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不死賢者の迷宮  作者: 漆之黒褐
第肆章 『魔者の軍団』
83/115

第78話 思惑

 迷宮侵略戦争が始まってから、三日が経過した。


 その間、ファーヴニルは送り込んだ部隊が全滅すると、すぐに追加の部隊を派遣するという事を繰り返している。

 ただ、俺の迷宮は第1階層後半で巨大迷路、第2階層前半で妖八陣、中盤で石兵八陣という連続した難関迷宮が存在するため、地図を持たないファーヴニルの部隊が突破するのはかなり時間を要する。

 その迷子になっている間に食料が尽きてしまい飢えて共食いを始めたり、弱っている所に運悪く正規の侵入者達と遭遇してしまい討伐されるという事が何度も起こった。


 それでも運の良い部隊は迷う事なく正解の道を引き当て奥に進む訳なのだが、何故か彼等は第2階層後半にある隠し通路の奥にいるピクシー達の花畑に吸い寄せられ、そこで待ち受けていたピクシー達の一斉攻撃によってサクッと一網打尽にされてしまう。

 どうやらピクシー達自身が自ら敵を誘い込み、葬っているらしかった。

 また点数稼ぎにシフトしたのだろうか?

 ピクシー達の気持ちは気まぐれでよく分からない。

 まぁ、以前の点数稼ぎよりもハッキリと俺にメリットがあるので、折を見てピクシー発生地点を復活させてやってもいいか。


 などと思い始めている今日この頃。



「ちょっと聞いてるのブラックス? 折角、私がまた良い案を考えたっていうのに、真面目に聞きなさいよ」

「ん? ああ、すまん。それで何だったか?」

「やっぱり聞いてなかったのね! ああもう、先に一度しか説明しないからって言ったじゃない! 何で聞いてないのよ!」

「いや、この後の相手は誰にしようかと思ってな。立候補するか?」

「する訳ないじゃない! 誰が好き好んであんたの相手をしなきゃなんないのよ! はぁ……なんで私、こんなイカれた色欲魔の手伝いなんてしてるんだろ。人生どこで間違ったのかなぁ」



 と言って項垂(うなだ)れているのは、実はファムシェである。

 ルリアルヴァきっての天才少女と名高い少女は、エルフに堕ちた後、暫くの間は俺と全く口を聞いてくれなかった。

 その間も俺は色々と好き勝手にファムシェを弄って遊んでいたのだが、この前の件で遂に我慢の限界を越えたらしく。

 長年殻の中へと閉じ込めていた人格を破り、今ではご覧の通りの刺々しい人格へとファムシェは変貌していた。



「好きな事が出来て、とても良い人生じゃないか」

「どこがよっ!」



 まるで高慢ちきな貴族のお嬢様の様な口調。

 スカイブルーのロングヘアーにエルフという種族にはまるで似合わない言葉遣いだった。


 いや……エルフという種族自体は高貴な存在なので、別に間違ってはいないのか。

 これで金髪ツインテールだとか貧乳だとかのステータスがあれば、かなりポイントが高かったのだが。

 いや、これは俺個人の趣味だな。

 スカイブルーのロングヘアーでも、もう少し成長すれば十分に見栄えが良くなるだろう。

 ……だがそうなると、高笑い属性が増えそうでちょっと怖い。



「いいこと? この天才の私が無能なあんたに知恵を貸してあげてるんだから、今度こそちゃんと使いなさいよね」

「善処する」

「使えって言ってるのよ! 善処なんていらないの! つ・か・い・な・さ・い!」



 これはこれで弄り甲斐があって楽しい訳だが。

 そういえば跳ねっ返り娘はまだ出会った事がなかったな。

 やはり堕として正解だったか。



「あんたの話を聞く限り、そのファーヴニルっていう奴は、まずあんたの反応を見てるだけね。全然本気じゃないわ」

「どう本気じゃないんだ?」

「無駄に部隊を送り込んで散らしてるだけじゃない。馬鹿の一つ覚えみたいに、蜥蜴鬼(リザードマン)翼人鬼(ハルピュイア)ばかり交互に送り込み続けるなんて、遊んでいるとしか思えないわよ」



