男と女……呪いを受けた方が強いって、呪いっていうより祝福じゃね?
「お兄様も去年は代表だったのですか?」
兄7に尋ねる。
「偉大な兄がいるというだけで、同じように期待されちゃうんだよ……リザ、大丈夫だよ、無理しなくても」
そうかぁ。兄が優秀だからお前も同じとは言わないけど、それなりにできるだろうと期待されちゃったのか。
「そうそう、僕も1年で選手になったけど、1回戦負けだったもの」
兄7も兄6と一緒に慰めの言葉をくれる。うん、兄の中で剣が得意なのは、兄1と兄4だもんね。
「あははは。1回戦の相手が俺だったからな」
と、その兄4が笑った。……手には木刀を持っています。
「さぁ、リザ、稽古をつけてやるぞ!トーナメント戦まで、毎日毎日付き合ってやる!」
まって、私が練習に付き合ってと頼んだのは、兄1だったはずなんだけど、なぜ、当たり前のように兄4は稽古しようとしてんの?
「さぁ、お兄様、お願いいたしますわ!」
公爵家の広大な庭には、学校の第一訓練場レベルの訓練場があります。何も子供たちだけのために作られたものじゃなくて、私兵の訓練にも使われるんです。私兵。ええ、護衛を雇うのは貴族としては当たり前なんですが、護衛なのか私兵なのか……。護衛というには、なぜか父や兄たちと訓練ばっかりしてるんだよなぁ……。まぁ、有事がないかぎりそんなもん?決して家庭内剣術大会開催ぱふぱふぱふぅーっていう楽しみのためだとは思いたくない。
あ、私兵とは別に、領地でも兵は雇ってますよ。そっちは公兵……あれ?そんな言葉あった?まぁ、とにかく、そっちはそっちでちゃんと別に宿舎やら訓練場やらありますよ。さすがに屋敷の庭の訓練場は手狭だし、身元の怪しい人間を敷地内に武器を持たせて入れるなんてできないですよ……。
誰もいない室内訓練場に足を踏み入れる。
って、いるぅ!
なぜか、すでに煌々と灯りがともされ、壁際に侍女たちが数人。簡易テーブルには水分補給ができるように飲み物が用意されている。軽食まである。
そしてその横にはテーブルと椅子に座る父と母。
「がんばって、リザー!」
母……、はしゃぎすぎ。
父は、お持ち帰りの仕事書類をテーブルの上に運んでまで、こんなとこ来なくていいからっ。
「ははは、懐かしいな。そういえば、初めての剣術大会の前にはこんな感じだったな」
兄1が幸せそうに笑う。
うわー、眼福笑顔。
そうか、父も母も、通常営業か。なら仕方ない。
「じゃぁ、まずいつもの軽い打ち合わせからしようか」
と、向かい合って木刀を構える。
決まった型で、20回ほど準備運動代わりに打ち合うのがいつものスタイル。次第に木刀のスピードを上げていき目を慣らす。
って、
「ちょ、ちょっと、待って、お兄様……」
10回ほど木刀をカツンカツンと打ったところで、木刀を落とす。
「どうした、リザ?」
ダメだ……。
両手をアレフお兄様に向けて見せる。
いつもなら全然平気なのに……。
いつもの、男の時に稽古してるときは全然平気なのに……。
手が小刻みに震えている。
たった、10回。本気じゃない兄の剣を受けただけで、手がしびれて、木刀を取り落としてしまうなんて……。




