第?夜
書いてた作品がつまずいてしまっているのですが、とにかくなにか書きたくなったので新しい作品をはじめました。
メンタル弱いので感想等はあまり読みません。ごめんなさい。
焼け落ちた森を少女が走っている。ワンピースにサンダルという場にそぐわない服装のせいで、いくつもの傷を負いながらも足を止めることなく駆け抜けていく。
やがて少女は森が開けた場所に出て立ち止まるだろう。そこは大樹の広場、焼かれる前は動物達が集まった場所、少女にとって大切な場所。
これは夢だ。過去を思い出して見る夢。待っているのが同じ結末なら目を覚ましてしまえばいい。あるいは森になんていかなければ、目が覚めるまで他の人間たちに混ざって街で過ごしていればいい
それでも、私は目を覚まさなかった。そして森を走っている。この先に待っているのは悲劇だ。あるのは大切な人の死と少女の慟哭。
『はぁ、はぁ⋯⋯』
息を切らして辿り着いた大切な場所。
『×××××っ』
もう名前も思い出せなくなったあの人の名前を呼ぶ。
『っ⋯っ⋯⋯』
あの人はもう声を出すこともできなくなったのか、その声は掠れた音にしかならない。それでも少女には何を伝えたかったのかわかってしまう。
『無事でよかった』
それは最期まで、自分の事よりも他人のことばかり考えていたあの人の最期の言葉。
少女は炭で黒く汚れるのにもかまわず焼けた大樹にすがりついて泣き続けた。
少女の背中にはいつの間にか一対の白い翼が生えていた。その翼は少女を包み込んでいく。その姿はまるで白い蕾のようだった。
白い翼を紅く染めた少女が空を駆けていく。少女が羽ばたくたびに翼から羽根の形をした光が舞い踊り地上の人間達を血に染めていく。
「----ッ!!」
少女は声にならない叫びをあげ、虚ろな瞳から血の涙を流しながら殺戮を続ける。人間達も魔法や弓などで抵抗するが少女は軽々と避けていく。
「我が出る、お前達では時間稼ぎにもならん。無駄死にをするな!!」
よく通る声が響き渡った。それは、聞いた者に有無を言わさない力強さを秘めており声を受けた人間達は声に従い身を守ることに集中し戦場を離れていった。少女も逃げる者には手を出さず声の主である蜥蜴のような姿の亜人種、リザードマンを睨みつける。
「どういうつもりだ?人間の国を襲うなどとはお前らしくもない。」
彼の名はマンダ、火の国の王であり世界最強の一角を担っている存在である。
「⋯⋯」
少女は声とともに放たれた威圧を気に止めることなく、返事もせずただ睨み返した。
「何があったかは知らぬが無辜の民を手にかけるのならば、それが他国の民であろうと我は王として無視することはできない⋯⋯覚悟しろ。」
マンダはそう言いながら弾丸のように跳躍し少女との距離を詰めていく。少女も羽根を飛ばし撃ち落そうとするがマンダの振るう鉤爪によって全て払われてしまう。
「⋯⋯!」
鉤爪が少女に届く直前、少女は強く羽ばたき高度を上げて回避した。同時に翼から舞い落ちた羽根によってマンダは身体中を切り裂かれその勢いのまま飛んでいく。
少女がその姿を見送り、背を向けて飛び去ろうとしたとき
「⋯⋯!?」
少女の隣を蒼い炎が追い抜いて行った。
「何処に行く気ダ。オマエを放っては置かぬと言ったダロウ?」
少女の前に立ち塞がったのは身体中の傷口から炎を噴き出させ、背中に炎の翼を纏ったマンダだった。マンダは驚きで反応が遅れた少女を羽交い締めにするとそのまま自分諸共地上に叩きつけた。
⋯⋯あの人を失った悲しみと奪われた怒りで目の前が真っ白になった私は気がつくとマンダに抱き締められていた。周囲を見回すと私達は巨大なクレーターの真ん中にいるみたいで2人ともボロボロだった。どうやらそれは、私が引き起こしてしまったもののようだ。そして何も言わずただ抱き締めてくれているマンダの身体の暖かさを感じて私は泣き疲れたのと戦闘のダメージで泣きながら気を失った。