 この迷宮造り自体、ほとんどお遊びなんだがな。

 レビスには何らかの思惑があるのだろうが、俺やファーヴニルにはまるで関係がない。

 せいぜいが、ファムシェの様な可愛い女の子を次々と捕らえて、楽しみを増やす事ぐらいだ。


 それに、レビスの出す条件をクリアしたからといって、解放されるとも限らない。

 むしろある程度自由に外へと出れるファーヴニルが未だに迷宮遊びをしているぐらいなので、この呪縛から完全に逃れる事は恐らく出来ないだろう。



「まずは侵略値をあげて、俺の迷宮の見通しを良くしてからと考えてるんじゃないのか?」

「それは、あんたの場合ならの話ね。たった5階層までしかないひよっこの迷宮を攻略するのに、そんな手間の掛かる事しても仕方ないわよ」



 レベルは上がったが、まだ新階層は作っていないので俺の迷宮は5階層どまり。

 第4階層にすらまだ誰も足を踏み入れていないので、新しい階層を作ってもほとんど意味はないだろう。

 ファーヴニルの部隊も、第2階層どまりだしな。



「そのひよっこの迷宮に捕まった本人が、今俺の目の前にいる訳なんだがな」

「う……あれは事故よ。あのやたら年だけ取った無能女が全て悪いのよ!」

「元は御前達の族長だろうに」

「平和ボケした森の中ならば、良いお飾りだったんだけどね」



 その平和ボケした世界に住んでいたルリアルヴァ達だが、実はかなりやばい事になっている可能性があるらしい。

 長であるカチューシャがエルフへと堕ちてしまったので、大樹カーランがルリアルヴァという種族を見放して、森の中に残っているルリアルヴァ達を結界の外へと放り出している可能性があるとファムシェは考えていた。


 森を出る前にカチューシャが行った継承の儀式はどうしたんだと聞くと、無能なカチューシャがそんな儀式を滞りなく出来ている訳がないと言う。

 どうもカチューシャは、本来は多くの者達に見守られながら継承相手と共に行われるその儀式を、こっそりと一人だけで行ったらしい。

 相手もおらず、第三者によって正しく儀式を終えた事を確認される事もなく、それが無事に成功したと思える程ファムシェはカチューシャの能力を信用していない。

 いや、むしろ失敗を確信出来る程、カチューシャの能力を悪い意味で信用していた。


 もしカチューシャの身に何かあった場合に、新しく選定した次代の長候補へとルリアルヴァの長の座を譲るという継承の儀式。

 その何かあった場合というのは、ファムシェは命を落とした場合、と考えていた。

 また、その候補は何人か選べるのだが、その一番上に既に亡くなったターチェユの夫を指名していたらしいという事を会話と態度の端々から推測しており、ファムシェに言わせれば男を選ぶという事自体、そもそも正気を疑う様な人選とのこと。


 そして最も有力な理由が、髪の色だろう。

 ターチェユもリトゥーネもファムシェ自身も、大樹カーランの加護を失っても髪の色は薄くなるだけで、劇的に色が変わる様な事はなかった。

 なのに、長であるカチューシャが加護を失うと、一斉に全員が大樹カーランの加護を失い、髪の色が変化してしまった。

 これには流石の天才少女も驚いたらしい。

 人形っぽくなってたのは、それが理由だった。



「実は族長の座を狙っていたのか?」

「いいえ。私はいずれ森を出るつもりだったから、全く興味なかったわ。それよりも、どうやれば結界の外に出られるのかを考えるのに忙しかったし」

「外に出たいと言えばいい」

「ふん、そんな簡単に外に出してくれれば苦労はしないわ。少なくとも、自分の力で外に出られるぐらいまで力をつけないと、今回の様な例外以外では外に出る事は絶対に許されないし、出来ない。ターチェユ姉様ぐらいなものよ、勝手に森の外に出られるのは」

