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不死賢者の迷宮  作者: 漆之黒褐
第肆章 『魔者の軍団』
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第89話 食事を求めて

 何やら直感が告げている。

 早くしないと取り返しのつかない事になるかもしれないと。



「ちょいと急ぐよ! この階層は寄り道抜きで突っ切るよ!」



 と叫んだ所で、また邪魔者が現れたよ。

 ほんと、良いタイミングで現れてくれるねぇ。

 なので、その竜人鬼(ドラゴニュート)は隊長格全員を突撃させて一気に片付ける。


 ただ、ボス戦を行うとその後は必ず食事タイムになってしまうんだよねぇ。

 やめさせる訳にもいかないし、かといって急ぎたいし。

 なので、ほとんど戦闘にも参加出来ず役にも立てず無駄飯ぐらいになりかけている無職の子鬼(ゴブリン)豚鬼(オーク)犬鬼(コボルト)達を再編成して荷物持ち部隊を作ったよ。

 どうせそのうち真っ先に捨て駒にする予定の奴等だし、荷物運搬係で十分だ。

 どうもこの迷宮の中は大勢では戦いにくい構造になってるので、少しぐらい数が減っても大丈夫そうだよ。


 ついでに私の御輿も作らせて持たせる。

 中央で指揮するのは良いんだけど、石像鬼(ガーゴイル)猿鬼(オロリン)は背が高いから前が見にくいったらありゃしない。

 だから、狙われやすくなる事を覚悟のうえで、アタイの見晴らしをちょっと良くする。

 一部が荷物運搬係というより御輿持ちになってしまったけど、まぁいいよね。

 それにアタイはもともと軽いから、ほとんど苦にはなってない筈だしね。


 さぁアタイのお通りだい!



