くくくいっく
「とりあえず踊って見せる。このリズムで手拍子頼む」
マイナーゆえに、音楽班も知らないだろうとリズムだけ指示。サーシャに手を出せば、当たり前のようにサーシャが手を伸ばす。
「サーシャは踊れるの?」
「当然ですわ」
よし。
と、踊り始める。
ブルースと似ているけれど、とにかく早い。そして、飛び跳ねるようなステップが独特。
若いイメージのある踊りだ。
「ああ、なんだ、これか!」
「全部のステップは無理だけど、ちょっと踊れるわよ」
と、手拍子に合わせて何人かの生徒が動き出した。
は?ダンス未経験じゃないの?
「なんで、踊れるんだ?」
フレッドが声を上げる。そりゃ、驚くよ。
「ああ、これ、祭りで踊る踊りだもん。子供のころからみんな踊ってるから踊れるよ?」
「そうなの。えーっと、こういう動きとこういう動きと、10個くらい動きがあるかな?」
なんと!
庶民の踊りとして根付いているとか……。
そうか。優雅に踊るよりも、庶民はリズムにのって楽しく体を動かすダンスの方がいいのか。そりゃそうか。
だけどこれは嬉しい誤算じゃない?
「踊れる人は、そのまま踊ってみせて」
と、クイックを踊ってもらう。
いける。リズムにはしっかり乗れている。ステップもあといくつか増やせばいけそうだ。
「クイックが踊れない人はクイックを中心に練習して、クイックは踊れる人はワルツとブルースを練習。本番近くで、よりうまく踊れた人間と代表を入れ替えまよう」
と提案すると、皆が頷いた。
選手を外されるなんて!という者はいない。
「僕とサーシャも……できるだけ本来の性別パートが踊れるように練習しよう」
「そうですわね」
てなわけで、朝練に放課後練習でどこまで力をつけられるか……。
「ほら、こうですわ。トントントントントン」
ルリアちゃんがヨールド君に、クイックを教えている。あそこは、本番までにずいぶん上達しそうだ。ふふふ。
1時間目は数学の授業だ。
モンブフト先生が教室に入ってきた。
「先生、お願いがありますっ!クイックの練習をさせてくださいっ!」
「何?九九の練習?」
「九九じゃなくて、クイック!」
「ん?九九じゃなくて、クイックっていうのか?にいちがに、ににんがし」
ちがーう、違う、違う、ちがーう!
「そうじゃなくて、もういいですっ!」
勝手に踊ることにします。音楽班は、庶民出身で祭り音楽も完全マスターしてたのですよ。フルートに歌に、それからなんか打楽器。
音楽が始まると、ステップを覚えている人間が踊り始める。
でもって、代表選手だけどステップも分からない人には、庶民出身者がゆっくりひとつずつステップを教え始めた。
「クロス スイベル! そらシックス クイック ラン! 次、次はティブシー トゥ レフト 安堵 バックロック 、ホバー コルテ!ああ、違う、ただピョンピョン飛び跳ねるとみっともない!跳ねるようには、ジャンプするのとは違う!」
うほ?