第2夜
説明回、説明文多いです。
青年が取り巻きを連れてモミジを囲ったシーンにセリフを追加しました。(2/28)
ここは夢世界メア、現実ではメアという名前は思い出せないから夢世界とだけ呼ばれている。
そして私、モミジはというと⋯⋯町外れの広場で3人の男達と対峙する少女を見ていた。
どうしてこんな事になったんだっけ⋯⋯
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「それじゃあ、またねー!!」
「おう、また明日。」
照と別れて家に帰った俺は明日の仕度を済ませて、照と明日の小テスト頑張ろうみたいな、やりとりををSNSでいくつか交わして眠りに就いた。
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「泣け。紅葉⋯⋯お前の哀しみは我が受け止める。今は存分に泣くがいい⋯⋯」
⋯⋯夢か⋯⋯マンダに気絶させられて、目を覚ますと紅葉は抱き締められていた。背中の刃のように鋭利な翼で血を流しながらも彼は紅葉を抱き締めてくれた。
「うう⋯⋯ひっく⋯⋯うぅ⋯⋯」
紅葉はその胸に抱かれて堰を切ったように泣き出した。
そして、そのまま眠ってしまった紅葉が次に目覚めた時には全てが終わってしまっていた。
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「ふわああああ⋯⋯。」
あの時の夢、やっぱり寝てる間に涙が出ていたみたいだ。顔を洗わないと。
「おはようございます!モミジさん!」
「うん、おはよう。ボンちゃん、洗面所借りるね。」
「はい、洗面所の場所は⋯常連さんですし大丈夫ですよね。いい1日を!」
洗面所の鏡に映るのは、肩まで伸びた赤みの混じった茶髪に大きな瞳、整っているがまだ幼さの残る顔立ちの少女。私だ。
そして、私に挨拶してくれたのはボンちゃん。私が泊まっている宿の女将さんで、ボンボンと名乗っている。モデルみたいにスタイルが良くて美人だからボンちゃん目当てのお客さんも多い。この宿の一階はバーになっていてお酒も飲める。ボンボンという名前はウイスキーボンボンからとったらしい。私はボンボンという響きがあんまり女の子らしくないからボンちゃんと呼んでいる。
ここは夢世界メアの街で名前は⋯⋯忘れた。大きな街は一つしかないから、「街」とだけみんな呼んでいるし名前を覚えている人の方が少ない。その街の中心部から少し外れたところにボンちゃんの宿、ウイスキーボンボンはある。窓から外を見ると星が綺麗だ。気分転換に散歩でもしよう。
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この世界、メアにいる人間は全て現実から堕ちてきた人間だ。新しい住人が産まれる時は地面から繭が生えてきてその中から人か魔獣として産まれてくる。
人の場合は現実と同じ姿でその人物の心を映したといわれる装備を身につけて産まれる。その装備には首から上に着けるものが必ず含まれており、その装備は壊れることがなく、装備した人を別人だと誤認させる効果がある。
逆に言えば、その装備「ペルソナ」を外した状態で姿を見られると現実での自分の姿を知られてしまう事になる。ペルソナを外す事は相手への絶対の信頼を表す、とされている。
他の装備も見た目が普通の服でもしっかりと防御力がある上に持ち主が強くなると共に力を増すという特殊な能力が備わっている。さらに、壊れたとしても数日あれば自動で修復されるため事情がある場合やファッション目的以外では他の装備を身につけることは少ない。
そして、魔獣は亜人の進化前と言える存在で、産まれたばかりの魔獣は理性を持たず動物としての本能のままに動く。当然、人が襲われることもあり、理性を獲得した亜人種に対しても差別する人間も少なくない。その姿はリザードマンやゴブリンのような人型もいれば四足歩行の動物や爬虫類のようなものから鳥や魚、虫のような姿の者までその種類は多岐に渡る。そして、魔獣が理性を得て自分の意思で動くことができるようになるには力を付ける、いわゆるレベルアップをするしかなく、そうなる前に他の魔獣にやられるか討伐されてしまうことが多い。
稀に初めから理性を持って亜人として産まれる者もいるが、亜人に進化するまでの険しさから人口の割合は人>>>>>亜人といった具合に圧倒的に人が多い。さらに少数しかいない亜人も産まれてすぐ人に捕まって養殖されて亜人へと進化した者も多く、なかには奴隷のような扱いを受けている者もいる。そのため太古の戦争により伝説となっている血の天使や焔の竜王のような存在を除けば基本的に亜人は人よりも弱い存在だという認識が一般的である。
亜人がその種族ごとに特殊な能力を持っているのに対して、人は大きく分けると2種類の力を持っている。それぞれ武器を自由自在に操る戦士の能力と夢世界の空気中に漂っている粒子(マナと呼ばれている)を操る魔法使いの能力の2つだ。
どちらの能力を持つかは産まれた時にすでに決まっており戦士ならその者と共に成長していく武器を持っていて、魔法使いの場合は武器を持っていないため基本的にはすぐに判別することができる。
そして、人間の成長の方法だがあらゆる経験が経験値となって階位の昇格、つまりはレベルアップに繋がる。とりわけ現実では体験できないような事ほど経験値の上昇が大きい、ということが暇人達の研究によりわかっており、現実での法が適用されないのをいいことにハメを外し過ぎる人間もいる。
