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▼8-伝説の第一歩

▼8-伝説の第一歩




 どうせ居続けた所で意味のない葬式会場を後にして、一行は車でヴォルクリング邸へ向かった。

 父の葬儀に関する委細は全てメイド長のエルザに任せた。勿論、少しでも長く、そして近く、父の亡骸の傍にいたいという想いも強かったが、今の自分は『レオニードの娘』ではなく『ヴォルクリング家の当主』なのだと、カーチャは己に言い聞かせた。当主には、当主にしかできぬ仕事があるのだから、と。

 貴賓室の準備は整っていた。カーチャは自らイオナ達を先導して貴賓室に通し、ハンナが香茶を用意してそれぞれの前に置いた。

 皆がソファに腰を下ろすのを確認してから、ホストであるカーチャも座り、

「人払いの必要はありますか?」

 開口一番、そう問うた。おそらく必要なのでは、と思って言ったのだが、いや、とイオナは首を横に振った。

「大丈夫だ。ここまで来れば問題ない。それに、事情を知らないのはおそらくお前だけだからな」

「…………」

 急に素に戻ったイオナにカーチャは目を丸くした。イオナはそんなカーチャの表情の変化に気付くと、軽く笑って、

「ああ、すまん。実を言うと堅苦しいのは性に合わなくてな。一応の礼儀は通したんだ、もういいだろう?」

 そう言って視線をハンナにやる。つられてカーチャもハンナに目を向けると、そこには憮然とした表情のメイドがいた。

「……しかたありませんね。イオナ様にこれ以上期待するのは愚策のようですから」

「これは手厳しい」

 容赦のないハンナの言い分に、イオナは軽く肩を竦めて見せた。

 ――これは、どういうことなんでしょうか……?

 カーチャは静かに混乱する。どうやらイオナとハンナは顔見知りであるらしい。それに、イオナの「事情を知らないのはおそらくお前だけだからな」という言葉。もしかしなくとも、父もハンナも関連しているであろう『とても大切な話』について、カーチャだけが蚊帳の外だった、ということなのだろうか。それどころか人払いが必要でないことを鑑みると、この屋敷で知らないのは自分だけだった、という可能性も考えられる。使用人全員が知っているというのに、息女である自分だけが知らなかったとなれば、それはとんでもなく情けないことであるようにカーチャには思えた。

 嫌な予感というのは往々にして当たるもので、実際、カーチャのその想像はほとんど正解だった。

「さて、何から話したものか……」

 とイオナは顎を摘んで思案する。話が全く見えてないカーチャには、ソファの上で縮こまって耳を傾けるほかに術はなかった。

「まず、戦争の話をしようか。カーチャ、お前はこの国の【戦争】について、どこまで知っている?」

 この時、カーチャはイオナが自分のことを『マイ・エンジェル』ではなく『カーチャ』と呼んだことに、耳聡く気付いた。

 ――雰囲気はいつものイオナ大佐ですけど、これはきっと、とても真面目な話ですよね……

 そう把握して、カーチャは首肯する。

「私が知っているのは……百年ほど前、このグラッテン国と隣国のスペルズとの国境上で、人種差別に関する事件があって、それをきっかけに戦争状態へ突入した、ということぐらいです」

 細部を大幅に省略してはいるが、グラッテンで育った者であればこれだけで充分通じるだろう。イオナも頷き、

「大まかに言えばそうだな。国境を挟んでの諍いが徐々に激化した挙げ句、どちらかが先に発砲して、もう一方の兵士が命を落とした――それが最大の契機だった。グラッテンもスペルズも、双方が『先に撃ってきたのはあっちだ』と主張して引かないため、真相は歴史の闇の中だが」

 当然、その程度のことならばカーチャも知っている。その後、かの英雄アノイ・デル・ジェラルディーンも参戦したという大きな会戦がいくつもあった。勃発当初はグラッテンが優勢であったが、後にスペルズが挽回し、結果として互角の均衡状態が生まれた。さらにその後、双方の国力の疲弊もあってか、国境線上での小競り合いだけが何十年も続き、現在に至っているという。学生で言えば中等部レベルの知識である。

「……こんな時に、歴史の講釈が必要なんですか?」

「まぁ落ち着いて聞け」

 一向に核心へ向かわない話に、流石に訝しげな目を向けるカーチャ。それを片手を上げて軽くあしらうと、イオナは突然こんな事を言い出した。

「そうやって始まった戦争が、今や『ゲーム化』していることは知っているか?」

「……ゲーム?」

 知らない。聞いたこともない。カーチャは小首を傾げる。

「どういう意味ですか?」

「それはこれから説明しよう。それより、今の小首を傾げる仕種が相変わらず可愛いのでちょっと抱き締めてもいいだろうか?」

 出し抜けに理解不能なことを言い出したイオナに、カーチャは含みを持たせるように言葉を句切って、確認を取る。

「……あの、イオナ大佐? 今は、真面目な話を、しているんですよね……?」

「そうだが?」

 ――それが何か? って顔をしていますよぉこの人ぉぉぉぉっ!? つ、通じない! 相変わらずこの人には私の常識が通じませんっ!