「進軍しながら交代で食事を取りな。さぁ、出発だ!」



 これまでの食事は倒した敵をその場で食うだけだったけど、これからは荷物運搬係に持たせているものを進みながら順番に食わせていく。

 若干、即戦力が落ちるけどその分時間が短縮できるようになった。

 予定通りこのまま一気にこの階層は突破してしまおうかね。


 第三階層に入って早速敵と遭遇する。

 敵の数は相変わらずだったけど、やはり質はあがってるね。

 これまで余裕綽々だったガーゴイルどもが少し苦しそうだよ。

 でもやる事は変わらない。

 ようやく慣れてきた連携攻撃で敵を次々と屠っていく。


 だがやっぱり被害が出てしまった。

 失われたのはオロリン2匹に栗鼠鬼(リカート)黒犬鬼(ヘルハウンド)が一匹ずつ。

 どうやら敵の中に弓持ちが混じっていたらしく、飛びかかっていった所を弓で狙い撃ちされたみたいだね。

 そろそろ防御も仕込まないといけないねぇ。


 殺された奴等はその後、みんなの血となり肉となる。

 その中には当然、アタイ達が殺した敵だけじゃなくて、敵に殺されてしまった元仲間だった奴等も入っている。

 特にオロリンは食べる所が多いのと肉質が良かったから取り合いになってたねぇ。

 みんなの目の色が変わらないと良いけど。


 とりあえず、非常食は決定してしまった瞬間だったよ。



「みんなきばりな! こんな所でおっちぬんじゃないよ!」



 今度は挟み撃ちを受けた。

 最後尾を守っている半蜥蜴鬼(トカゲもどき)の防御では守り切れそうにもなかったけど、そこは踏ん張ってもらわないといけない。

 まずは前方の敵にいつも通り戦力を投入して壊滅させる。

 代わりに、私の守りに回していたゴブロース、オーグル、コボランを後方への支援へと回す。

 そこには元々鳥鹿鬼(ペリュトン)のペルルギロスと、トカゲもどきのリザルフの二体もいるので、数は少なくとも戦力的には申し分ない。

 どいつもこいつも同じ種族の奴等よりも遙かに高い能力を持っているみたいだしね。


 そして前の敵はガルゴ、オロダロス、リグル、ヘルガスがいる。

 その中で、アタイはリグルに部隊指揮を任せた。

 いつまでもアタイだけが指揮している訳にもいかないからねぇ。

 というかアタイが倒れた場合の時も考えておかないとね。

 少しぐらい戦線を離れても問題ないようにしておけば、アタイの命が助かる確率も高くなるというものだよ。


 と思っていたら、リグルったらその4匹で敵を蹴散らしてしまった。

 しかも即行だよ。

 はぁ……なんのための指揮権なんだろうねぇ。

 敵を倒すのも良いけど、もうちょっと後先の事を考えて欲しかったよ。

 ちょっと急がないと、と考えてたアタイの気持ちが伝わってしまったのかねぇ。


 その点、アタイが直接指揮する後方は全然問題ない。

 トカゲもどきがやられそうになるのをペリュトンどもがうまく助け、更にそのフォローで化け物5匹が奮迅する。

 互いに連携しつつ敵を追い返していく。

 敵を倒すのはちょっと時間がかかるけど、成長を促すには必要な時間だ。

 もっと経験を積んで強くなってもらわないとね。


 それにしても、アタイの部隊には法術が使えるのがアタイしかいないのはどういう事だろうね。

 やっぱり頭の出来が悪いからかい?

 困ったねぇ。


 激しい戦いが終わり、ようやく一息だ。

 んで、少し休んだ後に進んだら、そこはボス部屋だったよ。

 時間優先で進軍しなくて正解だったね。


 ここまで辿り着けたのは89匹。

 この階層で8匹も死んじゃったよ。

 まぁそれが運命だったと諦めようかね。


 現れたのは美人さんだ。

 雄どもの間から喜びの声があがる。

 ま、予想通りだね。

 相手はガルーダレディと呼ばれる化け物だったよ。


 第1第2階層に比べると随分と広いボス部屋の上空で滑空していたそいつが、開幕に早速法術を唱え始める。

 勿論、そんな事をアタイがさせる訳がない。

 雌相手にはちょっと効き目は落ちるけど、元々アタイの持つこの力はかなり強力だからねぇ。

 問題なく詠唱を中断させた。



「アンタたち! 生け捕りにするのも良いけど、手加減なんてものはするんじゃないよ! これは命の奪い合いなんだ。その事をよーく頭の中に叩き込んで、全力で戦いな!」



 部隊の配置を変える。

 空にいる相手だからね。

 前後だけを守っても意味がない。

 だから円上になって一番外を壁役で囲み、格が違う9匹はあちこちに点在させて、どこから攻撃を受けても対処できるようにしておく。


 そして攻撃はやっぱり石ころ。

 いやいやむしろ飛んでる敵だからこそ、この攻撃が有効なんじゃないか。

 上手くヒットさせて飛ぶ能力を奪っちまえば、後は落下の影響でジ・エンド。


 ただこの戦法には問題があってねぇ。

 上に石を投げるもんだから、放物線を描いた後に落ちてくる石でダメージを受けちまう可能性があるんだよ。

 そうならないように、出来る限り広場の中央に向けて、出来るだけ斜めに石を投げさせる。

 そうすれば、石はそのまま中央を横切って壁に当たる事になる。

 跳ね返ってきた石が当たる確率も勿論あるけど、投げてれば自然とどの角度までならば、どの威力までならば大丈夫か分かるようになる。

 真上に投げて落ちてきた石でコブ作るよりかは賢い方法だね。


 敵の高度が高い時は届かないやつも出てくるから力の強い奴だけに石ころを投げさせ、高度が低い時には逆にそれ以外の奴等が投げる。

 法術を使おうとしたらアタイが妨害し、たまにオロダロスをゴブロースとオーグルが二人がかりで投げ付けて空中戦を行わせたり、壁走りをするリグルとヘルガスが牽制の攻撃を仕掛ける。

