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不死賢者の迷宮  作者: 漆之黒褐
第肆章 『魔者の軍団』
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第82話 見えにくいもの

 また随分と時間を浪費してしまったが、森の精(アルセイデス)の住処改造計画はそれなりに順調に進んでいた。



「まず、腐った死体(アドルゾンビ)骨戦士(ボーンソルジャー)だと、瘴気濃度の差はほとんど見られなかったのはイリアも知っての通りだ」



 俺の言葉にイリアが頷く。

 実際にこの実験の進行状況を確認していたのはイリアなので、わざわざ確認するまでもない事である。

 その間、俺がいったい何をしていかと言えば、基本的に一択しかない。



「ほとんど差がなかったという事は、一応は差があったという事ですよね。どちらの魔者の方がより瘴気濃度をあげたんですか?」

「アドルゾンビの方だ。ただ、実験中にボーンソルジャーの方では4階層から死魂の精霊(ウトゥック)が散歩で通り掛かっていたみたいなので、正確という訳ではない。何度か同じ事をすれば、もしかしたら逆の可能性もある。ただ、ほとんど誤差の範囲内だろうな」

「他の魔者が一時的に近づいていたというのであれば、むしろボーンソルジャーの方は一時的に瘴気が濃くなりやすくなっていたと思うのですが。それでもアドルゾンビの方に沸いた水溶の粘体生物(アクアンスライム)の数が多いのですから、疑う余地はないと思います」



 そう発言したのはウィチアだった。

 今まで迷宮の方にはほとんど興味を向けなかったウィチアだが、どうやら本当に自身の存在意義に疑問を持ち始めたようで、開拓と称してイリアの仕事を少しずつ奪おうとしているらしい。


 というか、基本イリアは仕事をしているというよりも趣味に走っている事が多いと俺は思っている。

 迷宮の中で気絶した者達を値踏みし、俺の眼鏡に適いそうな者であれば牢屋までさらってくる。

 その際に身体を綺麗にした上で身包みを剥ぎ、下着と肌着だけの姿にする。

 後の仕事は宝物庫の管理と牢屋の見回りぐらいだろうか。

 つまり、ほとんど仕事はない。

 迷宮画面を見ているのは、実は暇を潰しているだけだと俺は最近になって気が付いた。

 何故なら、エルフ達が大樹カーランの加護を失った後、カチューシャが裁縫のエキスパートという事を知ると、せっせと趣味に走り始めたからだ。


 それからは俺の方から迷宮画面を見ていて欲しいと頼まない限り、イリアは迷宮画面にはほとんど目を向けなくなった。

 以前よりちょこちょこと服装を弄ってたまに俺の目を少しばかり楽しませていたので俺も薄々感付いていたが、どうやらそれが本格的になった様だった。

 まぁ、別に良いのだが。


 なので、ここぞとばかりにウィチアが迷宮管理の方面で仕事を求めてきたのは、実は俺にとってもイリアにとっても喜ぶべき事だったりする。

 イリアはこの前"聞き捨てならない"とか言っていたが、それは単なる思わせぶりに言ってみただけの言葉であり、実はそこに深い意味はなかった。

 何というか、元々イリアは少しお茶目だったのが、悪戯好きのピクシー達に感化されて悪い方面に芽吹いてしまったという訳である。


 それはそれとして、少しばかり真剣な目をして話を聞くウィチアなのだが。

 その膝や肩や頭の上でピクシー達も同じ様に真剣な目をしてうんうんと頷いているのは、どうにかならないものだろうか。

 どう考えても、ピクシー達は本気とは思えない。

 ただウィチアの雰囲気を真似して遊んでいるだけとしか俺には思えなかった。


 とりあえず、いつも通り無視しておくとしようか。



「普通に考えれば確かにそうだな。同じD級の不死眷属魔者でもアドルゾンビの方が周囲の瘴気濃度をあげやすいという事になる。だが、結論を出すには早すぎると俺は考えている」

