フレッドの忘れ物
「俺も数学得意だぜ?俺が教えてやるよ!」
マージがにかっと笑う。
しかし、なんか、みんな無言。
「な、どうしてだよっ、俺、1問間違えただけだよ?名前をちょっと書き忘れて……0点だったけど……」
いや、点数の問題じゃなくて、たぶん……。
教え方、下手そうじゃね?理路整然とってより、感情直球型っぽいじゃん、マージって。
「そうだ、明日学校休みじゃん、俺んちでテスト勉強しないか?」
マージがいいこと思いついたとばかり手を叩く。
「へー、テスト勉強のために集まるのですか」
フレッドが面白そうだと声を上げる。
「マージ君の家って……伯爵家のお屋敷でしょう?」
庶民の子がびっくりして声を上げる。
「いいの?その、私たちみたいな人間が行っても……」
「なんで?いいに決まってんじゃん。っていうか、おふくろびっくりするぞ。友達いっぱい家に来てくれたら……泣いて喜ぶんじゃないかな!」
マージの言葉に、庶民の子たちが顔を見合わせる。
もちろん、貴族と言えども、国内2番目の力を持つ伯爵家にそうそう足を運べるものではない。
「リザークとフレッドもくてくれるだろ?あ、でも、お前たちは何か家の用事とかある?」
ニコニコと笑うマージ。……お母さんを喜ばせられるのが嬉しいのかなぁ……。
「んじゃ、俺んち集合っていいたいけど、いつも学校始まる時間に校門集合でいいか?馬車は用意するから!あ、お昼ご飯の心配もしなくていいぞ!」
まて、マージ!
学校始まる時間って、普通、友達との勉強会って、もうちょっとゆっくりした時間から始めないか?
しかも、お昼ご飯の心配って、何時間勉強会する気だよっ!学校通うのと変わらないくらいじゃないのか?
教室で帰り支度をしていると、突然フレッドが叫んだ。
「あああーーーっ」
「どうした、フレッド!」
マージが心配そうにフレッドの顔を覗き込む。
「しまった、すっかり忘れていた……」
ん?深刻そうな顔に、何を忘れていたのか心配になる。
「せっかく全校生徒の顔が一度に見られる機会だったのに……彼女を探すのを忘れた……」
「彼女って、例の?」
マージの言葉にフレッドが頷く。
まさか……。
「お詫びをしたかったのに……」
やっぱり、私かよっ!女体化した……というか、呪いが解けた悪役令嬢の私を探そうというのかよっ!
「忘れろ!とにかく、フレッド忘れろ!」
両肩をつかんでぶんぶん振り回す。
「忘れられない」
フレッドが首を振り、マージが私の肩を叩いた。
「忘れたくないんだろ?そっとしておいてやれよ」
いや、そうはいくか。
「そっとしておいてやれってのは、二人の方だろう?相手の気持ちを考えてみろよっ」
ぎっと二人を睨みつける。
「相手の気持ち?」
フレッドが首をかしげた。
「む、胸を触られたんだぞ?女の子にとったら、それって、忘れたいことじゃないのか?忘れたいのに、相手の顔も見たくないのに、探し出して、あの時はごめんとか……」
あっとフレッドが口をふさぐ。
「あの時と言われれば、当然嫌なことを思い出すだろう?せっかく忘れかけていたのに、思い出さされて、恨みたくなるだろう?」
フレッドの顔が青ざめる。
いつもありがとうございます。
フレッドのあやまりたいのは自分の気持ち。ただの自己満足。相手のためじゃないのよ。
でも、あやまらなくちゃいけないことの方が世の中には圧倒的に多い。
だから、まずは謝る。1度は謝る。そこで許してもらえないからといって、怒っちゃ駄目。
謝るって難しい。