 そんな攻防が暫く続いた後。

 ようやくガルーダレディは地に沈む事となった。



「さぁ、勝ち鬨をあげな!」



 そう命令すると、第一第二階層の時よりも数段大きな咆吼が響き渡った。

 何故ならガルーダレディはまだ生きているから。


 それからは本当に悲惨な一時だったと言っておくとしようかね。

 アタイとしてはサッサと次の階層に進みたいんだけど、こいつらが暴走したらアタイにはとめられないしね。

 今は滅茶苦茶にされているガルーダレディが早く息絶えて、みんなのお腹の中へと移動するのを待つばかりだよ。


 ほんと、いつになったら終わるのか分かりゃしない。

 この調子だと、きっとまた2戦目もあるんだろうね。

 今度はアタイがしっかりトドメを刺さないとね


 はぁ、やれやれだ。










 カチューシャ達からは少し離れた位置で不気味な微笑みを浮かべていたそれが動くのと、アリエスがそれに攻撃を仕掛けようとしたのは同時だった。



「失礼します」



 しかしその瞬間。

 アリエスの後ろにいた二人が、アリエスに枷をつけて攻撃を妨害した。


 その間に、まだ状況を把握しきれていないカチューシャ達は、足下から忍び寄っていた木の根の形をした何本もの触手に絡まれ、身動きを封じられてしまう。

 吃驚した影響で何本かの武器が俺の身を傷付けたが、今はそんな事を気にしている状況では決してなかった。


 アリエスまでもが触手によって絡め取られ宙吊りにされる。

 しかしアリエスの後ろにいたイリアとウィチア、そして俺は何もされる事はなかった。


 触手に身動きを封じられた女性達は口を塞がれたため悲鳴をあげる事も出来ず。

 全身に絡み付いた触手が身体中を這うのを、身じろぎする程度の抵抗しか彼女達はする事が出来なかった。

 見ている分には楽しいが、やられている方にとってはたまったものではないだろう。


 その時既に、カチューシャ達の後ろにいた謎の存在は触手へと姿を変貌させていた。

 この状況がいったい誰によって引き起こされたのかは、考えるまでもないだろう。



「危ない所だったわね」



 そう言って触手を変貌させ姿を現したのは森の精(アルセイデス)のアレーレ。

 彼女もまた、自力であの牢屋を抜け出す事が出来た者だったという事か。



「助けてあげたんだから、お礼の一つぐらい言っても良いんじゃないかしら?」

「まだ助かったとは限らない。目的はなんだ?」

「あなたが欲しい。ただそれだけよ?」



 触手ではなく身体を俺に絡ませながらアレーレはそう言ってくる。

 その言葉が純粋な欲望からくるものでなければ俺も喜んだのだが、種族としての本能を剥き出しにしている今のアレーレは、間違っても愛というものを連想させる事は出来なかった。

 もし愛だったとしても、随分と重たそうな愛だったとは思うが。



「こんな美味しい獲物、失うには惜しいわ」

「武器は突きつけられていたが、俺はまだ殺されると決まった訳ではなかったんだがな」

「知ってるわよ。でも、私をのけ者にしてあなたを奪い合ってたんだから、私にとっては失うのと同じ事よね?」

「奪い合っていた訳でもなかったと思うんだが……」



 一人を除いて、随分と一方的に酷い事をし続けていたからな。

 その彼女達は今、アレーレの触手によって少しずつだが力を吸い取られている様だった。

 特にアリエスは枷をつけられた事でその消耗は著しい。

 死んでしまう前に何とかして解放してやりたいところだが、さて、アレーレは彼女達を解放する気があるのかどうか。

 最悪、そのまま全員を殺してしまう可能性すらあった。



「そう、あなたにはそう見えたのね。でも私にはそう見えなかったわ。だってあの子達には一人を除いてみんなあなたの臭いがついてたから。でももしあなたが言う通りあの子達が本当にあなたを奪い合っていなかったのだとしたら、ほんと可哀想な子達だと思うわね」