「それは何故ですか?」

「色々理由はあるが、一番はやはりまだ一回しかデータを取っていないという事だな。不確定要素がいったいどれだけあるのか分からないのに、一回目のデータだけで決めつけてしまうと、後々の検証に支障を出しかねない」

「では、最初から同種の魔者だけで実験すればよかったんじゃ……」

「その辺は後回しだ。今回の目的は別にあるからな」

「あ、そうでしたね。アレーレさん達の居住区を快適にするのが当初の目的でしたね」



 実際には快適化は通過点の一つであって、快適化する事によりアルセイデスの安定生成と能力底上げを行い、ファーヴニル迷宮攻略への足がかりにしようという訳なのだが。

 そう言えばその辺はまだウィチアには説明していなかった事を思い出す。

 となると、もしかするとウィチアはまた俺が娯楽環境の拡大を図っているとでも思っている可能性が高いな。

 そのうちそれとなく誤解をといておくとしよう。

――まぁ、それも実は間違いではないのだが。



「この実験では、瘴気を嫌うアレーレ達のために、出来る限り瘴気を増加させない魔者の選定と、発生時により多くの瘴気を消耗する魔者の選定を目的としている。前者でいえば、今回の実験で不死者は間違いなく不的確だと言える事は分かった」

「つまり、他に二者に比べて、不死者は圧倒的に瘴気の増加傾向が高かったんですね?」

「そういう事だ。明らかに誤差の範囲内では収まらない実験結果が出た」

「でもまだ一回しかデータを取っていないのに、それで決めつけて良いんですか?」

「決めつけるというよりは、そう仮定して実験を続けると言った所だ。一応、何度かは並行的に実験を行い、その辺も少しずつデータを取っていくつもりだしな。例えば、次の実験には引き続きボーンソルジャーは使用するとかな」



 欲を言えば、同じ状況をまた造りたい訳なのだが、それは残念ながら叶わない。

 迷宮内の瘴気濃度は常に変化し続けている。

 実験に使用した部屋も、前回と同じ瘴気濃度からスタートできる訳ではない。

 それどころか、一回目の実験時でも4隅の部屋の瘴気濃度は間違いなく最初から初期値が異なっている。

 同条件という前提条件がまず作り出せないのだから、実験で得られるデータというのも回数を重ねて不確定要素を少しずつ排除していかないとただのランダム数値にしかならない。


 例えば、今回の実験。

 もし最初から実験に使用した部屋が、たまたま不死者がいる部屋の方が瘴気が非常に濃かったとしたら。

 また、アクアンスライムも実は数が集まると比例もしくは指数関数的に瘴気濃度を増加させる傾向を持っていたとしたら。

 ……指数関数的には無いと思うが。

 初期の時点で不死者側のアクアンスライムは数を増やしてしまい、その数が増えた分だけどんどん瘴気を濃くしてまた発生しやすくなるという状況が生まれてしまう。

 つまり、前提条件の差で勝手にアクアンスライムは増えてしまい、不死者は瘴気濃度を濃くしやすいという結果を出してしまう訳である。

 これでは本当に不死者が関係しているのかは分からない。


 まぁ、一応その辺の問題も踏まえて、単位時間辺りの増加量もイリアに確認させていた。

 そのデータを見る限りは、不死者はやはり瘴気濃度を濃くしやすい様だった。

 今回の件で言えば、4階層に魔者発生ポイントを大量に設置して瘴気を消費しやすくしてある事もあって、あまり現状では深くは追求しない事とする。


 但し、それもあくまで気休めである。

 少し考えれば結果を変えてしまう要因には事欠かない。

 容積問題だとか、暦や時間の関係だとか、何をして過ごしていたかとか。


 アドルゾンビとボーンソルジャーの個体数を同じにしても、単体辺りの密度や容積は異なるので、それが関係している場合。


 日々、属性の強さは変化するため、種族によって異なる属性との相性でも結果は変わってくる可能性がある。

 【闇】属性の力が強くなる《闇月》や、各週で訪れる《闇源日》ならば、不死者の力は随分と強化されると思うのだが、もしアドルゾンビが【地】属性種族でボーンソルジャーが他属性種族ならば、【地】属性が強くなる日はアドルゾンビが有利となる。