「イオナ大佐、ここは真面目にお願いしますわ」

 流石に見かねたらしく、アイリスがそっとイオナに耳打ちするのが聞こえた。イオナは不満そうに眉根を寄せ、

「むぅ……これでも真面目にやっているつもりなんだが。それにベルとはあんなに抱き合っていたというのに、不公平な……」

「――んなっ!? ちょっ!? ああもうちゃんと本気で真面目にいこうよっ! イオナ大佐のバカッ!」

 急激に頬を紅潮させたベルに怒鳴られたイオナは、それでも納得がいかないように唇を突き出していたが、不意に真剣な面持ちを取り戻した。一瞬前まで彼女が目を向けていた方向を見やると、そこには笑顔で銀のトレイを振りかぶっているハンナがいた。いい加減にしねぇとキレるぞコラ、というポーズであった。

 おほん、とわざとらしい咳払いをして、今度こそ脱線せずにイオナは話を続ける。

「グラッテンとスペルズの小競り合いは長く続きすぎた結果、一種の形骸化を起こしてしまった。つまり、戦略も戦術も、それどころか中身すらも失われてしまい、戦争はいつの間にか『じゃれあい』になってしまった、というわけだ。たまに起きる戦闘も、ただ国民に対して『戦争は続いている』とアピールするためだけのものに成り下がっている。カーチャ、お前は今までおかしいと思ったことはなかったか? 戦争をしているはずの国に、たかだか軍に天才少女が入った程度のことで、あれほど豪勢なパレードを行うような余裕がどうしてあるんだ? 国の威信、存亡を賭けた戦いをしているはずだというのに、何故スポーツの大会やアイドルのコンサートを催すドームなんぞがあるんだ? 本来、戦争をしている国というのは、もっと切羽詰まっているものだとは思わないか?」

「……!」

 カーチャは吃驚した。イオナの言ったことに、ではない。今イオナが言ったことに対して全く違和感を感じていなかった自分に、カーチャは驚愕したのだ。

 そうだ、その通りだ。言われてみれば、確かにおかしい。改めて、このグラッテンという国が戦争をしているのか否かと問われれば、カーチャの肌感覚ではその答えは『否』になる。

 戦争は経済を逼迫させる。これは通説ではなく、単なる事実である。戦争に勝利するためには強い軍事力が必要になる。軍事力を強化したり、戦闘で失った分を補填するためには、多くの軍事費が要る。その軍事費は、国民の税金などを集めた国庫からひねり出される。そしてそれは、国家が戦争に勝利するその日まで、際限なく幾度も繰り返される。そうして戦争は国の財源を徐々に蚕食していくものなのだ。

 その上、そも戦闘という行為そのものが、非生産的であること限りない代物なのである。武器防具、食料、人命、その他諸々をただ消費するだけで、逆にそれらを生み出すことは決してない。勝つことが出来なければ、ただの浪費行動だと言っても過言ではないだろう。ましてや勝利した所で、得るのは【他国から略奪したもの】である。手に入れた幸せの数だけ、同じ数の、否、場合によってはそれ以上の不幸が生まれる。どこまで行っても自国の利益は他国の不利益でしかない、愚かしいゼロサムゲーム。

 そのような行為を百年以上も続けているこの国に、普通に考えて、余裕なんてあるはずがない。いくら長期間、大きな会戦がないとはいえ、それでも大勢の人間が軍人として非生産的な仕事に就き、高額の給料を受け取り、決して安くはない軍事兵器を購入して取り扱っているのだ。財政にかかる負担は相当なもののはずだ。だが、この国にそういった面はほとんど見られない。少なくとも表面上、人々の営みは戦争状態にない他国と比べても遜色ないレベルを保っている。

 これはどういうことなのか?

