襲撃4
「はい、それでは現状をまとめます」
作戦会議において紙に物事を書きだすのは樹の役割になっていた。
『
1千穂の銀の器としての目覚めの日が迫ってきている。(千穂の誕生日、6/13)
→目覚めたら今までより近づいてくる敵は増えてくる
→銀の器を守る黄金の剣の使い手が不在
2この前たくさん妖怪が校舎内に侵入し攻撃を仕掛けてきたが、あれだけの妖怪を手引きしたのは誰か
3二階堂は敵か味方か(場合によっては2の答え)
※剣の使い手には不足ないほどの霊力を持ち合わせている模様
』
紙にはすでにこれだけのものが書きだされていた。その下では
『
4友達に外に出かけようと誘われたがどう断ろう
5二階堂になんか詮索されているようだけどどう逃げ切ろう
』
が線で消されていた。
「今のところこうね」
OK?と全員の顔を見る。3人とも神妙な顔で頷いた。
「で、俺と兄ちゃんが考えてるのは、二階堂の父親は、二階堂を餌に千穂を捕まえようとしてるんじゃないか説」
「詳細」
壱華が紙から目を上げずにそれだけで続きを促す。
「二階堂は自分が霊力を持っているって知らない、知ってても強いって知らない。千穂を助けてやれって言われたのは本当、本人もそのつもり。」
「うん」
接している感覚としては正しいと千穂は頷いた。
「守ってくれるって言った」
からかいも入っていたけれど。
「信じていいと思う」
それは千穂の勘。今4人がある意味で一番あてにできるものだった。
「で、二階堂の父親は千穂が銀の器だと知っている。だから千穂が困ることも知っている。でも、なんで息子に銀の器のことも、剣のことも、霊力の使い方も教えなかったんだろう」
教えないと、ちゃんとした戦力にはならないでしょう?と言われて、千穂はまた頷いた。
「兄ちゃんが言うにはなんだけど、もしかして、二階堂の父親って、俺たちが黄金の使い手に困ってるって知ってるんじゃないかって」
「え?」
千穂は不安げに声を上げた。それは、困る。嫌だ、怖い。千穂の不安が大きくなる前にと樹は少し口調を速める。
「俺たちは強い人間を求めてる。だから、あえて力の使い方を教えないことによって二階堂は強いって俺たちに認識させてるんじゃないかな」
樹は一度口を止め、啓太と壱華に様子をうかがう。啓太は話に集中していないようだったし、壱華はじっと紙を睨みつけている。
「俺たちは二階堂に仲間になってほしい。でも、二階堂は何も知らない。俺たちは二階堂を使い手にするか判断するために接触を図る。無知なことに対して、たぶん油断も生まれる」
「そこを突いて、何がしたいの?」
彼が自分を、私たちが彼を仲間だと認識したとしても、父親に会ってくれと言われれば私たちは拒むわ。壱華はまっすぐな瞳でそう宣言した。
「ピアス」
千穂は壱華を見た。壱華もそれだけで千穂が何を言いたいかを悟る。千穂は樹に視線を向けて説明する。
「二階堂、お父さんからもらったっていうピアスしてる。赤い石の」
「それが、二階堂の意思とは別に何か発動するかもしれないってこと?」
樹はうーむと考える。
「剣てさ、使い手選ぶんだろ?」
やっと啓太が話に加わってきた。
「そう教えられてるね」
樹が答える。
「選ばれてない奴が剣を使うとどうなるんだ?」
アーサー王みたいに、選ばれた人間しか抜けないとかあるのか?それとも、取ったところで力の重圧に耐えきれなくて死ぬとか?
「分からないよ」
「でも俺たちはさ、自分は剣を使えないってどこかで分かってる」
本能かどこかが、はっきりと剣を持つことを拒絶している。
「確かに、貴輝は強かったよ?それに比べれば俺たちは弱い。でも、それは比べたらの話だ。貴輝より弱くてもギリ使えるかもしれない。でも、使えないって、俺たちは知ってる。」
「・・・・・それを知ってどうするの?」
樹は話がずれたと不機嫌をあらわにする。
「じゃあさ、選ばれたらさ、選べるのかな?」
「は?」
壱華も振り返る。啓太は、誰とも目を合わせずに行った。
「剣に選ばれた人間は、千穂を守るか守らないのか選べるのか、ってこと」
「え?」
啓太はやっと3人の方を向いた。
「俺たちは、千穂を守る意思があるやつが剣を持つと思ってる。でも、そうじゃないやつが剣に選ばれたとして、そいつは千穂以外の誰かの、たとえば自分のために剣を使うって選択肢はあるのか?」
「だからさ、それを知ってどうするの?」
啓太は一瞬視線を下に落としたが、すぐに思い切ったかのように戻した。
「剣が、千穂を守るものである以上、剣に選ばれたらその力は千穂のためにしか使えないんじゃないかって思ったんだ。そうなんだとしたら、敵が誰だろうがなんだろうが、使い手になった時点で二階堂は千穂を守るしかないんじゃないかって」
啓太の言わんとすることを理解して、3人は押し黙る。それは、つまり―
「二階堂の父親が何を考えていても、一度金色の使い手になってしまえば、二階堂は千穂に害をなすなら自分の父親でさえ倒すってこと?」
「嫌!」
樹の確認に、千穂は耳をふさいだ。
「そんな話聞きたくない!」
嫌だ嫌だと千穂は首を横に振る。そんな、そんな存在になりたくない。自分を理由に、親子が殺しあうなんて考えたくもない。自分は、そんな呪われたものになんかなりたくない。
震える千穂をしばらく見つめて、樹は紙に書き足した。
『
6二階堂は味方、二階堂の父親は敵説(場合によっては父親が2の答え)
7とにかく二階堂を使い手にしてしまう
』
その文字を見て、樹は笑った。
「最っ低」