 時間帯もそうだろう。

 不死者は夜を好む訳なのだが、完全に同じ時間帯を好むとは限らない。

 日が沈む時間帯全てを好む種や、丑三つ時が最も力が強くなる種もある気がする。


 そして何より、魔者達は実験時間中に何をして過ごしていたのかも関係してくる。

 何もしないとかゴツゴツとぶつかっているだけならまだいいが、殺し合いや共食いをしていたりすると瘴気濃度も大きく変動しやすい可能性がある。

 子鬼(ゴブリン)に至っては、明らかに生殖行為をしていた気がするので、その影響は計り知れないだろう……というか計りたくないし詳しく知りたくもない。

 性別は確認していないが、もし鎮めるために同性同士で行っていたのだと考えると……。


 危険なので、これ以上の思考はシャットアウトする。



「今回の実験結果で言えば、不死物質魔者の黒い影(ブラックシャドウ)の隣の部屋にいたアクアンスライムが最も少なかった」

「元々ブラックシャドウは生命体ではありませんので、その結果は頷けるかもしれません。ほとんど魔素と瘴気が混ざり合って固まったような存在ですので」



 魔素というのは、簡単に言えば【魔】属性の(かす)みたいなものである。

 魔法を使う場合には必ず【魔】属性と魔力を使用するのだが、それは100%完全燃焼する訳ではない。

 ほんの些細な量ではあるが、どうしても無駄な部分は発生してしまう。

 それ以前に、魔法というのは【魔】属性を他の属性と混ぜ合わせて不純化し、人の力でも制御出来るレベルにまで威力を落として使用しやすくしているものなので、どうしても多くのムラが出来てしまう。

 そのムラの一部が魔素として滞留する、そんな感じらしい。


 但し、それらの情報は単なる推論に過ぎず、実際に魔素を感じる事は出来ない。

 案外、別次元に存在するエネルギーと化しているとか、重力子の様な理論上の存在なのかもしれないが、まぁそんな訳の分からないレベルの話は今はどうでも良いだろう。



「少々早計かもしれないが、その実験結果と俺の予想を元に、5階層にも少しテコ入れをしてみた。その結果かどうかは分からないが、アレーレ達は随分と住みやすくなったとは言っていたな」



 尚、迷宮にいる魔者ならば、牢屋に連れてきた後でも迷宮に返す事が出来るらしかった。

 牢屋に連れてくる時もイリアを交渉役に遣わしたらアッサリ牢屋に連れてくる事が出来たし、魂云々の制約はどうやら侵入者達のみに限定するらしい。

 別の言い方をすれば、魔者以外の存在に限定すると言った所か。



「具体的には何をしたんですか?」

「アレーレ達の住処の周りに不死物質魔者のブラックシャドウと人型物質魔者の偽装人形体(ガデュアズ)の発生ポイントを点在させ、尚かつ偽擬草(ミミクリーグラス)を生い茂らせた」

「ブラックシャドウとガデュアズは分かりますが、ミミクリーグラスを植えたのは何故ですか?」

「光合成の代わりに瘴気を吸収して栄養としている可能性があったからな。アレーレ達は自分達が住みやすい場所に変えるため自然に微量の瘴気を吸収して浄化し続けているみたいだから、そういう可能性もあるかと考えてだ」

「結果はどうたったんですか?」

「今の所、問題はないらしい。美味しい獲物となる存在が周りにまるでいないのでアレーレ達はまだまだ不満そうだが、ミミクリーグラスは養分の代わりに出来るので生きるだけならばそれほど困らなくなったとか」