 愕然とするカーチャの様子から、その理解の度合いを測ったのだろう。イオナは口元に満足げな笑みを刻み、

「カーチャ、お前は本当に賢い子だ。理解が早くて助かるぞ。今なら俺がさっき言った、戦争が『ゲーム化』している事に関しても、なんとなく想像はつくんじゃないのか?」

「…………」

 カーチャは両手で口元を押さえて沈思する。ゲーム化。即ち、その単語こそが鍵だ。一世紀以上も戦争状態にあるグラッテンが、それでも困窮しない理由。

「……――!」

 思慮の末、それは天啓のごとく閃いた。

「……戦争を、賭け事に流用している、ということでしょうか……?」

 自信はなかったので、上目遣いにイオナを見つめて控えめに聞いた。

 イオナは、にっ、と笑みを深める。

「正解だ」


 正確な時期は不明であるが、おそらくは〝グラッテン帝国〟において皇族の影響力が薄れ、なし崩し的に君主制から立憲君主制へと変化しつつあった頃だと推測されている。

 グラッテンとスペルズの戦争は、いつしか世界的なギャンブルゲームと化していた。

 双方の国から兵力を出し、戦わせ、その結果を予想するという単純なゲームである。無論、それだけでは深みが足りないので、一度の戦闘毎に様々な条件がつけられ、趣向が凝らされていた。

 やはり一番の目玉は〝エア・レンズ〟による実況中継だろう。これにより世界中から集まってきた金と暇を持て余した者達は、安全な場所にいながらにして、生死を賭けたスリル満載の戦いを、臨場感たっぷりに鑑賞することが出来るのだ。

 時に少数対多数、時に少数精鋭同士のせめぎ合い、時に王道の大兵力同士の会戦――様々な条件で戦場が用意され、それに見合うようにオッズが変動する。特に少数精鋭同士の対決時には兵士個人の情報が開示され、他の賭博レースさながらの分析が行われたりもする。その際、希望者には、戦闘訓練時に撮影された〝エア・レンズ〟の映像までもが提供されているという。

 誤魔化しもなければ、やらせもない。本物の殺し合い。世界に一つしかない、ときに星よりも重いなどと称される人の命が、塵芥のごとく次々と消費されていく光景。

 この世の快楽を貪り尽くしたと自称する非道な富豪達は、この娯楽に血湧き肉躍らせた。どれほど富める者といえど、人間の命を弄ぶことなど許されない時代である。それ故に彼らは、このギャンブルにのめり込んだ。自らの優越感、征服欲、その他の卑しい欲望を満たすために。中には、このゲームに全財産を注ぎ込んだ挙げ句、身を滅ぼす者すらいた。

 巨額の金が動いた。それこそ国の一つや二つの国庫を潤すほどの額が。

 元々はグラッテンとスペルズ、それぞれの軍の中で自然発生した非合法な賭博だった。だが、戦争によって国力が低下していく一方だった両国首脳が、これに目をつけてしまったのだ。

 これを利用すれば、国の窮乏を救えるかもしれない――そう悪魔が彼らの耳元に囁いてしまったのだろう。

 世界に精霊が現れ、悪しき科学と魔法の力が消滅したとて、人の心の醜悪さまでは消しきれなかったということか。

 二つの国はそれぞれが胴元となり、共に世界の裏側に賭場を開いた。表の世界で血で血を洗う戦争をしている二つの国が、その裏で仲良く手を繋いだのである。

 然りしこうして、この戦争は悪辣なる『ゲーム』と化した。かくして兵士達は競走馬同然の存在となり、今も大勢の軍人がいずれ舞台に立つその日のためだけに禄を食み、訓練を重ねている。軍の犬、とはよく言ったものだ。今のグラッテンとスペルズの軍人は、まさしく〝軍に飼われている〟と言っても過言ではないのだから。

 この秘密を知る輩の中には、〝エア・レンズ〟がなければこのようなものは生まれなかっただろう、と言う者もいる。とはいえ、軍事兵器の一つとして〝エア・レンズ〟を開発した学者も、よもや自らの発明品がこのような俗悪なことに使用されるとは夢にも思わなかっただろう。

 人間のドス黒い部分と、新たに生まれた技術とが望まれぬ交合をし、その結果、世にも醜怪な私生児が誕生してしまった。

 度し難きは、ひとえに人の業だった。


「よって、この国には〝最前線〟がない」

 イオナは断言した。

「ある意味、戦争はとっくの昔に終わっていた、というわけだ。だが、誰もその事を知らない。政府と軍の上層部が癒着しているからな。情報は完全に規制され、統制され、戦争がただのギャンブルになってしまったことを知っているのは、ほんの一握りの人間だけだ」

 カーチャはふと一ヶ月前のことを思い出す。そう、あれはカーチャがラーズグリーズに配属されて二日目の事だった。パレードの開始場所へ向かう車中で、カーチャはこんな話を聞いたのだ。

 ――「そうそう、それそれ。いきなりマイクで『国民よ、俺を最前線に送ってくれ!』だったっけ? イオナ大佐もすごいことするよねー。もうみんな大騒ぎ。ま、勿論聞き入れて貰えなかったんだけどさ」――

