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種明かし2
ひたひたと冷たい廊下を歩く。るんるんと細い体が弾む。
「ねえ、ご主人様」
スキップしながら、漆は愛してやまない己の主に声をかける。
「なんだい」
彼は笑顔で答える。
「あの人間たち、生き残りましたね」
うーんとご主人は考える。
「あの二人は、咬ませ犬ですから。練習ですよ」
「でも、二人死んじゃいましたよ?」
「そうだね」
ぴたりと止めた足元には、一人の男の死体がある。
「ご主人様、どうしますか?警察を呼ぶんですか?」
漆の問いに、そうだねーとご主人はまたも考え込む。
「警察沙汰はめんどうだ。―漆、お食べ」
その言葉に、少女は飛んで喜んだ。
「いいんですか!?」
「うん。ずっと空腹を我慢してたご褒美に」
よしよしと小さな頭を撫でる。
「彼女と比べれば味は落ちると思うけど、十分力のある人間だ」
「はいっ!」
いただきます!と少女は冷たくなった男の体に飛びついた。
ぐしゃぐしゃと、夜の学校にふさわしく、不気味な音が響いていた。
「だから言ったでしょう?『見ておいで』って」
ああ
「言ったのは、弟にでしたね」
その言葉は、漆の耳には届かなかった。




