9/58
3.異変1
シャランシャランと音がする。
ひらりひらりと赤い紐が舞う。
あたりは暗闇。どこが上で、どこが下かもわからない。そんな真っ暗闇を切り裂くのは、黄金の閃光だ。
金色に遅れて赤が舞う。
それに惹かれて、ひたひたと裸足で無機質な黒を歩いていく。
シャランシャランと、澄んだ音は速くなり、無限に木霊し世界と脳内に響き続ける。それに急かされて足を速める。
ひたひた、ひたひた、ぱたぱた―
最後は小走りになり、輝く黄金を目指す。それは人影。誰かが黄金を振っている。輝くそれは、姿かたちがよく分からない。
目を、細める。その人は、黄金を振っているのか、舞っているのかよく分からなかった。ただじっと、力にあふれるその姿を見つめることしかできない。面差しは、見えない。
「あなたは―」
そう問おうとして、その日の夢は終わった。