 当時、カーチャは疑問に思ったのだ。何故にイオナは前線に行きたがったのだろうか、と。そしてその疑問に、カーチャは自分で答えを用意して納得してしまっていた。きっと『デル』と軍閥貴族発祥の名を名乗っているぐらいなのだから、戦いに赴くことこそが本懐なのだろう――と。

 それが自分勝手な思い込みでしかなかったことを、カーチャは思い知った。

 五年前のイオナは、本当は、あるかどうかわからない〝最前線〟の存在を確認しようとしていたのだ。カーチャは自らの浅はかさに溜息が出る思いだった。

「……それが、この国の真実、なんですね」

 イオナの言うことが狂言でないことは、他の皆の顔を見ればわかる。アイリスも、ベルも、サイラも、ハンナでさえも神妙にしていた。カーチャをからかって遊んでいるような雰囲気ではない。それに、イオナの話はことごとく筋が通っていた。信じる他ないだろう。

 だが、それはそれとして、カーチャには聞かねばならないことがあった。

「でも、その事と父に、一体どんな関係が……?」

 戦争が一部の人間によって私物化され、悪用されているのは確かに由々しき問題ではある。だが、それと『ヴォルクリング家の当主』とがどう関わってくるのかが、カーチャにはわからなかった。

 イオナの返答は簡潔でわかりやすかった。

「レオニード氏は首相時代、〝戦争賭博〟反対派の筆頭だった」

「――!?」

 嫌な予感、と呼ぶにはあまりにおぞましい感覚がカーチャの脊髄を駆け抜けた。

「ヴォルクリング家の当主と言えば、一度は首相の椅子に座るのがしきたりのようなものだ。漏れなく最高権力の座を手にしたレオニード氏は、以前から知っていた〝戦争賭博〟を止めようと動いた。この国で権力の階段を昇れば、望むと望まないに関わらず〝戦争賭博〟のことは耳に入るだろうからな。首相になるずっと前から、時が来れば実行するつもりだったんだろう。だが」

 イオナはそこで一度言葉を切り、溜めを作った。言いにくいことをこれから言うぞ、という合図のようでもあった。

「……だが、事実を国民へ公表しようと動き出した矢先、娘を産んだばかりの妻、ルイディナ・ファン・ヴォルクリングが亡くなった。――これ以上はないってぐらい、最悪のタイミングでな」

 カーチャは息を呑んだ。そんな。そう言おうとして、喉がまるで言うことを聞かなかった。

 カーチャの八歳にしては賢すぎる理性が、状況を計算して一つの仮説を弾き出そうした。

 ――お母様が、まさか……

 だが、それ以上考えることは本能が拒否した。脳が嫌々をして、すぐにでも回路を切断しようとした。しかしそれよりも早く、イオナの言葉が氷の刃のごとく突き刺さる。

「暗殺されたんだ、お前の母親は」

 目に見えないハンマーで頭を殴られたかと思うほどの衝撃。

 ――殺された……お母様が……なら、お父様は……?

 無駄に早すぎる自分の頭の回転を、この時ほど憎らしく思ったことはなかった。明敏なカーチャの頭脳は、すぐさま父の死にまで考えが至った。

 父の死も、もしかしたら、暗殺なのかもしれない――と。

「最終的に、レオニード氏は公表を控えることにした。何故なら、彼にはもう一人、大切な肉親がいたからだ」

「――!」

 堪らずカーチャは俯き、黒のワンピースの裾を両手で強く握りしめた。

 父の大切な肉親といえば、自分しか考えられなかった。

 妻が暗殺された。次は娘にその手が及ぶかもしれない――父親ならそう考えて当然だ。苦渋の決断だったろう、とカーチャは想像する。悪逆無道な〝戦争賭博〟と、愛娘の命。その二つを天秤に懸け、ひどく懊悩したことだろう。その結果、自分を選んでくれたことには感謝しなければならないだろうし、正直な気持ちを言えば、とても嬉しく思う。しかし同時に、自分自身こそが、己が正義を貫かんとする父の足をこれ以上なく引っ張ってしまっていたという罪悪感が、カーチャの小さな胸を締め付けるのだった。

「だがレオニード氏は諦めなかった。表向きは〝戦争賭博〟推進派に下った振りをして、密かに活動を続けた。そしてそれは、任期が終わって政界から引退した後も続いていた」

 イオナの声を聞きながら、カーチャは涙を堪え、嗚咽を噛み殺す。駄目だ、泣いてはいけない。今の自分は父の後を継いだ、ヴォルクリング家の当主なのだ。もう小さな子供のように泣いてはならないのだ。