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「〜〜〜♪〜〜♪」
「やあ、お嬢ちゃん」
突然、路地裏からでてきた粗暴な身なりの青年に声をかけられた。鼻歌まじりに散歩していたら、街の外れに近寄り過ぎたみたいだ。
「私に何か用?」
「ああ、ちょっとお手伝いを頼みたくってな、こっちに来てくれないか?」
「うーん⋯⋯いいよ、あなたについて行けばいい?」
「ああ、ありがとう。」
私は怪しいとわかってはいたけど、その青年について行ってみることにした。青年の口元がニヤリと歪んだのも当然気づいている。
そのまま私たちは街を外れの方へ向かっていくとっくにスラム街に入っていて、ガラの悪い人や首輪をつけた亜人の姿が増えてきた。
「ねえ、まだつかないの?」
「もうすぐだよ。そこの曲がり角を曲がってまっすぐ行ったところに広場があるから先にそこに行っててくれないかな?」
「あなたは?」
「俺は少し準備があるから先に行っててくれ。」
「わかったわ、先に行ってるね。」
そして、私は一人で広場に向かった。
広場の中心には箱が置いてあったので、とりあえずその箱の前で青年が来るのを待つことにした。
それから、しばらく経って退屈になった私が箱を椅子がわりに座ってさらにしばらく経ったころ
「待たせたかな?」
武器を構えた青年とその仲間であろう犬耳を生やした亜人の男2人が広場の出口を塞ぐように立っていた。
「それじゃあ、お嬢ちゃんには俺たちのお願いを聞いてもらおうかな?」
そう言って下品な笑みを浮かべて3人はにじり寄ってくる。
そして青年が持っている剣の間合いに入ったところで立ち止まり
「お嬢ちゃんにはさ、俺たちを気持ちよくして貰おうと思うんだ。見たところ武器も持ってないし魔法使いだろ?この距離じゃ魔法よりも俺の剣の方が早いしお嬢ちゃんも痛い目には会いたくないだろう?知らない人にはついていかない、弱肉強食のこの世界じゃ常識だぜ?1つ賢くなれてよかったな。」
青年は私を魔法使いだと思っているらしく、余裕を感じさせる態度で身体を差し出せと要求してくる。たしかに私の服装はシャツに膝丈のスカートの上からローブ羽織っているといういかにも魔法使いといった服装だ。
「ちっ、だんまりかよ⋯⋯ああ、もしかして、恐くて喋れないんでちゅかー?」
「言ってやるなよ、男3人に囲まれてんだ。怖くておしっこちびっちまいそうになってるのを我慢してるんだから。」
犬人の男の人を小馬鹿にした発言に男3人に笑いが広がる。
そろそろいいかな、首にかけた翼の形をしたペンダントを握りしめる。
「解放⋯⋯『そこまでよ!』」
私と男たちは一斉に声のした方に振り向いた。
そこにいたのは淡い青色の着物を着た少女、手には小太刀。構えがある程度様になっているように見えるし、多分戦士なんだろうけど⋯⋯そんなことを考えていると、
「小さい子相手に3人がかりなんて卑怯です。私が相手になってあげます。」
なんていいながら、こっそり包囲を抜け出していた私と男たちの間に立ち塞がった。
「群れないと喧嘩もできないような人達なんて私一人で十分です。覚悟してください。」
啖呵を切って犬人の男の片方に向かっていく少女、すると
「ごめんなさい!俺たち本当は弱いんです!謝るから勘弁してください!!」
「そうですか?これで反省して真面目に生きてくださいね。」
そう言って構えを解く少女。
「かかったな。俺は魔法使いなんだよ俺の火球を喰らえ。」
犬人たちの後ろに下がっていた青年が魔法を放とうとする。少女と青年の距離なら魔法を放つ方が早いだろう。
「そんな⋯⋯」
さっきまでの威勢の良さは何処へやら、狼狽える少女
「いや、さっきの演技バレバレだし。」
そう言って私は手に持った刃を青年の背後から胸に突きたてた。
「な⋯⋯んで⋯⋯?」
「強い戦士は武器を小型化できる技能を持っている、夢世界で生き残りたいなら常識だよ?」
私は青年にだけ聞こえる声で囁いた。
青年が倒れたのを見て残りの2人は逃げ出した。首輪をしてたから多分、青年に養殖してされて奴隷のようなことをしていたのだろう
「普通の武器を持ってる魔法使いだっているんだから油断しちゃダメだよ?お姉さん。」
「ありがとうございます。助けに入ったつもりが助けられてしまいました。」
「ううん、いいよー。私も素早いだけであんまり攻撃は得意じゃないから3人で囲まれてちょっと困ってたし⋯⋯あ、そうだ私はモミジ!お姉さんは?」
「私はセイです。この青い着物からとってセイです。モミジちゃん、可愛い、名前ですね。とても似合っています。」
「でしょう?私の親友がつけてくれたんだ。髪と瞳の色が紅葉みたいで綺麗だからって。(本当はクレハだけど⋯⋯)」
最後の一言だけは誰にも聞こえないように小声で付け加えた。
「そうですね。その方はとてもいい方なのでしょうね。」
「うん、いい人だったよ。私の最高の親友。」
「あの⋯⋯モミジちゃん。」
「どうしたの?」
「実は私、モミジちゃん達の後をついて来ただけでこの辺りは初めてで⋯⋯ですので、スラムを出るまで道案内してもらえませんか?」
「セイちゃん⋯⋯実は、私も⋯⋯」
ここで問題が発生した。青年が私が逃げるのを防ぐためか、わざと色々な道を通ってここに来たせいで私も帰り道を知らなかったのだった。