束の間の休息
「担イシ者タチ」第四話です。
3000文字ぐらいとか言っていましたが、2000文字になってしまいました。
よろしくお願いします。
「う……ん?」
ハツキが目を覚ました場所は、ハツキが気を失った場所……東京都心より少し離れたところにある廃墟の2階のある部屋だった。
ハツキ達が今いる廃墟は洋館のような場所であり、そこそこ広いところであった。世間一般で言う豪邸というものだろう。
「あ! お兄ちゃん! やっと目を覚ました!」
目を覚ましたハツキの耳に高く澄んだ声が届く。
声の主はハツキの妹、過崎梓だった。
「ハツキ! すごい……ほんとに治った……。すごいよ、祈」
「うん……自分でもびっくりだよ。ほんとに治るなんて……」
ほんとに治るやら自分でもびっくりやらと、鈴と祈がハツキの横で驚いた顔でハツキを見ながら言っていた。
「治るって……何が……って、これは……」
ハツキはそこでようやく自分の肩に穿たれていた銃撃による穴がきれいに消えていることに気がついた。
「それ、祈ちゃんが治してくれたんだよ」
「え、どうやって……?」
ハツキは先ほどあの鬼狩の部下の男が言っていたことを思い出した。
その男は、魔術師を見つけた、と。祈を見てそう言っていた。
(もしかして、本当に祈が魔術師になったのか……?)
もし祈が魔術師になったというのならば、ハツキと同様にこれから科学者たちに追われるかもしれない。そんな不安を持ちながら、ハツキは恐る恐る祈に怪我の回復について聞いた。
「えっと、それね、実は……魔術なの。さっき頭の中に声が聞こえてきて、魔力は現界した、魔術を使えるようになった、ってその声が言ったんだ。それで、魔術を使うにはどうしたらいいかとか、そういったことが頭の中に急に出てきて、それで……その方法を試したら……できたの」
ハツキの予想は当たっていた。しかし、ハツキが驚いたのは祈が魔術師になったことだけでは無かった。
「え……じゃあ、声が聞こえてから……それから、魔術の使い方がわかって、それをそのままやったら、この怪我が治ったってこと?」
「うん、そう」
普通なら信じられない話だが、先ほど同じ現象を体験したハツキには信じるほか無かった。
もっとも、ハツキはもとから魔術が使えたので、祈と少し違う部分はあるが。
「ねえ、祈……その声って、なんか、こう……ロボットみたいっていうか……神秘的っていうか……そんな感じの声だった?」
声がどんなふうだったか言葉にできず、少し戸惑いながら鈴が言った。
「うん、そうだね。無機質っていうか……そんな感じだった」
「やっぱり……それなら、私も聞いたよ」
「「ええ!?」」
ハツキと祈が同時に驚嘆の声を漏らした。
「え、それなら私も聞いたよ」
梓が続けて言った。
「「えええ!?」」
ハツキと祈が続けて驚嘆の声を漏らした。
「と、いうことは、鈴と梓も魔術を使えるってことだよな……」
ハツキが鈴たちの言葉の意味するところを言った。
「そうだね……。鈴、梓、発動させる方法とか、わかる?」
「うん、なんとなくだけど、分かる気がする。でも、私のは多分今は使えない。私の魔術は、素材がないと使えないから」
鈴が申し訳なさそうに言った。
「どういうこと?」
祈が鈴に素材が要る、とはどういうことか、という意味でそう聴いた。
「私の魔術は多分想像したものをつくることができるっていうものだと思う。すでにこの世界に存在するものも、存在していないものも、素材があれば何でもつくることができるっていう魔術らしいの」
「なるほど。想像して創造するのか……」
「「「……」」」
「? あ、今のは違うから! 別にそういうのじゃないから!」
ハツキの程度の低いダジャレに三人は絶句しながらもなんとかスルーを通し、祈が別の話に転換した。
「え、えーと、梓ちゃんは、なんの魔術かわかる?」
「あ、えーと、多分、私の魔術は……」
梓がなぜかそこで言葉に詰まった。
「どうしたの? 梓」
鈴が心配したように言った。
「あ、いえ……その……なんか、私の魔術だけなんか戦いに向いてなくて……」
「どんな魔術?」
「なんか……料理の作り方がわかるって……そんな魔術で……」
「「「……」」」
またあたりに静寂が訪れる。
「なんか……今回の話はコメディな感じだな……」
ハツキが少しメタいことを言う。
「この流れにしたのはハツキだけどね……」
そんな感じで会話していた時だった。
「第6ブロック、F-24、廃墟の探索をする」
突然外から少し緊迫したような声が聞こえてきた。
「……どうやらお迎えが来たみたいだな」
「おとなしく連れて行かれるつもりはないけどね。じゃあ、祈と梓はここにいて。私とハツキだけでなんとかする。祈、怪我したら回復よろしくね。梓も、お腹すいてきたからなんか作ってね」
「うん、できるだけ怪我しないでね」
「任せてください!」
「出撃前の過度の会話は死亡フラグになるぞ」
ハツキがフラグの建設を危惧してそう言った。
「まあ、そうだね。どうやらハツキも元気みたいだし。……正直ちょっと怖いけど、行こっか」
鈴がそう言って部屋を出た。
(……あいつのほかに何人いるかわからない。慎重に行こう)
少し緩んだ気持ちを引き締め、ハツキも鈴に続いて部屋を出た。
読んでくださり、ありがとうございました。
今回はサブタイにある通り、少し気が緩んだハツキ達を描きました。しかし、次からはシリアスな感じです。
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