 唇を精一杯噛みしめ、カーチャは面を上げる。涙の堤防が今にも崩れそうな瞳をイオナに向け、話の続きを促す。

「……その結果、父も、暗殺されたんですね……?」

 イオナはカーチャの眼差しを真っ正面から見据え、しかし首を横に振った。

「証拠はない。だが、少なくとも俺達はそう見ている。やり口はルイディナ様のときほど露骨ではないが、葬儀の準備の手際良さを考えるとな。あれだけの規模だというのに手早すぎる。それに、今日に限って会場が空いていたというのも変だ。示し合わせたようにしか見えないだろう?」

「……状況証拠は揃っている、ということですね……」

 イオナが指摘する不自然さは、今ならばカーチャにも感じられる。父を喪ったショックでまるで頭が働いていなかったが、思い返してみれば不審な点がいくつもあった。実際、喪主であるカーチャが今ここにいること自体、おかしいのだから。

「……母の時は、どうだったのですか?」

 その質問をすると、イオナの顔がやや気色ばんだように見えた。回答を避けようとしたのかもしれない。だが、避けては通れぬ質問と悟ったのだろう。重そうに唇を開いた。

「ルイディナ様がワルキュリア軍所属の軍人だったことは、聞いているか?」

「……いえ」

 初耳だった。だが、もう驚きは少ない。今日という日はまだ半分ぐらいしか過ぎていないが、それでも既に色々なことがあった。カーチャの中にある驚きの感情を司る機構が、破綻しかけているのかもしれなかった。

「そうか……」

 イオナがこのような重い溜息を吐くのは珍しい。そう思った時、半分以上が麻痺している神経ですら衝撃を受ける言葉が放たれた。

「ルイディナ様は〝戦争賭博〟の戦場に送られ、戦死した――と聞いている。これみよがしなやり口だが、いやしくも軍上層からの正式な命令なら、従うほかなかっただろうな。軍の規律は鉄の掟だ。政治家のレオニード氏には止めることが出来なかった。出産による〝精霊核〟への影響が軽微だったルイディナ様には、命令を断ることが出来なかった」

「…………」

 言葉もなかった。

 世界が根こそぎひっくり返ったような気分だった。唯一、狂乱寸前の頭で理解できたのは、かつて乳母ミリーナが言った言葉が嘘ではなかった、ということ。父と母は愛し合って結婚し、その上でカーチャはこの世に生を受けたのだ。それは決して嘘ではなかったのだ。

 嘘だったのは、母が病没した事の方だった。実の母親が何者かに暗殺されたという残酷な事実を知らせないための、優しい嘘。

 この屋敷で自分だけが何も知らなかったのにも、合点がいった。皆が、カーチャの心を護ろうとしてくれていたのだ。真実を知って傷つかぬように、と。

 母が戦場へ送られた理由の一部は、カーチャが原因だった。カーチャがちゃんと〝精霊核〟を持って生まれてきたならば、母は少なくとも戦場で死ぬことはなかったかもしれない。今、生まれて初めて、カーチャは自身の体質を憎悪した。何故、自分はこのような形で生まれてきてしまったのか、と。

 カーチャは真相を知り、既に喪っているはずの母を、改めて喪った気がした。これまで母は、カーチャの中では『いつの間にかいなくなっていた人』だった。だから寂しいと思ったことはあっても、悲しいと思ったことはなかった。だが今、カーチャは母の死に様を聞いてしまった。そう、この時初めて、カーチャの中で母が【死んだ】のだ。

 ――私は、今日一日で、父と母の両方を喪ったみたいですね……

 涙は気付かぬ内に流れていた。目の奥が壊れてしまったように、何の抵抗もなく溢れては頬を伝っていくのだ。堪えるとか、我慢するとか、そういう段階ではもうなかった。カーチャは呼吸をするように泣いていた。

 もう何もかも吹っ切ってしまおうと思う。いっそ心が晴れやかになりそうだった。そう、ここにいる自分は今や『エカチェリーナ・ファン・ヴォルクリング』ではない。ここにいるのは『ミストレス・ヴォルクリング』なのだ。

 父も母も自然死ではなかった。つまり、何者かがカーチャから愛する両親を奪った、ということだ。

 その何者かの正体を知る義務と権利が、カーチャにはあった。

 どこか怯えの色さえ帯びていた琥珀色の瞳が、すぅ、と音を立てるようにして落ち着いた。今なお目尻から透明な液体を流し続けているが、そんなものが関係ないほど強い光が瞳孔の奥で瞬いていた。

 そこにあったのは、覚悟を決めた人間の顔だった。

「続きを」

 はっきり、くっきりした声でカーチャはそう言った。

 誰かが唾を飲み下す音が貴賓室に響いた。無理もなかろう。そこにいる少女が浮かべている表情と、発した声は、およそ八歳の女の子のものとは言えなかった。その横顔は、とても子供には見えなかった。その姿は見る者に、戦いに赴かんとする戦女神が如き高潔さ、清廉さ、気高さを感じさせた。

