稽古?いや、違う!
「最下位であるF組に、我の情けだ。稽古をつけてやろう」
びしっと木刀を生徒に向けて構える。
はい?
「まさか、稽古と偽ってスパイしにきたんじゃ……」
マーズの言葉に、はっと、マスク男が嘲笑した。
「お前たちにスパイなど必要ないだろう?どれほど、他のクラスと差がついていると思っている。あまりにも憐れで、我がこうして出て来てやったのだ」
本当だろうか?
他の生徒も私と同じように、謎のマスク男をいぶかしんでいる。
「何をぼやぼやしている。お前たちに無駄にする時間が残されていると思っているのか?一番必死にならなきゃならないんじゃないのか?」
言っていることは、まっとうだ。
サーシャが木刀を構えた。
「そうだ、言い忘れていたが、今日の稽古は、我を倒そうとはするな。お前たちの実力では我を倒すことなど100万年かかっても無理だ。だから、まずは、我の剣を受けることだけを考えろ」
え?
「まずは女子が相手か。男どもは〇んた〇ついてんのか!」
ついてるよっ!
「まぁいい。いい面構えだが――」
マスク男が木刀を振り上げ……いや、振り上げたように見えただけで、それはフェイクで、振り上げる途中に横に払った。
がすっ。
鈍い音がして、サーシャがくの字になって地面に倒れた。
横っ腹に当たったようだ。
ああ、あれは痛い。もろ入ってる。
「次はお前だ。ちゃんと受けろよ」
木刀で指名された男子が身構えた、と思ったら、あっという間に後ろに吹き飛んだ。
マスク男と生徒の距離は4mはあっただろうに。一瞬で男は距離を詰めたのだ。
速い。
「次は君にしよう」
視線を向けられた女子は震える手で木刀を構える。ああ、今まで一度として剣の練習などしたことのないのは明らかな構えだ。
マスク男はただまっすぐと、女子の肩に剣を振り下ろした。
「あっ」
木刀を取り落とし、肩を抑えてうずくまる女子。
……なんだよ、これが稽古か?
剣を持ったことのない人間には、まず剣の持ち方や構え方を教えるもんじゃないのか?
こんなの……稽古っていうよりも、しごきじゃないか。いいや、しごきであればどこかに指導する意図がある。
どこかを抑えて次々にうずくまり倒れる生徒たち。
これじゃぁ弱いものいじめだ。
F組いじめなのか?
教師までが?
「次は、お前にしようか。女みたいな顔をしているが、その面構えは男か?」
女みたいな顔は余計だっ!
男のような面構えってなんだよ。今、私は怒った顔してるだけだよっ。ん?怒ると男らしい顔になるってこと?
ほうほう、これはいいことを知った。
「余計なことを考えてる余裕なんてあるかな?」
ぶんっと、風を切る音がして木刀が右下からカーブを描くように手元に向かってきた。
うわっ。
あ、受ける練習だっけ。よけちゃった。
「よけた、か。だが、これならどうだ?」
今度は左上から。よけるとその先に今度は木刀が襲ってくる。
うわ、うわ。
しまった。受けないといけないのに、またもやよけちゃった。
だって、なんかな。
兄1くらい動きが速い上に、兄4くらい重そうな剣なんだもんなぁ。
ガツンと受けると、衝撃で次の動きが鈍りそうだもんなぁ。そうすると、
「またよけたか。生意気な。これならどうだ!」
ぶん、ぶん、ぶん、ぶん。
今度は4回。よけます、さけます、にげます、距離を取ります。
あちゃー。受けるどころか、どんどん距離を取ってしまう。
ダメだ。これじゃぁ。
いつもありがとう。
なんか、裏情報コーナーと化している。
えーっと、木刀と書き始めたのはいいんですが、模擬剣にすればよかったとずーっと思いながら書き進めていたりする……なぜ、木刀にしてしまったのか……




