組合員か?
あ、あいつも笑いをこらえている。エイッと一足マージの真似して蹴りを入れるふりをする。
「ぶっ」
やめろよ、笑わせるのっ!
っていうか、王子、お前、案外ユーモアあるじゃん?なんで発狂死キャラなんて背負ってるんだろうね?
「あなた、何かおかしなことでも?」
思わず噴き出した私を先生が見た。
うっ、にらまれたじゃないかっ!くそっ、フレッドのあれは、ユーモアじゃなくて、私を陥れる策略だったのか!暗黒王子めっ!うぐぐぐっ。
思わず歯ぎしりする。
「いえ、あの、息を詰めすぎていたので、ぷはっと思わず……」
「あら、そうなの。ごめんなさい。そうね、よく見ると、ずいぶん力が入っている子も多いわねぇ。ほーら、リラックスリラックスよぉ。間違えてもいいのよ。だって、個人練習なんですもの。相手の足を踏む心配はしなくていいでしょう?それとも、足を踏む練習もした方がいいかしら?嫌いな相手とダンスするときには必要よぉ」
先生の言葉に、どっと笑いが起きる。
足を踏む練習……したいな……。おっと。
先生の言葉で、一気にクラスメイトの肩の力が抜けたようだ。
うん、やっぱりいい先生だ。
「あなたは、ちょっと動きが女性的ねぇ」
ぎくりっ。
せ、先生……目がよろしいようで……。
「嫌いじゃないわよぉん。何か悩むことがあったらいらっしゃい」
はひ。
「はい、ちょっとリズムに乗れていないかしら。動きとリズムと意識するとむつかしいかしらねぇ?あなたは一度足をとめましょうか。そして、私と一緒に手拍子をお願いするわぁん」
と、ちょっとリズムがずれていた生徒は、体にまず、いちっ、に、さんっ、し、ご、ろくぅを染み込ませるようだ。1と3と6にアクセントがある独特のリズム。これが、案外むつかしいんだよねぇ……。何がむつかしいかというと……。
「では、音楽もつけてみましょうか。ピアノをお願いしますわぁん。ゆっくりめでお願いねぇ」
と、ピアノ演奏が入った。
はい、途端に崩れだす生徒たち。
だよね。分かる。
うん。
なんか、このダンスって音楽のリズムは、1と4にアクセントがあるんだよ。いちっ、に、さん、しっ、ご、ろく……と。
なのに、ダンスの方は、1と3と6にアクセント……。アクセントがずれてるんだよ。だから、音楽を聴きすぎるとステップがおかしくなる。
「はぁい、音楽は聞こえてるでしょうが、頭の中でリズムを取るのよ、ほら、さっきの君、ちゃんとみんながつられないように、もっとがんばるのよぉん」
手拍子させられてる生徒は、ひたすらぶつぶつとつぶやいているためか、音楽につられずにリズムを刻む。
「はい、はい、はい、いいわよ、初日にしては最高よ!さぁ、少し休憩しましょう。えーっと、あなたとあなたと、君と、君と、それから」
生徒の何人かを指名する。