「ターチェユは特別なのか」

「というよりも、ターチェユ姉様の方が圧倒的に力が上なだけ。あの無能女はただ年上なだけで、修行して力を付けようとか勉強して学を身に付けようとかいうのはまるでしなかったみたいだから。あ、ターチェユ姉様の事が好きだったから、炊事や洗濯、裁縫とかは出来たわね」

「嫁入り修行だけはきちんとしていた訳か」

「それでもターチェユ姉様の方が上手だけどね」



 確かに、見た目からでもターチェユは万能感に溢れている。

 それが本当なら、大樹カーランの加護を失う前はさぞ信頼も厚かっただろう。

 にも関わらず、加護を失うと一転して皆が忌避にする様になった。

 それほどまでに加護の力というのは、ルリアルヴァの民にとって重要な位置付けにあったという事か。



「ターチェユ姉様は元気?」

「最近は手の掛かる子供が増えたから、少し疲れ気味だな。女の子なのにヤンチャなのが多くて困る」

「子供? フォーチュラだけじゃないの? ……って、ちょっと! まさかあんた!?」

「早とちりするな。迷宮で子供を4人拾ったため、仕方なくターチェユに預けてるだけだ」

「そ、そう……ったく、驚かせないでよ」



 尚、子鬼(ゴブリン)が人に産ませた4人の女の子達は、あれから更にすくすくと成長して、4人とも俺の胸あたりぐらいまでに身長を伸ばしている。

 流石に背が少し小さめのゴブリンの血を引いているからか、それ以上は背が伸びないようだった。

 懸念していた肌の色も、薄い緑のままで濃くなる様子もない。

 顔はまだまだ幼いが、ハッキリと可愛いと言える相貌を彼女達は持ち合わせていた。

 少しだけ勇ましさが滲み出ていたが、ゴブリンの醜さが受け継がれていないだけでも良かったと言えるだろう。



「話を戻すわよ。あまり脱線させないでね。私も暇じゃないんだから」

「善処する」

「だから、そんな曖昧な言葉で流すなって言ってるでしょ!!」



 うむ、また脱線したな。

 ついでに頭を撫で撫でしてもう一噛みさせておくとしよう。



「……ファーヴニルが本気じゃない理由は、もう一つ。送り込んだ魔者達を撤退させて情報を得ようとしていない事。偵察でも調査でも何でも良いけど、ファーヴニルはあんたよりも遙かに経験を積んでいるんだから、ただ駒を送り込んで全滅するまで様子を見るだけじゃなく、途中で引き返させて情報を聞くという事ぐらいすぐに思い付くはずよ。というか、本来戦争というのは、詳細な地形をリアルタイムで見る事も、相手の位置もただ突っ立ってれば見える訳ないから、逐一斥候を出して調査するしかないんだから。あんただってそれぐらいは当然してるでしょう?」



 残念、効果がなかった。

 流石は天才、こちらの意図に気が付いてしまっていたか。


 あと、ファムシェの質問に対しては、明後日の方向を向く事で解答とする。



「あんた、馬鹿~?」

「冗談だ。本当は、俺の場合は斥候を出しても意味がないだけだ」

「なんでよ。指揮官には、迷宮で捕らえた魔者も任命出来るんでしょ? ここでしっかり意思疎通すれば良いじゃない」

「それはゴブリンとかか? それとも豚鬼(オーク)犬鬼(コボルト)とかか?」

「もうちょっとマシな魔者いるんでしょ? 例えば自然精霊(ニンフ)の類とかいっぱいいそうよね。木の精(ドライアド)とか水の精(ヒアデス)とか。あんたの迷宮にはお似合いだわ」



