あっというまに中等部入学!時の流れはハヤイデスネ
へい。時は流れる。
3年たち、初等部への入学を目前に控えております。
「リザーク、俺、絶対騎士課に入学できるように頑張るから、入学式でまた会おうぜ」
「マルヴェル……」
ぽろぽろと大粒の涙を流すかわいい弟分。あ、私のが若干若いんだけど、中身はおばさんなので。
マルヴェルは親の領地に戻ることになった。領地にある小学部に通うためだ。優秀な人材(将来の従者)を初等部中等部から発掘するためだ。
言えない。
攻略対象と接点を持たないために、高等部へ行かなきゃいんじゃね?と思い始めたことは言えない。
「あー、またきっと会えるさ」
高等部に行かなくても、王都にいれば、親同士も友達だし、社交界とかいろいろと会うチャンスはあるはずだ。うん。
で、私も領地の初等部へ通うことになりました。とはいえ、王都の隣が領地なので、王都まで馬車で30分。
領地の屋敷にいても、王都の屋敷となんら変わり映えしない毎日です。……兄も両親も王都の屋敷から領地に引っ越ししちゃったからね。
早朝筋トレ及び、剣術、乗馬、そのほかもろもろの訓練は……続くのである。
初等部の授業時間が唯一の休憩タイムとか……。兄たちの愛が重い……。
さて。そんなこんなで初等部を終え、11歳。中等部へと進むことになりました。
初等部は、休憩タイムなので授業とかそっちのけだったんだ。常にぼんやりモード。従者候補どころか友達すらできなかった。あれ?ちょっとぼんやり過ごしすぎた?でも、兄たちの特訓で意識を保つだけの体力が残ってなくて……あわわ。
中等部から王都の学校に代わる。
まぁ、公爵家なのでね。王都のそれなりに名前の通った名門校へ入らされた……。っていうか、兄7人が通った学校……に、入らされました。
名門校だけあって、貴族の子息令嬢も増えるため、親の評判を落とさない程度には授業に参加しないといけない。授業中、起きていられるだけの体力はついたから、たぶん大丈夫……。兄たちの特訓が激しくならなければ……あうう。
いや、でも、頑張るつもりはないよ。高等部に進む気はないので、頭角を現さないようにしなければいけない。
って、初等部の授業さんざんさぼってた自分が、頭角を現すもくそもないと思うんだけどね……ははは。本当全く記憶がないよ。てへぺろ(おっと死語か)。
てなわけで、中等部入学式。
11歳の一年の私、12歳の2年の兄7、14歳の4年の兄6が同じ学校に通うことになります。
「新入生代表挨拶」
ぶはっ。
壇上に姿を現したのは、攻略対象の一人、第二王子(発狂死)じゃないかっ!
聞いてない!中等部も一緒とか、聞いてない!
ってか、よく考えたらこの学校、国内1番上の学校だったわ。そりゃ王族も通うっての……。ぐああ、やだ、戻る。領地にもどるのっ!
あああっ。関わりたくない。いや、関わるもんかぁ!
「在校生代表」
生徒会長として名前を呼ばれて壇上に立ったのは兄6。女性との黄色い声が上がる。
むっふむっふ。お兄様素敵!王子に負けてない!眼福。ううう、転校すると推し兄たちの姿が見られなくなるんだった。転校辞める。
ああそうだ!この学校、国内1の規模を誇る大型校なので、1学年クラスは7つあります。
同じクラスにならなきゃいいんですよ。幸いにして、クラス分けは能力別。
高等部進学できそうな人はバリバリ鍛え上げ、どうも頑張っても無理そうな人はそれなりにという。ね。
しかも、王侯貴族も平民も、平等に能力で分ける……。うん。平民を生まれ持った地位で馬鹿にするんじゃなくて、平民にバカにされないように頑張れって指導方針で……優秀な人間に育て上げるスパルタ中等部。そもそも、実力に自信がない人間は別の中等部に通えばいいという逃げ道付き。
ゲームを思い出す。
うん。第二王子は成績優秀だった。高等部で首席だったはずなので、中等部でもSクラス間違いないね。
んじゃ、私は底辺のFクラスになればいいのでーす。あ、さすがに家名に傷つく?DかEくらいが妥当なとこか?
入学式が終わるとさっそくクラス分けのテスト。
「いいこと、がんばるのよ。あなたならできる」
と、余計なプレッシャーで息子を追い込む貴族を横目に、兄に手を振る。
初めから頑張らない宣言してある私は気楽なものである。
回想。
「優秀な人間だと思われれ王宮勤めになったら家でお父様やお兄様たちのお仕事手伝えなくなるからいやです。テストで手を抜いてもいいですよね?」
と、あざとい幼女から、順調にあざとい少女に育った私。
太陽が沈んでから娘姿でおとうしゃまとおにいしゃまに訴えた。
おっと、失礼。お父様とお兄様ってもう発音できます。
「もちろんだとも、リザ。勉強しすぎて目の下にクマを作ったり、剣の訓練でアザを作ったりする必要なんてないんだよぉ」
あのぉ、自宅の特訓でさんざん全身筋肉痛だの、睡眠不足だの、打ち身ねんざ、もろもろやってますけど……父と兄の愛は重く……げふげふ。
「もし、学校でリザのことを馬鹿にする人間がいたら、僕たちが守るから」
兄6と7がこぶしを握る。
「あー、いえ、お兄様、守っていただかなくても大丈夫ですから……」
それ、逆に兄が卒業してから風当たりが強くなるとか、影で陰湿に噂されるとか……。
さらには、ヒロインが兄ルートに乗ったときの邪魔者としてせっかく悪役令嬢辞めたって言うのに、流れ弾が飛んできてはたまらない……。
「むしろ、どうしようもない弟なんでと冷たく接してもらったほうが、その……」
泣いたー、兄6と7が泣いた。
だめ、泣くの駄目。
「つ、冷たくしなくてもいいんですが、その、兄にかばってもらわないと何にもできないのかと、余計にその、バカにされちゃうと思うので、えーっと、守ってもらわなくてもいいです」
兄1が、泣き出した兄6の頭をなでなで。
兄2が、兄7の頭をなでなで。
うごごご、何、このサービスショット。
「リザの言う通りだ。守るのは簡単だが、見守るのは難しい。が、それが必要な時もある」
ほっ。ありがとう兄1。これで、学校で兄たちと必要以上に関わらないでいいよね?
「そうだぞ。恨みつらみは覚えておいて学校を出てから晴らせばいい」
兄2が、怖いことを言いだした。
「そうだな。そのためにも、力をつけなければいけない。二人とも、頑張るんだぞ」
「はいっ!必ずや高等部首席で入学、卒業し、要職に就きたいと思います!」
「僕も、リザを悪く言った人間のことは忘れることなく勉学に励みたいと思います」
まてー!
まてまて、何なんだ、この家族……。
……う、うん。なるべく地味に目立たないように学校生活を終えよう。私を馬鹿にする人が少なくなるように……しないと、なんか、申し訳ない……。
ぶるるっと思い出して、体が震える。




