6.襲撃1
ふわふわと千穂は浮いていた。
『あなたのお父様って、何をなさってるの?』
そうあかりちゃんは二階堂に訊いてたな。二階堂はお父さんのことはよく知らないって言ってた。やっぱり社長さんだと忙しいのかな。ふわふわと考える。
『じゃあ、聞き方変える。どうしてあんたは俺にこれだけ突っかかってくるのに、高野原には何も聞かないの?』
二階堂も訊きかえしてた。私のことは気にならないのかって。あかりちゃん、気にしてるみたいだったな。あとからいつものあかりちゃんに戻ってたけど、やっぱりまだ気にされてるのかな。ふわふわ、ふわふわ。
『もうよくない?』
優実ちゃんかっこよかったな。すごく助かった。あんなに頼りになるなんて知らなかった。
『俺は、どうやら見えるタイプらしいというのが前提』
二階堂見えるって話しちゃってた。二人とも信じたのかな。信じないかな、やっぱり。
―ああ、怖いな。もう少しで誕生日だ。
『高野原さんが要るって言うなら、別に守ってもいいよ?』
『じゃあ、決まり』
そう笑った二階堂の顔は、少し意地悪だった。ああでも―
―守ってくれるの?
私のことを。
―貴ちゃんはいなくなっちゃったの
―守ってくれる人がいなくなっちゃったの
―ねえ、二階堂、黄金の剣で、私を守ってくれる?
ふわふわ、ふわふわ。なんだかんだ、今日もいい1日だったのかもしれない。ちょっと怖かったけど、不安なこともあるけど。でも
―守ってくれるんでしょう?
視界が黒く染まる。大きな黒い影が千穂を飲み込もうと大きく口を開いていた。それは、とても怖い光景なのに、でも千穂は悲鳴を上げなかった。金色の閃光が走る。それに真っ二つにされて黒い影は消えてしまった。
―ほら、もう大丈夫だ。
千穂は無意識に、にんまりとほほ笑んだ。
※
「ああ、よくない」
のっそりと男は起き上がった。ふらふらと窓に歩み寄り、カーテンを開ける。外は晴れていた。しかし、夜には雨が降ると昨夜の予報が言っていたことを思い出す。そして、またも夢を思い出す。
「よくない」
ぎりっと立てた爪がガラスに音を立てたけれど、男は気にしない。
「あれと一緒にいるのは都合が悪い」
そうだ、二人でいるのがいけない。誕生日の日まで、いや、そのあともずっと、会わなければいいのだ。そうすれば
「剣だって奪われないだろう?」
男は笑った。




