマルヴェルのお兄さんっぽい人に会えたからいいか。なんか和んだ。マルヴェルは元気かなぁ。

 やっぱり、高等部行かないって負い目はあるけど、会いたいなぁ。お母様がクレアさんに遊びに来てもらうって言ってたけど、いつになるのかなぁ。


 家に帰ると、兄たち7人と両親で100マス計算大会が催されていた。

 えーっと、お父様はとりあえず、仕事したほうが……え?計算が早くなれば仕事も早くなるからこれも仕事のうち?

 お母様はなぜ……。1人だけのけものなんて寂しすぎますって、はい、ママァン、私が刺繍に付き合いますよ。だから、泣かないでください。


 さて。晴れました。剣術大会の日もぴーかんでしたが、本日もぴーかん。良い天気です。

 ちなみに、雨季とか乾季とかそんな感じはなくて、振るときは振るし、振らない時は振らない感じです。

 いい天気なんですけどねぇ……。

「おい、フレッド、トランプかしてくれよ」

 マージの伸ばした手を、フレッドがぱちんと叩いた。

「これは駄目です!僕の宝物なんですからっ!」

「はぁ?昨日は貸してくれたじゃん。なんで突然宝物……あ、クラスのみんなで特訓した記念のってやつか!そうだな!なら、クラスの皆で記念に1枚ずつ持ってようぜ!」

 と、自己解釈でマージがフレッドが大事そうに持つトランプに触った。

「触るなっ!マージと言えど、これに触れることは許さないっ!」

 あいやー。

「ちょっと、何があったの?」

「ああ、リザーク。マージも相談が」

 と、また、人気のない教室にフレッドに連れていかれ、昨日の出来事を聞かされた。

「なんだ、会えたのか!よかったじゃないか!」

 マージがニコニコ顔だ。

 よくない。よくない。まったくもって、よくない。

「ちゃんと、あの時のことは知らないふりしたし、彼女もその気が付かなかったと思う」

 いや、知らないふりは怪しさ満点だったし、気づいてるよっ!しっかり、ちゃっかり!

「もし、彼女があの時の人間が僕で、顔も見たくないと思っていたら、拾ったトランプなんて届けようとしないだろう?」

 うかつ!

にゃーん

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