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  攻勢4

 これもやはりなぜかは分からないが、二階堂とあかりは隣の席に座っていた。あかりの隣に樹がいて、その隣に啓太がいる。二階堂の向かいに優実、その隣に千穂、そのさらに隣が壱華だ。千穂はまだ少しぐずぐず言っている。


「ああ、それで、まだ気になってた事あるんだけど」

とあかりが天丼を食べながら隣に話しかける。

「何?」

と二階堂もカレーに福神漬けを乗せながら答える。

「この前、掃除棚が倒れたじゃない?あなた気づくのすごく速かったから、なんでかなってずっと思ってたの」

「ああ、あれねー」


どうしようかなと声にせずつぶやいたのが千穂には分かった。


「まあ、信じる信じないはそっちに任せるよ」

「え?何?不思議系?」

二階堂の発言に、優実が瞳を光らせる。 

「俺は、どうやら見えるタイプらしいというのが前提」

「おばけとか?」

「そう」


と頷いた後、思い出したように付け足す。


「これはたぶん父親譲りだと思う。見えたらあの女絶対言いふらすから」

「あら、お父様の情報増えたじゃない」

「普通に見えてるから気にしたことなかった」

「普通に見えてるのに、見えるタイプらしいって。断言すればいいのに」

「見えるだけだし」

「テレビでやってる除霊みたいなのはできないよって?」

「できない」


優実も交じってものすごく普通に会話が続く。


「それで、見えるから気づいたの?」

「そうだね。あいつら特有の気配あるから。人間と違うからすぐわかる」


と言って、いや違うなと二階堂は言いなおす。


「普段は気づかない。でも、ここ、なんかきれいすぎるって言うか」

二階堂は考えながら指で机をたたく。

「異物が目立つ?」

「そんな感じ」


あかりが言語化をフォローする。


「で、いつもいないのに何でいるんだろうって振り返ったら高野原こけてて、掃除棚が倒れてた」

「はい!」


優実が手を上げる。


「いつもいないのに、いた奴は何をしてたんですか!!」

「2匹いて、1匹が高野原の足掴んでて、1匹は掃除棚倒してた」

「だから倒れることにも気づいたんだね~」


なるほどーと優実が頷く。


「あとは俺の運動能力」

「高いことは自負してるんだ」

「苦労したことはない」

「二階堂って、すごく回りと自分を比較してるよね」


しかも冷静に。と優実が分析を始める。


「比べないと分からなくない?」

「それもそうか」


せっかくの分析劇になりそうだったが優実はすぐにあきらめた。


「だって、千穂は信じる~?」


優実が隣の千穂のほっぺをつつく。千穂はそれにどうしようかと言葉を詰まらせる。困って壱華を見た千穂をフォローしたのは二階堂だった。


「見えてないんじゃない?」


見えてたらあんなに派手にこけてないでしょう。

「確かに」

「なっ!!」

千穂は衝撃にカエルがつぶれたような声をあげる。そしてあわあわと優実とあかりを見る。


「え?私そんなに派手に転んでたの?そんなに??」

「そうだな~浮いてるな~くらいの感想は持ったかな」

「そんなに!?」

「千穂は小さいからこんなものなのかしらって思ってたかもしれないわね」

「ええ!?」

「だから気を付けなよって言ってるじゃん」

と二階堂に締められる。


「でも、見えてないなら気を付けようないじゃん」

ねーと優実が笑いかけてくる。

「だったら、守ってもらうしかないじゃない」

あかりは笑顔で言った。

「見えてる人に」

ね?とあかりは二階堂を見上げる。それにどうしたものかと今度は二階堂が軽く目をそらして考え始めた。


「でも、そんな迷惑掛かるし」


あわあわと千穂は小さく手を振ってこの話を終わらせようとする。


「別に、いいよ」

「え?」


二階堂の目には、少し悪戯気な光が宿っていた。それに少しどきりとしながら千穂は続きを待つ。


「高野原さんが要るって言うなら、別に守ってもいいよ?」

「なっ!」


こいつ丸投げしやがった!!千穂はかあっと顔を赤らめながらぎりっと二階堂を睨みつけた。


「だから、あんた睨んだって怖くないんだって」

全然迫力ないよ。

「だって!だって!!」

お前が丸投げしてきたんだろう!!千穂はぱたぱたと机をたたく。

「いいんじゃない?」

そう言ったのは樹だ。ビーフシチューを食べながら樹はしれっと言った。


「本当にそういうのがいて、本当にそういうやつのせいで困ってるなら、助けてもらったらいいんじゃない?」


こちらを見ないで樹はそんなことを言う。また、なにか賭けでも始めたのだろうか。昨日出かけている間は学園周辺では異常はなかったと言っていたから、新たに罠を張ったのかもしれない。二階堂は横から樹の顔を覗き込んでいたが、意地悪そうに笑うと千穂の方を向いた。


「じゃあ、決まり」

その言葉は、嬉しいような新たなごたごたの始まりのような複雑な気分に千穂をさせた。


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