弱さを自覚する
他の生徒たちは、逃げずに受けようと頑張っていたのに。私は、つい、痛いだろうなぁって思うと、体が逃げちゃう。
うう、次は逃げずに受けよう。
もう一度、木刀を構え直し、マスク男に先を向ける。
「ふんっ。女みたいな顔して、逃げることだけは器用なようだな」
また、女みたいっていった。くそーっ。男らしく、受けてやるってば。今度は逃げないっ!
マスク男が振り下ろした木刀の真正面で木刀が十字に重なるように剣を受ける。
くはっ。
手に激しい衝撃が走る。
一回剣を受けただけなのに、手に力が入らない……。
「みんなぁー、遅れてごめんなさいっ!」
ソフィア先生の声に、はっとすると、その瞬間にマスク男は姿を消した。
「剣術大会、少しは楽しめそうだな」
という声を残して。
はぁ?どういう意味だろう。このいじめのようなしごき……F組を剣術大会でもいたぶるつもりだろうか?
「おい、すごかったな、リザーク!よくあの剣を何度もよけられたな!」
「よけられたというより、ついよけちゃったんだけどね……受ける勇気がなくて……」
マージの言葉に、正直に答える。
「いや、あれだけよけられるだけでも素晴らしいと思いますよ」
フレッドがにこやかに笑う。
っていうか、他の生徒たちは次は自分がしごかれる番かとおびえた顔してるのに、二人とも涼しい顔してるね。うん、きっと剣の腕に自信があるんだろうね。
騎士志望だっけ、マージ。フレッドはゲーム内では高等部は騎士科じゃなかったけど、騎士科の生徒もかなわないような実力の持ち主的な感じで描かれてたよねぇ。
「ありがとう。でも、逃げてばっかじゃ倒せないし、全然だめだよ」
今回は受ける稽古だったけど、模擬戦だったら、ただ逃げてるだけじゃ負ける。
かといって……。
まだしびれている手に視線を落とす。
まともに剣を受けても、次の手につながりそうにない。
こ、これはあかん。
いつもは、兄が剣のけいこの相手をしてくれるけど、私を溺愛する兄だもの。本気なんて出すわけない。
……だけど、剣術大会は相手は本気で来るよね?
運よく、捨て駒な1年生が対戦相手になればなんとかなるかもしれないけど、果たして、高学年に勝つことはできるの?
「これは、ますます、トーナメント戦が楽しみですね。リザーク、応援しますよ!」
ひゃいっ。
フレッドが、フレッドが、勝てと目で命じている。うごごご。
こ、これで、もし1回戦負けしたら……やばいです。黒い煙がもうもうと立ち上り、せっかく悪役令嬢をやめたと言うのに待っているのは、待っているのは……発狂死……かしら……。
練習せねば。あと1週間……。
「どうしたの?何があったの?」
ソフィア先生が倒れている生徒たちに声をかける。
そうだった、謎のマスク男が現れたんだ。そのことをソフィア先生に生徒の一人が告げると、額を抑えた。
「骨が折れないように絶妙な力加減がされていると思うけれど、痛めたところはすぐに冷やしたほうがいいわ……」
どうやら、ソフィア先生の知っている人のようだ。そして、以前もこのようなことがあったんだろうか。
生徒の半分が保健室へと足を運ぶことになった。
残った生徒の気持ちが折れるかと思うと、そうでもなかった。
「リザーク、すごかったよ。僕ら補給部門も絶対に頑張るからっ!」
「私たち素振り班も、負けない」
士気は上がっていた。なんで?やっぱりマスク男の嫌がらせに負けるもんかって奮起したのかな?
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さて、本日の裏情報。
実はこの謎のマスク男シーン丸っとありませんでした。途中で「ん?なんか試練いるよな?」と思って入れました。いや、他の試練があったんですが、それ、後回しにしてすかっとなくなったので。
この作品、私には珍しく、冒頭部分何度も手を入れています……の割に、まぁ、うん、あははは
いいの。楽しく書いてるから。




