忘れろ、忘れろ、わーすーれーろぉーーーっ!
「ちょっと、相談があるんだ……」
学校へ着くやいなや、私とマージはフレッドに手を引かれ、人気のない空き教室に連れていかれた。
「なんだよ、こんなこそこそしなくちゃだめなことか?」
マージは何でも正々堂々したいタイプだろうなぁ。だけど、仮にも王子なんだから、庶民に聞かれちゃまずい話もあるんだろう?
「どうしたらいいのか、分からなくて……その……」
フレッドが言いにくそうに言葉を探す。
「なんだよ?」
フレッドが、意を決したように、両手で顔を覆った。
「女性の胸を触ってしまったっ」
ふーん。
「ま、ま、マジかよっ、お前、す、す、す、進みすぎじゃね?」
は?
え?
おわっ、これ、Y談?
いやいや、いやいや、マジかぁ~!
「ち、ち、違うんだ、触ろうと思ったわけじゃなくて、その、倒れた拍子に、その……」
「えええええーーーーっ!」
ちょっと待て、それって、それって、昨日の帰りの話か?
「なんだよ、偶然かよ。ちゃんと謝ったんだろう?わざとじゃないって」
フレッドが小さく首を横に振った。
「わ、わざとじゃなかったけれど、やっぱり、責任を取ったほうがいいんだろうか……」
はぁ?
「何馬鹿なこと言ってるんだよっ」
責任とって結婚しようなんて言い出すんじゃないだろうなぁ!
せっかく悪役令嬢回避ルート取ってんのに、どうして、八男になったボクと婚約ルートに乗っちゃうわけ?やめてぇ!
「フレッドは王子なんだから、女の胸なんて触り放題、もみ放題で構わないんだよっ、妾愛人当たり前が王侯貴族の男ってもんだろ?」
……二人に白い眼を向けられた。
「リザーク、お前女みたいな顔して怖いこと言うなよ。そんなことしたら……」
マージが震えだした。
「おふくろにおやじはどんな目にあわされるか……。まぁ、二人はラブラブだから浮気なんてないけどな」
うん。うちの両親もラブラブですよ。
「そうですね。世継ぎが生まれなければ致し方ないかもしれませんが……生涯ただ一人を愛するべきですね」
第二王子フレッド君、どの口でそんなこと言うのか。
私と言う婚約者がありながら、攻略対象であるヒロインにぞっこん惚れて、一時は二股状態……。
「そうだろ?そうだろ?やっぱり、一人を愛し続けるのが理想だよな、うん、だから、いつか出会う愛する人のために、いちいち事故で責任とる必要なんてないんだよっ。もう忘れちゃえ」
きっぱり、昨日のことは忘れるのです。
呪いが解けた私の姿は記憶のかなたに葬りさるのです。
フレッドの顔が赤くなる。
「わ、忘れられるわけないだろうっ」
フレッド、だから、思い出すなって!
「まぁなぁ。初めて触った胸だもんなぁ」
マージがうんうんと頷いてる。
「初めて触ったのは、みんな母親だろ!」
二人が白い目で私を見た。
なんだよ、正論だろ?
「お前、幼稚だな」
はぁ?マージ、お前に言われる筋合いはないっ。っていうか、こう見えても、前世34歳たす現世11歳で、精神年齢45歳やぞ!あ、まって、前世では精神年齢永遠の10歳とか言われてたわ。……もしや、こっちでも精神年齢永遠の10歳で成長してないとか?
あー、あー、オタクの精神成長しねぇ!
「忘れられない……どうしても、彼女のあの長くて美しい金の髪も、澄み切った深い紺色の瞳も……」
ひぃーっ、しっかり顔覚えられてるっ!
よくあんな短い時間で目の色まで覚えてたなっ!
やばい、まじ、さっさと忘れてくれ。
「フレッド、お前、まさか……」
いつもありがとう。
フレッド、お前……(´・ω・`)わかりやすい男だな。