 余談だが、ニンフは皆が皆綺麗な女性の姿をして、よく人をたぶらかして精を吸い取るという。

 自然版のサキュバスといったものらしかった。

 勿論、強さはまるで比較にならないが。



「なるほど。次に作る予定の階層からは、そのニンフを階層に配置する魔者の最有力候補としてあげておくとしよう」

「あら、別に無理しなくても良いのよ?」

「問題ない。次の6~10階層は、御前が最初から最後まで造る予定だからな。そこに大量のニンフが紛れ込んだとしても何も問題ない」

「問題ありまくりじゃない! この際、私が造るのは置いといて、最初から最後まで私が造ると決めてるのに、何でその後に変なものをばらまくのよ! ほとんど私に対する嫌がらせじゃない!」

「だからこうして、先にその事を打ち明けている。天才と名高い幼女のファムシェちゃんなら、ニンフを最後にばらまかれる事も計算した上で迷宮を造れるだろう?」

「幼女言うな! あと、ちゃん付けも禁止!」

「やれやれ、我が儘の多いお嬢様だ。ほんと、手の掛かる」

「あーもう! あーもう! あーもう! あーーーーもうっ!! あんた、とってもむかつく!」



 そうは言っても、俺の膝の上で頭を撫で撫でされるのは拒否しないファムシェであった。

 まぁ、無理矢理力尽くで膝の上に乗せている訳だがな。

 首や手首などに取り付けられた枷の効力で力を奪われているため、どうやった所でそこから逃れる事は出来ないと分かっているので、最初からもう諦めているのだろう。



「嫌よ嫌よも好きのうち、か」

「そんな訳ないでしょっ! ああもう、また脱線した。どうしてあんたと話してたらすぐに話がそれるかなぁ」

「そういう事を言ってるからだ。律儀に応じず、気にせず無視して話を続ければ良いだろうに」

「そうする。ところで、迷宮で拾った子供達って私にも会わせて貰える?」

「御前が脱線させてどうする」

「……そうだったわね。ファーヴニルの件だけど、防衛に関しては暫くこのままで、別に警戒しなくても大丈夫よ」

「何故そう言い切れる」

「そんなの簡単よ。あんたの話を聞く限り、ファーヴニルはそれなりに楽しめる暇潰しの相手を求めてるだけだから、送り込んだ部隊はわざとあんたに撃退させてるだけよ。そうでもしないと、まるであんたは相手にならないからね。あんたを少しでも歯ごたえある相手にするために、レベルが上がりやすい低レベルの内はサービスで雑魚部隊を送り込んでくれているだけだと思ってくれて良いわ」

「そもそもルールがよく分かっていないのだから、すぐに好敵手になるとは思えない、故に、経験を積ませるために、捨てても惜しくない魔者をずっと送り込んできている訳か」

「そういう事。それでも、大した実力がなければその部隊だけで狩り取ってしまえるぐらいには人選してると思うけどね。実際、ピクシーがいなければあんたの造った迷宮はとっくに攻略されてたと私は思ってる。ほんと、ピクシー様々ね」



 ファムシェもピクシー達を評価するのか。

 これは、本当にピクシーの発生ポイントを元に戻してやらなければならないかな?

