ぐおおおう
馬車から降りるとすでに薄暗くなっている。
うわー、女に途中でなると厄介だよな。……教室に届けるのはあきらめてフレッドの靴入れにでも入れてくるだけにしよう。手元になければダイジョブ。
さっき脱いだ制服の上着はそのまま馬車の中に置いていく。タイとバッジがなければ、万が一女になってもクラスがばれることはない。上着の下はブラウスだ。学校指定のブラウスは、男女とも同じ。クラスや学年違っても同じ。
下駄箱に急ぐ。
太陽、もうちょっと頑張って。
フレッドの下駄箱は、えーっと、私の上だよ。一番初めの成績順に並んでるからね……ははは。私の下はマージ。
てなわけで、自分の下駄箱まで急いで走っていく。
どしーんっ。
うごっ。
また、人とぶつかったぁ!
「ごめんなさい、いそいでいて……」
と、聞き慣れない男の子の声が聞こえる。
「いえ、ボクの……」
声!
私の声が、女になってる。
「わ、私の方こそ、ちょっと忘れ物をして、急いでいて」
慌ててしゃべり方を変える。
「大丈夫?落としたよ」
と、落ちたトランプを拾って手渡してくれた。
「あれ、これは……」
目の前に立っているのは女の私よりも頭半分くらい背の高い男の子。
飛び切りイケメンというわけじゃないけれど、それなりに整った顔の。
誰かに、似てる……。
男の子が、王家のマークを見て驚いた顔をする。
「あ、あの、拾ったんです、そこで……それで、えっと、もしかしたら、殿下のものではないかと……」
王家のマークの入ったトランプもった不審な女になってしまう。まだ、リザークの姿のときならクラスメイトだから持っていたって怪しまれなかったというのに……。
「そうなんだ。俺が、渡しておこうか?」
「え?殿下と知り合いですか?」
びっくりして声を上げる。
クラスメイト以外に知り合いがいることくらい別に珍しいことじゃないのに、なんかちょっと意外に思ってしまった。なんか、フレッドと仲がいいのは私たちFクラスの生徒なんだって、知らない間に、なんか、その……。特別感持ってたのかもしれない。
「あ、いや、えっと、あー」
ん?なんか男の子……先輩かな?バッジとタイの色を確認しようとしたけれど、バッジはカバンの紐で隠れて見えない。タイの色はF。
「Fクラス……」
思わず漏れた声に、はっとして男の子がタイを隠した。
「ご、ごめん、Fクラスの人間と話をするなんて、迷惑だったよね。ぶつかってごめんね。それじゃぁ」
と、慌てて男の子は去っていった。
「待っ……」
喉元まで引き留める言葉が出てきたけど、それを飲み込む。
なぜ、引き留めようとしたの、私?Fクラスだからって、バカにしたりしないと否定したかったから?
ううん、違う。なんか、なんだろう。懐かしい感じがしたから。ホッとする。もう少し話がしたかったんだ。
……なんで?
黒目、黒髪の日本っぽい色合いにほっとしたから?……誰かに、似てた。ああ、そうだ。マルヴェルだ。マルヴェルにお兄さんがいたら、あんな感じかもしれない。
おっと、いけない。この姿で考え事をしてる場合ではなかった。
トランプをさっさとフレッドの下駄箱に入れないと……と、振り返ると、そこにいたっ。
ひぎゃーっ。
フレッドォォォォ。
「き、君はっ!」
さて、第二部の続き。
歴史のテストもありますよ。
リザーク知識の歴史(日本)は役に立たないぞ、どうする?
……まぁそんな感じなんだけどぉ。




