襲撃3
いつぞやがそうであったように、啓太は机に頭を乗せて空をぼうと眺めていた。
「啓ちゃーん」
大滝が上から声を落としてくる。それを無視して、啓太は空をただ見続ける。
「戸川、死に過ぎ」
こつこつと指の関節で清水が啓太の後頭部をたたく。
「どうしたのー」
大滝が、啓太の机に顎を乗せてどうにか気を引こうとする。
「俺さ」
「うん」
大滝が大仰に頷く。
「役に立たないなぁって」
「そんなことか」
清水がそんなことをいうものだから、啓太は視線をついつい空から外してしまう。
「清水は克服者?」
似たような経験でもあるのだろうかと、この3人の中で一番賢そうな顔をした少年に啓太は尋ねた。
「いや?お前が役に立ったことなんてあるのかと思って」
今さら悩んでるのかと、という言葉は啓太に一層のダメージを与える。
「もういい」
とうとう啓太は机に顔を押し付けてしまった。視界は真っ暗だろう。
「あ~あ、やぁちゃんが啓ちゃんいじめたー」
「これくらいいじめとは言わない」
そんな二人の会話を後頭部で聞きながら、啓太は悶々と考えた。
―壱華は気づけば千穂の友達とも仲良くなっていて、それに安心したのもつかの間出かけ先でナンパされて。二階堂の言い分はやはりどこか怪しいし、年下二人の火花散らす舌戦を止めることもできず、これも気が付けば二階堂は千穂を守ることになっているし。ナンパされてるし。出かけ先で何かに肉薄されてるし、ナンパされているし―
「なんなんだもう」
「あ、復活した」
啓太は肘をついて掌で顔を覆う。
「これは復活したとは言わない」
「じゃあ、なんていうの?」
「・・・・・悶えてる?」
「啓ちゃん」
よしよしと大滝が啓太の頭を撫でる。
―あかりという少女は、自分たちのことを怪しいと思っているようだったし、二階堂の口ぶりからするといろいろと調べられているようだったし。というか、二階堂も調べていたようだったし。
「?」
啓太は顔から手を放した。
「おかしくね?」
「啓ちゃんの頭はいつもおかしいよ?」
大滝の言葉は啓太の耳に入らない。
二階堂は調べているようだった。でも、調べられなかったと言っていた。
―そんなことってあるのか?
二階堂の情報収集能力がどれほどかは知らないが、単純に印象からいって高い。そんな彼がやきもきするほど自分たちの情報とは集められないものなのだろうか。
「隠されてる?」
誰かに、保護されている?
『大人って、本当のこと隠して良い感じのことしか言わないからね~』
『でも、まあ私たちまだ子供なわけだし、それに乗ってやるから全力で守れよってことで』
千穂の友人が言っていたことを思い出す。先生は自分たちに何かを隠している。でも、その代わりに守られている。
「先生が?」
先生は凄腕の霊能力者ではあるが、自分たちの情報を隠しきれているとは思えない。先生が影響力を持てるのは個々人の知人間の話であって、ネット上にある情報までは手が出せるとは思えないのだ。だったら、そこに詳しい人間が噛んでいてもおかしくはない。
「それが二階堂の父親だって?」
まさかと啓太は首を振る。だったら、二階堂の父親は全面的な味方ということになる。味方だったら彼が直接会いに来て、直接自分たちと自分の息子とを会わせればいいのだ。
「つか、息子から隠すのもおかしな話だよな?」
―でも、先生も味方だけど隠してるんだよな?
「ああ!わけわかんね!!!」
「訳が分からないのは、啓ちゃんだよ」
大滝はにっこりと笑い、清水はため息をついていた。