 いや、その前に対策を練る方が先か。

 発生ポイントを復活させた瞬間、ピクシー達はファーヴニルが送り込んできた魔者達の掃除を止めてしまうかもしれない。


 第3階層の大穴は自力で飛べるハルピュイアには無意味だし、そこまで辿り着いた時にはハルピュイアのレベルも随分とあがっている事だろう。

 そうなると、まだ平和な時を過ごしている第4階層以降の魔者では、ほとんど太刀打ち出来なくなってしまう。

 B級もいるにはいるが、数の暴力で攻撃されればひとたまりもない。

 やはり防衛に関しては、まだ暫くは様子見しながら上位の魔者達が増えるまでピクシー達に働いて貰わなければならないか。



「それよりも、あんたがまずしなければならないのは、自身の手駒になる有能な指揮官作りよ。防衛に徹していても、いつかは飽きられて本命を送り込んでこられるだけだしね」

「指揮官を育てるのか? いったいどうやって?」

「好い加減、気が付いてない振りをするの止めたら? 初めからその方法に気が付いてるんでしょ?」

「天才と一緒にするな。例え気が付いていても、それが正しい選択肢だとは思わない場合もある。上手くそれを実行出来るかどうかも怪しい。そのために、ここに来ていると思ってくれ」

「本当はただ私を弄って遊びたくなっただけのくせに」

「否定はしない」

「そこは否定しなさいよ!」

「善処はするが、期待はしてくれるな。なにぶん、御前は俺のお気に入りなんでね」

「どうせ今だけなんでしょ?」

「否定したい所だが、前例が幾らでもあるしな……」

「そこは否定しなくても良いわよ。そんなの初めから分かってる事だし。それにこっちとしてはその方が嬉しいしね」

「前言撤回。御前は俺の永遠の玩具だ。飽きる事など決してない」

「はいはい。頑張ってあんたに嫌われる様に一層努力させてもらうわ」



 その努力が逆効果になってる事には気が付かないんだよな。

 天才という肩書きも、所詮はカチューシャの付けた飾り言葉か。

 どちらかというと、ファムシェは努力家だ。

 だが結果しか見ていない者には、天才として映ってしまう。

 もう少し頑張ってる所を見せてやれば、他の者達も近づきやすくなるというのに。


 ファムシェの相手をした後は、全員を一巡する。

 数が多いのでそれだけで一日を要する。

 だが迷宮侵略戦争が始まってから少し距離が遠ざかっていたので、一度リセットする必要があった。

 お気に入りのファムシェやティナシィカといった優劣をあまりつけると、それが火種で争いが起こってしまう可能性がある。

 特にルリアルヴァ改めエルフ達は髪の色が変わってからはかなり情緒不安定だ。

 少し気を付けて接しなければならないだろう。


 様子を見ていく順番は、とりあえず捕えた順に行っていく。


 ペットな幼女は相も変わらず飢えて狂暴化するか、空腹が満たさて人形と化すかどちらか。

 最近ではまったく面白みがない。

 話す事も特にないので、食事をさせつつ俺も摘まみ食いして終了。


 次に会うのは、すっかり大人しくなった赤髪ポニーと金髪ショート。

 赤髪ポニーは今でも俺に食い掛かってくるが、金髪ショートと部屋を一緒にしてからはいつも金髪ショートに弄られているので、常に体力を消耗していた。

 そのため、俺に反抗する気力も絶え絶え。

 赤髪ポニーは、何故か金髪ショートには逆らえない様だった。

 その金髪ショートの髪だが、流石に捕らえてから時間が経っているため結構伸びてきていた。

 という訳で、お揃いのポニーテールに変えてから、ダブルポニーという光景を楽しむ。

 金髪ショート改め金髪ポニーも大層喜んでくれた。


 12人のエルフ達を閉じ込めている部屋に入ると、ティナシィカがまず俺に挨拶を投げてくる。

 おっとり型の令嬢を思わせる物腰に、随分と明るくなった微笑み。

 ティナシィカはこのエルフ達の中で最も現在の境遇を受け入れている事と、年長者の一人という事もあって、カチューシャ、チェーシアを抑えて現在この部屋の代表者的な感じとなっていた。