「可哀想なのか?」

「そうよ。だって、自分が欲しいと思っているものがいったいなんなのか気づけないなんて悲しいじゃない? 欲しくもないもののために頑張ってるんだとしたら、それほど可哀想な事はないわ。無駄な努力だもの」

「邪魔者を排除して安全を確保するというのは間違っていない選択肢だとは思うが?」



 完全とは言えないが自由を手に入れたのならば、自分達を捕らえて牢屋に閉じ込めやりたい放題をしていた俺の事を排除しようと思うのは自然に行き着く答えだろう。



「話を聞く限り、別にあなたはあの子達を殺そうとしてた訳じゃないんでしょ? むしろ間違ってこの部屋に入って死んでしまわないようにするための必要な処置だったと私は思うわ。だってその罠の説明を聞いてもすぐに信じられるような内容じゃないんだから。目の前で実際にその罠にかかって死人が出るのを目撃しない限り、きっと私もいつかこの部屋に入ろうとしてたわ。ここが完全な隔離空間というなら尚更ね」



 それは俺も理解出来る。

 実際に例を見せるなどという事も出来る訳がない。



「しかしその罠が解除された今、俺が彼女達にとって邪魔者だというのは変わらない。彼女達に恨まれるような事を俺は何度も行ってきた。殺されても文句は言えない程に」

「そのようね。実際にそれを見てきた訳じゃないけど、私にしてきた事を鑑みてもたぶんその認識はあっていると思うわ。私の場合はそもそも彼女達とは種族が違うから、すぐにそんな気はなくなったけどね」

「ならば、何故彼女達が俺の事を奪い合っていたと?」

「言ったでしょ。あの子達にはあなたの臭いがついてたからって。あなたは雄、あの子達は雌、それだけで十分よ。付け加えるなら、一度とならず何度も身体にその喜びを教え込まされたんだから、いくら表面上では否定していても心の奥底ではもうあなたの虜になってしまってる筈よ。耐性のある私がそうなんだから、耐性がほとんどないあの子達にはさぞ劇毒だったでしょうね」

「種族が違うのだから、そうとは限らないだろうに」

「種族が違っても、同じ雌よ。あの子達、嫌嫌と言いながら実は結構協力的だったんじゃない?」



 そう言われてみれば思い当たる節はある。

 最近は迷宮に設置している宝箱の中身を作ってもらったりもしていた。

 第3階層後半にあるパズルエリアを抜けた先、隠しボスありのボーナス部屋で手に入るシリーズ装備などはその例だろう。


 ファムシェにしても、仲間達との間にある確執を配慮して別室の研究所を用意したあたりからは意外と俺の要望に応えてくれていた。

 勿論、何かと罵詈雑言を並べ立てたり、嫌だ嫌だと言ってはいたがな。



「だとしても、それは打算や暇潰しからくるものだろう。決して本心からという訳ではない」

「それこそ本心からあなたを嫌っていたら、絶対にあなたの得になるような事なんてしないわよ。いくら暇しててもね」



 そうだろうか?

 ……いや、それは俺が実際にそんな境地に至った事がないからかもしれないからか。


 不死賢者レビスが俺にかけた呪いにしても、よくよく考えればほとんどまだ実害がないから何が何でも解こうという思いを俺は持っていない。

 むしろ使い方次第では十分な利益をもたらしている。

 本気でレビスを憎いと思っていないからこそ、この隔離空間という世界の中で――レビスの掌の上でダラダラと踊っていられる。


 憎んでいれば――さて、今頃は何をしていたのだろうな。

 とっくにクリア条件を達成して、再び姿を現したレビスに一矢報いろうと何かを仕掛けたのだろうか?