「瘴気吸収の話は兎も角として、ミミクリーグラスを植えた効果はあったという訳ですね」

「勿論、その辺も予想の範囲にあった訳だがな。偏食になるので他の種類も欲しいという要望があがってきたぐらいなので、ほぼ当たりと考えて良いだろう」

「そういうものですか」



 魔者が魔者を喰うという図式には別に思う所はない。

 ゴブリンと豚鬼(オーク)の仲が悪く、良く縄張り争いみたいな感じで小競り合いをしているのは珍しくないし、彼等はウォーラビットも好んで捕食している。

 時には数の暴力でクロウタートルやフライワームなども狩って食料としているので、同じ魔者に部類されていようが相手がちょっと強かろうがお構いなしだ。

 迷宮の中だからといって無条件で全員味方だというような事はない。


 迷宮バランスは、初期に比べて随分と複雑になったものである。



「ふと思ったんですけど、そのままだとブラックシャドウとガデュアズの数が増えすぎてしまいませんか?」

「ファーヴニルの迷宮に投げ込めば良い」

「あまり解決になっていない気がするんですけど……」



 まぁ、そうだな。

 4階層に設置しすぎた魔者発生ポイントからも続々と魔者達が現れているので、すぐに飽和し始めるだろう。



「その辺のバランス調整が、実はまだ済んでいない」

「いっそキュププちゃん達に定期的に掃除して貰いますか?」

「キュププ!」



 心得たり、というような勇ましいポーズをピクシーの一匹が取っているが、さてそのポーズはいったいどこで覚えたのやら。

 まんま敬礼だった。



「迷宮内で魔者が倒されると、魔者発生時に消費した量よりも多い量の瘴気が撒き散らされるので却下だ」

「でもその濃くなった瘴気の分、上位の魔者が発生しやすくなりませんか?」



 おっと、そういう考え方も出来たか。



「……ダメだな。アレーレ達の住処にも影響が出そうなので、安易にはその策は実行出来ない」

「そうなると、いつか飽和して迷宮の外に放り出すという事になりますけど……」

「流石に三度目の大遠征は回避したい。折角、迷宮の外に建物が出来たんだ。俺としてはそのまま迷宮街なり迷宮都市にでもなってくれると嬉しい。その可能性を潰したくない」



 そこに至るまでに後何年かかるか分かったものじゃないがな。


 データ収集に協力してくれるというウィチアを部屋に残して、俺は再びイリアにアレーレを連れてくるように指示する。

 アレーレがやってくるまでの間、暴飲暴食を繰り返す例の少女の様子を牢屋の外から眺めて観察する。


 少女の腕には他の者達同様に力を奪う枷が付けられている。

 法術も封じているので、普通に考えたら少女は無力である。

 だが、俺は易々と投げられ、体重を乗せた関節技を極められ、あっという間に昇天させられた。


 元々俺自身には大した戦闘能力はないので、技で攻めてこられればそういう事が起こるだろう事は想定していたので、それほど俺はショックを受けていない。

 むしろ何故殺されなかったのかを俺は不思議に思っていた。


 その少女が食べ物には目が無いという事は見ての通り分かる。

 だが、この捕らえられているという状況下で組み伏せた相手を放っておいて食事に没頭するというのは、普通に考えれば悪手でしかない。

 いくら俺が気絶したとはいえ、他に仲間がいる可能性ぐらいは考慮してしかるべき事だろう。



「ハーモニー様、アレーレ嬢をお連れ致しました」

「そうか。というか、なんでアレーレ嬢なんだ?」

「それは見て頂ければ納得して頂けるかと」

「そうか……」



 納得は出来ても、あまり理解は出来ないだろう。

 俺と会うためだけで、何故そんなコスプレをさせる必要があったのか、と……。

 ちゃん付けではなかったので、バニー装束ではない事は確かだろう。


 それはそれとして。



「あいつの胃袋は底なしか? いったいいつまで食べ続けるつもりだろうな」

「部屋の中にある食料を全て平らげるまででしょう」