 代替わりが結構激しいなと思わなくもないが、他2名と比べるとかなり話がしやすいので助かっている。


 とりあえず、不満が多そうな『花飾り』カチューシャ、『森の恵み』チェーシアの母娘をダブルで相手した後、影の薄めな者達を相手にしていく。


 よく目を閉じている美女、深くて濃い青色の髪がとてもよく似合う『星の宝石』エレンミア。

 たまに踊りながら綺麗な歌声を披露してくれる、明るいピンク色をした髪の『天鈴』ウィーリン。

 前は良くファムシェの隣にいた寂しがり屋、紫色より少し色の褪せた髪をした『霞初月』アナセリカ。

 いつも膝を抱いた姿勢で俺を魅了してくる影の策士、小麦色の髪を三つ編みにした『緑葉の音色』フィリーチャ。

 深みのある笑みと思わせぶりな言動が目立つ妖女、髪の色が紫闇色なのがちょっと怖い『輝く宝玉』スールーオゥ。

 最も体が細くて綺麗な白い肌が特徴の、金色に輝く髪を持つ『宿命』ディートリト。

 自らそうあろうと努力しているのかとても影が薄くつい忘れがちになる、壁の色と同じ白い髪の『愛の娘』レエルノア。


 その七名に続いて、『風の声』リトゥーネを相手にする。

 他の者達がエルフに堕ちてからは、リトゥーネもすっかり影が薄くなってきた様にも思えるので、今ではそのリトゥーネを含めた8名がその他大勢扱いになっていた。


 だからといって、その8人を俺が外に連れ出す機会が減っている訳でもない。

 この部屋から外に連れ出せば、ハッキリ態度が変わる奴も中にはいる。

 雰囲気は変わらずとも、1対1になると口数が多くなるのはほぼ全員が共通している特徴だった。


 続いて『大樹の守手』『至宝の弓ティナシカ』という二つの名の由来を持つティナシィカと少し時間をかけて濃密に語らいあった後、もう一度『水鏡夢』ファムシェを連れ出して相手をさせる。

 ファムシェは「またなの!?」と言ってかなり辟易していたが、まぁついでた。

 あと、ファムシェは最後に連れ出さないと、例の研究所に彼女を放り込むのにまた一手間かかってしまう。

 前に相手をしてから半日以上時間が経っているのだから、問題ないだろうに。


 最後に、『月のしずく』ターチェユと子供達がいる部屋を訪れる。

 部屋に入るとハーフの四姉妹から盛大な歓迎タックルを受け壁に激突させられたが、最近ではもう慣れた。

 だが、飛び付いてくるのだけは止めてほしい。

 受け止め損ねると彼女達にもダメージがおよぶため。


 その四姉妹とまだ幼い姿の『飛翔姫』フォーチュラを風呂へと連れ出し、まとめて放り込む。

 当然、一人では面倒を見きれないのでターチェユも一緒だ。

 風呂は全員でも入れる様に随分と大きくて広いので、たかが大人2人子供5人ぐらいではどうという事もない。

 その分、掃除をする手間はかかるのだが、そこは当番制にして暇をしているエルフ達にお願いしている。


 子供達が縦一列に並んで身体を洗っているのを眺めながら、ほっと一息。

 心は子供だが見た目はもうすっかり成長した子供が4人もいるので、その列の一番前にいるフォーチュラは一番年上なのに一番年下にしか見えないのは言わぬが花だ。

 その4人がファムシェとあまり身長が変わらないというのも、ファムシェには言わない方が良いだろう。

 あれでもファムシェは非常に背の事を気にしている。

 彼女達4人の方が実は背が高い等とは、口が裂けても言うべきではない。

 ジョーカーだ。


 風呂から出た後は、子供達を寝かしつけてターチェユと二人きりになる。

 大仕事だった。


 そして最後に、自室に戻ってウィチアとイリアの相手。

 ハードな様にも思えるが、《欲望解放》の呪いという無限の湧水があるため、実はそうでもない。


 最近、レビスに対する感謝の念が芽生えてきている様に思うのは、きっと気のせいではないだろう。

 不死賢者などという大層な名前が付いているが、実は対して害のない奴なのではないのか。

 そんな事を思いながら、俺は眠りに付いた。

2014.02.15校正

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