 皆が息を呑む中、一人、イオナだけが会心の笑みを浮かべている。

 その時、貴賓室の扉がノックされた。

 カーチャが目配せをすると、ハンナがその意を汲み取って扉を開く。

 入室してきたのは、軍服を纏った一組の男女だった。

「失礼します。ラケルタ・オイゲン准尉であります」

「失礼します。イーヴァ・クロフォード少尉であります」

 部屋に踏入って敬礼をとる男女二人組は、ラーズグリーズの面々にとっては顔馴染みだった。どちらもラーズグリーズの支援部隊を指揮する隊長である。ラケルタとはカーチャの初陣以来の付き合いで、イーヴァとはその次の出撃の際に挨拶をした覚えがある。このタイミングでここへ来たと言うことは、彼らもやはり、少なからず関係があるということなのだろう。カーチャはそう察する。

「よく来た。二人とも、俺の後ろにつけ」

 どうやらイオナが呼び出したらしい二人は、言われたとおり彼女の座るソファの背後に立ち、直立不動の姿勢をとった。

 イーヴァはサイラほどではないが、女性にしては身長が高く、ラケルタと並んで立っても頭の位置がさほど変わらない。燃え上がる薔薇のように赤い髪を持つ彼女は、いつもならカーチャと目が合うとウィンクをしてくれるのだが、流石に今日は無かった。むしろ静かな表情のまま、涙だけをはらはらと流すカーチャの姿に戦いているようだった。

「話を変えよう。もちろん、全く無関係の話ではないが」

 そう言って、イオナは香茶を一口含み、唇を湿らせた。

「俺達がここにいる理由について、だ。気になっていただろう?」

 いつものイーヴァの代わりとでも言うように、イオナが片目を瞑ってみせる。

 無論、それは最初からずっと気になっていた。政府と軍の闇を知り、母の死の真相を知り、父の過去を知っているこの女性と、それに付き従う彼女たちは一体何者なのか、と。

「はい」

 迷い無くカーチャは頷いた。実を言えば、どことなく予想はついているし、彼女らが『ミストレス・ヴォルクリング』である自分に期待しているであることも、なんとなくだが予測していた。それでも、確証はなかった。

 イオナは前髪を掻き上げながら、事も無げに言葉を続ける。

「呼び名は色々あるが、俺達自身は特にこれと言った名前は名乗っていない。だから、象徴的な名称を並べるなら――〝戦争賭博〟反対派、テロリスト、反乱軍、革命軍……こんなところになるかな」

「つまり、父の仲間だった、ということですね」

「その通りだ」

 カーチャの念押しに、イオナは笑って指を鳴らした。

「表立った活動を停めたレオニード氏は、それでも裏でずっと動き続けていた。目立たぬよう、俺達のような反対派に資金援助などをしてな。だから俺達はレオニード氏のことを〝足長おじさん〟と呼んでいた」

 その単語には聞き覚えがあった。いつだったか、ベルの口から聞いたことがある。そうして記憶を洗えば、もう一つ理解できることがあった。

 それは、ラケルタがここにいる理由。

「……そして、連絡役がラケルタさんだった、と」

 言われた浅黒い肌の男が、軽く目を見張る。ラケルタ・オイゲン。道理で初めて会った時ですら聞き覚えがあったはずだ。彼は姿こそ見せていないが、何度も父を訪ねてこの屋敷に来ていたのだ。

 イオナは背後に立つラケルタに、不味いとわかっている料理に向けるような目で一瞥をくれ、

「気付いていたか」

「いえ、確信したのは今さっきです。そういえば何度か、父の周囲でオイゲンさんという名前を聞いたことがありましたから」

「――馬鹿正直に本名を名乗っていたのか、お前」

 ラケルタに話しかけた途端、イオナの声には毒を含んだ棘が生える。男に対する嫌悪か、それともラケルタの浅薄さへの怒りか、あるいはその双方が理由であろう。

「申し訳ありません」

 隠密行動を子供に見破られた形になってしまった准尉は、言い訳の言葉もなく、頭を下げた。カーチャが推測するには、彼は父に対する一応の礼儀として偽名を使わなかったのではなかろうか、と思っている。

 やれやれ、とイオナは溜息を吐き、

「お察しの通りだ、カーチャ。俺達はこの馬鹿を使って〝足長おじさん〟とやりとりを行っていた。正確には、レオニード氏とラケルタが直接対話し、その次にラケルタからベルが連絡事項を受け取るという流れでな。実を言うと、お前のことも言付かっていた。俺達の仲間になるよう、そっちで説得してくれ――とな。残念ながら、そうする前にこんな事になってしまったんだが」