「あの量をか……」

「一応、ハーモニー様に指示されました通りに、死なない程度に食料を与えた結果となっています」

「どう見ても常人にとっては致死量なんだがな」

「私もそう思います」



 少女の身の丈の倍以上も山と積まれた食料が刻一刻と減っていく様子は、見ているだけで気分が悪くなりそうな光景だった。

 食欲が急激に減っていく。

 この光景を利用すればダイエットも夢ではないだろう。

 まぁ、俺は毎日激しい運動をしているので、その必要はないのだが。



「ですが、どうやら彼女は特異体質の様でして」

「そりゃまあ、あれはどう見ても特異体質だろう」



 あれで普通の体質だと言われても俺は絶対に納得しない。



「彼女は生きているだけで大量のエネルギーを消費し続けるそうです。その代わり、常人とは比べようもない程の力を生まれ付き持っているそうです」

「まぁ、そうだろうな。あれだけ食べて何にも消費されないのでは、逆に食われた食料が可哀想だ」

「ちなみに、今現在彼女は枷を破るために常に大量のエネルギーを消費しているようです。それも、本人の意志とは関係なく」

「……つまり、枷を付けている限り、あいつは常に空腹感を感じて無限に食い続けるという事か」

「そういう事になります」



 人工ブラックホール状態か……。

 食べた物をエネルギーに変えて常に消費し続けているのは分かるが、エネルギーを搾り取り尽くされた後に残る大量の残り滓は、いったい何処に消えているんだろうな。

 まさか質量そのものを全てエネルギーに変換している訳でもあるまい。

 胃腸の中で超圧縮しているならば、本当にブラックホールだな。



「あれは、生きるために必要な行為となっているのか」

「ただ、ハーモニー様は気が付きましたでしょうか? 徐々に彼女の顔から生気が消えています」

「体力的な問題か?」

「どちらかというと、消費するエネルギーに対して必至に摂取している食べ物の量が少ないのだと思います」

「食べる速度よりも消費速度が上回っているのか」

「はい。ですので、近い内に彼女は力尽きると思われます」

「予想では?」

「もう間もなくかと」

「おい!」



 そう言っている間に、少女の動きが明らかにゆっくりとなっていた。

 口は必至に食べ物を噛み砕いて大量の水と共に無理矢理喉の奥へと押し流しているのだが、食料と水を運ぶ両腕にまるで力が感じられない。

 目にはまだ生きようとする力強さが感じられるのだが、どうにも限界点はすぐ側にやってきているような感じだった。



「そのまま見殺しに致しますか?」

「イリア、それは俺の解答を分かっていて聞いてるのか? それとも、警告をしているのか?」

「両方です。ハーモニー様が彼女を助けようと動くのを私は止めるつもりはありません。ですがご理解下さい。あの枷を外した瞬間、ハーモニー様は殺される可能性があります。単純な力だけで身を引き裂かれる事になるのか、それとも無詠唱法術で全身を一瞬で炭にされてしまうのか。どちらにしても、問答無用で殺される可能性は高いと私は考えています。そのリスクを踏まえた上で、やはりハーモニー様は彼女の命を助けようと動くのでしょうか?」



 その危険を生々しく示唆した上で、イリアは止めないと言う。

 これがウィチアならば普通に止めただろう。

 イリアの真意がいったい何処にあるのか俺は一瞬悩む。

 その間にも、牢屋の中で必至に足掻く少女の命は刻一刻と目減りしていた。



「両方だと言いながら、明らかに俺の解答にまだ疑問を持っているといった質問の仕方だな。俺の答えは肯定だ」

「殺されると分かっていてもですか?」

「あいつは俺を殺さないと思ったからだ」

「その根拠は何でしょう?」

「俺が生きていたら、教えてやろう」



 そう言って、俺は死地へと赴いた。

2014.02.15校正

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