 その場合、間違いなく返り討ちにあって、今頃不死者としての第二の人生をスタートしていた可能性が高いわけだが。



「とりあえず、その話は置いておこう。彼女達の本心などただの推測の域にしか出ない。それよりも幾つか聞きたい事がある。要望もある」

「先に要望を聞いてあげる。叶えるかどうかは別としてね」

「要望は三つ。まず、彼女達は絶対に殺すな」

「叶えてあげる。でも、今まで通り自由は奪わせてもらうわね。他の二つは?」

「それを言う前に、アリエスだけは一度解放してくれ。アレーレが力を吸い取らなくても、あの枷をつけたままだとあいつはそのうち死んでしまう」

「あら、そうなの。そういえばちょっとあの子の体温だけかなり高くなってるわね。でも大丈夫かしら? たぶんあの子、あの枷を外したらすぐにでも私なんて簡単に殺してしまえるんだけど」



 やはり問題はそこか。



「それでしたら恐らく大丈夫かと思います。お腹を空かせた状態で牢に入れておけば、力不足で牢を脱する事は出来なくなる筈です」



 それまで黙したままだったイリアが口を開く。

 偽イリアと偽ウィチア事件の御陰で彼女が本物かどうかまだ半信半疑だったが、もしこのイリアがアレーレが作りだした偽物だったとしたら……。



「根拠がないわね」

「それを言いますと、アレーレ様が今のアリエス様よりも弱いというのも根拠がありません」

「そうね。でも間違えないでね? 今は私が主導権を握っているの。私が怖いと思ったり嫌だと思ったらそれが全てなのよ」



 このやりとりは自作自演となる。

 つまり、アレーレはどうしてもアリエスを生かしておくつもりはないという事になる。


 だが俺はアリエスに死んで欲しくない。

 星の聖者という言葉がアリエスの口から出てきた事も勿論その理由の一つだが、それ以前に俺は目の前で人が死ぬのを見たくない。

 そこだけは何故かずっと俺の中にあり続けた。


 きっとまだ、あの4人の死が尾を引いているのだろう。


 ペットな幼女と一緒に捕らえられた少女。

 ポニー達と一緒に捕らえられた少女達。


 今でも彼女達が死んでしまった理由が何であったのかを俺は知らない。

 状況的には俺が無理をさせすぎて殺してしまったとも言えるのだが、そんなもので納得出来る訳が無かった。

 何故なら、それ以外の者達はこうして生きているのだから。


 それかもしくは、以前は死というものが程遠い世界で生きていたからなのか。

 単純な価値観からくる理由。

 今でも時々思い浮かんでくる謎の知識。

 目の前で人が死ぬ現実は受け入れられないが、目の前でなければいくら人が死のうが他人事として何とも思わない、そんな当たり前の様で酷く歪な価値観。


 どちらにしても、アリエスの命を救うにはどうにかしてアリエスとアレーレの両方を説得するか、アリエスの力を封じる必要があった。

 しかしアレーレの説得はまだしも、アリエスの説得は何となく自信が持てない。

 分かりましたと言った後ですぐに心変わりして、アレーレを何事もなかったかのように燃やしてしまいそうなそんな気がした。

 偏見かも知れないが。

 何となくそうなってしまいそうな気がしてならない


 もしかしたらアレーレもそう感じ取っているのかもしれない。



「えっと……一つ、宜しいでしょうか?」



 今度はウィチアが発言する。

 ウィチアもアリエスが死んで欲しくないと思ってくれているのだろう。



「そもそも、何でアリエスちゃんは今頃になって牢を出てきたのか、お二人は御存知でしょうか?」

「御存知じゃないわ。私もあの子の御陰であの部屋から出る事が出来た身だからね」



 自力脱出じゃなかったのか。

 ならば、アレーレの動きを封じるには牢に戻せば良いだけという事になる。

 勿論アレーレ自身もその事は理解しているため、そんなことはさせないように動くと思うが。



「ウィチアはその理由を知っているのか?」

「知っているというよりも、何となくそうなんじゃないかな~と思っているだけなんですけどね。でもたぶんそれが正解だと私は思ってます」

「あら、そうなの。でもそれがいったい何の関係があるというのかしら?」

「大ありだと思います」

「先にその根拠を聞かせてもらえる?」

「ハーモニー様達にとっても死活問題です」



 そう断言して、ウィチアはその理由を口にした。



「食料が底を尽きました」

2014.02.16校正

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