「説得……? どういう意味でしょうか?」

「そのままの意味だ――と言いたいが、実を言うと少しややこしい」

 そこでイオナは香茶をもう一口飲んで喉を潤すと、

「長い話になる。無理な注文かもしれないが、楽にして聞いてくれ」

 そう前置きし、その全てを語り出した。


 結論から言おう。

 イオナ達の最終目的は【軍事クーデター】である。

 そしてカーチャには、その後の政治の主翼を担ってもらいたいと考えている。

 ――イオナの話を要約すれば、以上のようになる。

 目を剥いて驚愕したのは言うまでもない。

 まずイオナが弁解したのは、正確に言えば自分たちはテロリストではない、ということだった。無論、先程自称したテロリストというのは言葉の綾で、そう言えば伝わりやすいと判断したからに過ぎない、とも。

 テロは歴史の流れを停める愚劣な行為である。イオナ達にはそのような非生産的なことをするつもりは一切なかった。

 実を言うと、定期的に行われる『戦闘訓練』の敵性対象の者達も、本来ならば、この国の暗部を知って立ち上がった同志なのだという。

 ちょっと待って欲しい。ならば何故、彼らをあのように殲滅してしまっているのか――当然、カーチャはその問いを発した。

 邪魔でしかないからだ、とイオナは躊躇なく答えた。遺憾だが、彼らの行為はまさしく愚かなテロリズムであり、建設的な政治手法が全く考えられていない。破壊の後には必ず創造が必要になるというのに、彼らはその事を致命的なまでに失念しているのだ、と。

 また、よりにもよって自分たちのところへあのような任務が回ってきているのだ。上層部がこちらに対して何かしらの疑念を抱いているのは、ほぼ間違いないだろう。自分たちは試されている可能性がある。そうとなれば、クーデターを企てていることを見抜かれるわけにはいかない。ましてや、戦闘中は〝エア・レンズ〟で四方八方から監視されている状態だ。いくら志が同じといっても、仲間に誘うわけにはいかない。かといって手を抜いて見逃せば、また余計な活動を起こして自分たちの障害となる可能性が生まれる。ならば、後顧の憂いは絶つのみ。

 故に、全滅させるのだ。

 そうは言っても、仲間がいらないわけではない。こう見えて密かに、ワルキュリア軍とアインヘルヤル軍の双方で同志を見つけては事情を話し、協力を取り付けているのだ。

 ――どうやって?

 そうカーチャが尋ねると、イオナはこう答えた。

 俺とベルが体を張って、と。

 話が大人にしか解らない方向へ転がりそうになった瞬間、最近とみに意思表示行動が増えてきたサイラが大きな掌でテーブルを、タン、と叩いた。それ以上はいけない、というジェスチャーである。都会に来て初めて出来た友達を護ろうとするサイラの想いは、皆が意外に思うほど強かった。これによりイオナは一旦は口を噤み、こう言い直した。

 ――俺が女と、ベルが男と仲良くなり、その中から〝戦争賭博〟で親族、友人、恋人を失った人間のみを抜粋して声をかけている。

 これは、本当に信頼できる仲間を見つけ出すための手法であり、別に好きこのんでやっているわけではなく、いや、だからと言ってやましいことをしているわけでは決してないぞ――とイオナは言い訳をしていたが、どう考えても趣味と実益を兼ねているであろうことは疑うまでもなかった。

 さて、そんな自分たちになにより必要なのは、政治的なリーダーである。我々全員の思想を体現する指導者的存在、グラッテン国民が納得できる血筋と実績を背負った人物。それがいなければ、自分たちはそれこそ殲滅対象のテロリストに変わりなく、いっそ愚連隊にすら劣る集団となる。

 当初はその役割を、カーチャの父、レオニード・ファン・ヴォルクリング氏に求めていた。だが彼は既に高齢であったし、クーデターを実行に移す日もいつになるかまだ見当もつかない状態だ。無論、充分な戦力が揃えば決行する気でいるのだが、それだけの仲間を確保するにはやはり多くの時間が必要になるだろうという結論に達した。故に、自分たちは次世代の体現者を求めた。そして最有力候補として浮かび上がってきたのが、誰あろうエカチェリーナ・ファン・ヴォルクリングなのである。

 当然と言えば当然の話だった。これまで幾度となく時の首相を輩出してきたヴォルクリング家の後継者であり、加えて世紀の天才少女として世界中から絶賛され、さらに〝戦争賭博〟反対派かつ軍事クーデターの共謀者でもある父を持ち、現在の政府に母を謀殺されたのが、カーチャという少女である。

 これ以上の逸材が他にいるだろうか?

 いたら大変である。そんな冗談が飛ばせるほど、出来すぎなぐらいに条件が整っているのだ。すぐさまレオニード氏も含めて、自分たちはカーチャを仲間に引き入れるための段取りをつけた。

 その結果、八歳のカーチャは特例で軍に入り、特務機関ラーズグリーズへ配属されたのだという。

 これは同時に、一つのカモフラージュでもあったのだ。イオナはそう語る。

 考えてもみれば、そもカーチャの母・ルイディナはワルキュリアの軍人で、無念にも〝戦争賭博〟の犠牲者となったのである。その軍に、今またカーチャを預けるというのは、何を意味しているのか。

 何の変哲もない目で見れば、愚策であろう。カーチャから母を奪った者達の手に、またしてもその生殺与奪の権利を握らせるのだ。【敵】にみすみす利する行為に他ならない。

 しかし、いや、だからこそ意味がある。【敵】はレオニード氏のこの行動を『軍門に降った』と受け取るだろう。こうして一人娘ですら預けるのだから、もう抗う意思はない。だからもう何もしないで欲しい――と言葉ならぬ言葉が伝わるはずだ。つまり、一種の〝人質〟である。

 こうして表向きは服従すると見せかけ、レオニード氏とラーズグリーズから疑いの目を逸らし、なおかつ未来への布石を打つ。面従腹背の計である。ここ一ヶ月の間、カーチャの身に降り懸かった事象の裏には、そのような目論見があったのであった。

 クーデターが成功すれば、現在の政権は粉微塵に崩壊する。その時、スペルズ及び他国がどう動くかを自分たちは想像しなければならない。そうすれば自ずと、【暴力以外の大切なもの】が見えてくるのだ――イオナはそう言った。

 話の筋は通っていた。自らが置かれた境遇を鑑みて、カーチャはなるほどと納得していた。

 自分のような子供が軍に入る羽目になったこと。その特務機関が『戦闘訓練』と称して実際には反乱分子の鎮圧を行っていたこと。イオナとベルが漁色家のようにしか見えなかったこと。全ての答えが、そこにはあった。


「お前はまず母親を奪われた。そして今日、父親までもが奪われた」

 貴賓室に響くイオナのその言葉は、ただの事実確認だった。しかし、その声にはカーチャに対して訴えかけるものがあった。

 ――理由は充分だろう?

 イオナは、言外にそう言っていた。

「カーチャ、俺は敢えて言おう。お前に、俺達の【仲間】になって欲しい、と」

 ゆっくりと、こちらをひたと見据えて放たれた言葉を、カーチャは真っ正面から受け止めた。

 これがイオナの言っていた『説得』なのだ、と悟った。

 カーチャは既に一度、ラーズグリーズの仲間としてイオナ達に迎えられている。だが今、イオナが言っている【仲間】とは、さらにその奥にある領域に立つことを示していた。

 そこに立つには、生半可ではない覚悟が必要だった。命を賭け、これまでの全てを捨て、復讐に生きることを誓わねばならなかった。それが出来なければ、待っているのは破滅だけだろう。中途半端な気持ちで望めば、皆の足手まといになることは明白だった。

 怖いなら、自信がないのなら、やめておいた方が良い。イオナのトパーズの如き瞳がそう囁いていた。もしここで首を横に振れば、きっとカーチャはラーズグリーズから離れ、両親を喪った悲しみを呑み込みながら、それでも平穏な暮らしを得ることが出来るだろう。それも一つの生き方だった。少なくとも寿命は全うできるだろう。

 人生における決定的な二択に対して、しかしカーチャは即座に答えを出した。

 迷いは無かった。

 後じさることも、腰を引くことも、躊躇うことも、怖じけつくこともなかった。

「なります」

 強い声で、真っ直ぐに答えた。

 直後、カーチャはかぶりを振った。今の台詞は適切ではなかったため、言い直す。

「いいえ、お願いします。私に、皆さんの力を貸してください」

 毅然と少女は言った。力を貸す、仲間になる――それは主か従かで言うと後者になる。それはカーチャにとっては違う。他人の尻馬に乗るのではない。自らの手で、その意思で、これぞと決めた道を進むのだ。自分こそが、主なのだ。

 カーチャは貴賓室にいる全ての者を見渡した。イオナ、アイリス、ベル、サイラ。それらの背後に立つ、ラケルタとイーヴァ。そして傍に侍るメイドのハンナ。全員が、真剣な表情でカーチャを見つめていた。

 琥珀色の眼差しに決意と覚悟を漲らせて、カーチャは断言した。


「私が、この国を変えてみせます」


 生きながら伝説となる少女の、第一歩だった。






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