EX#04 その悪事の末路には
眼が覚めると、また憂鬱な日々が始まる。
同じ寝台に横たわっていた雌二人の身体を押しのけて、身体を起こす。
その裸体は見飽きた。
だがこの部屋に入ることを許されている者達だったので、殺すわけにはいかない。
食事の用意も部屋の掃除も全てこの二人が行ってくれる。
今少しの感情を持っていてくれればこの生活ももう少し楽しくなったのだろうが、あまり多くの事を望みすぎるのは酷だろう。
彼女達も望んでこの生活を送っている訳ではないのだから。
迷宮の様子を見ると、劇的な変化があった。
一見してまたレベルアップしたのだという事が分かる。
まず、迷宮に設置できる特殊なパーツが追加されていた。
また既に設置済のパーツが拡張されたのか、少し大きくなっている。
拡張されたのは牢屋パーツ。
同時に捕獲しておける数が大きく増えたのだろう。
迷宮内にいた魔者達も軒並みにその様相を変えていた。
それまでいた個体は進化を果たし、上位の個体種へと変化したのだろう。
点在する光点が全体的に若干強くなっている。
勿論、これから新たに発生する魔者達はこれまで通りのままではあったので、その進化した魔者達が侵入者達の手によって葬られていくと、迷宮は元通りになる。
ただボス級の魔者も進化していたので、彼等が倒されるのはまた先延ばしになったかもしれない。
迷宮の最奥に設置した宝に、いつになったら辿り着かれるのか。
今のところ、その兆しは見えてこない。
この生活が終わる兆しも見えてこない訳だが。
レベルアップを果たした迷宮を弄るのは後回しにして牢屋へと向かう。
牢屋に入ると確かにそこは大きく様相を変え、牢屋の数も増えていた。
但し今現在捕らえている者達の数は当然変わらず、またその数も以前の牢屋数いっぱいに捕らえていた訳ではないので、牢屋の数だけが増えてもあまり意味はない。
今の所、侵入者達の中で見目麗しい雌だけを選別して捕獲する事は出来ていないので、こればかりはほとんど運任せでしかなかった。
その運任せの幸運によって捕らえられた不幸な雌達のいる牢屋を一つ一つ回っていく。
朝の挨拶とは名ばかりの一方的な行為を今日も行っていく。
《欲望解放》という呪いは随分と厄介なもので、生物的な欲望を際限なく解放し、そのうち正常だった思考までがそれが当然であるかの様に書き換えられていく。
今ではもう、この行為は当たり前の日常であり、当たり前の事として受け入れている自身がいた。
獣じみた衝動に突き動かされる毎日。
時折、加減を失敗して殺してしまう事もあったが、問題ない、減ってもまた増える。
それに従者の二人だけは絶対に殺すことはないので完全に暇になる事もない。
ただ従順なだけの雌を蹂躙する。
面白くないので、髪を掴んで乱暴に扱い悲鳴をあげさせてこの欲望を満たす。
すぐに泣き始めたが、その涙を舌で舐めあげてその味を存分に堪能した。
反応が薄くなってきた頃に、今度は優しく言葉を投げかけてやる。
言葉なくただ痛めつけているとこの雌は動く事も反応する事もすぐに止めてただ泣いているだけになるのだが、こうして言葉を掛けてやればその反応も鳴き声も復活する。
それまで絶望の人生を送ってきたのだろう、そこで培った経験からくる対応だというのはすぐに分かった。
従順だが無知ではない。
故にこの様に面倒な対応をしなければ面白さの欠片もなくなってしまうのだが。
本当に面倒な雌だ。
殺すか。
未だに抵抗を続ける雌のいる部屋へと入る。
部屋に入るとすぐに恫喝する声が届けられた。
やはり雌はこうでないと面白くない。
今現在のお気に入りであるその雌を早速蹂躙する。
非常に抵抗したが、それを力尽くでねじ伏せていく。
元々その雌の手足は拘束しているのでねじ伏せるのは至極簡単だ。
その喚き散らかす口を無理矢理に封じる。
舌を付き入れようとすると舌で防御されるが、あまりそれに意味はない。
たっぷりとその雌の舌と戯れた後、唇を解放すると再び小五月蠅い言葉を喚き散らかし始める。
その中には多少の嗚咽も混じり涙も浮かばせ始めていたが、それこそ甘味料にしかならない。
再びその唇を封じ、蹂躙を開始する。
暫く楽しき時をその雌と一緒に楽しんだ。
既に壊れてしまった雌のいる部屋に入る。
お気に入りの雌を相手にした後だったので、その壊れた雌の価値が見いだせなかった。
故に、殺す。
三人いる捕虜のうち二人も殺すのは惜しいとは思ったが、まぁ仕方がない。
そう思ってしまった欲望は《欲望解放》の呪いにて増幅され、惜しいと思った気持ちはかき消されてしまうのだから。
殺した二人の処理を従者二人に任せて、部屋に戻る。
迷宮の方ではまた新しい一日が始まったようで、迷宮内で夜を明かした者達が行動を開始し始めていた。
同じく、迷宮の入口からはポツポツと新たな侵入者達が入ってくる。
それらを少し眺めた後、迷宮の拡張を開始する。
未だ進入をされていない現最下層の一角をそっくりそのまま追加した新最下層に移し、その間に出来た何もない空間に通路を描いていく。
今回は撃退用の魔者ではなく、捕獲用の罠をメインに設置していく。
ここまで進入される事はほぼないのだが、捕虜の数が減った事と牢屋が拡張されて捕虜収容数が増えた事から、今は罠を設置したい気分なのだ。
ついでに既存部分にも幾つかの修正を行い、侵入者の捕獲をメインにした構造へと変えていく。
という操作をしていると、早速今し方設置したばかりの罠に何者かが引っかかり気絶してしまった様だった。
二人一組で行動していた者達だったのだが、その片方が落とし罠に引っかかり一つ下の階層へと落ちてしまった様だ。
と同時に上の階に残った者に別の罠が連動して発動し、意表をつかれたためか気絶。
早速、従者の一人に命じて回収に向かわせた。
尚、下の階層に落ちた者は無事のようだ。
暫くその場でじっとしている。
きっと上の階層にいる相棒に声でも掛けているのだろう。
その声は空しく響き渡るだけで、気絶から復活する事の出来なかった上の階層にいた者は従者によって回収され、二人は永遠の別れを告げる。
……いや、下の階層に落ちた者も気絶してくれれば、もしかしたら永遠の別れにはならないか。
その場合には、当然の事ながら死ぬ前に酷い未来が待っている訳なのだがな。
従者によって回収された者は、嬉しくも牢屋へと届けられた。
遊び相手が増えた事に喜ぶ。
早速、遊んでもらう事としよう。
牢屋に入ると、まだ騎士甲冑を着けたままの雌がいた。
従者がすぐに剥がそうとするが止める。
気絶してすぐの、そのままの状態で蹂躙するのも一興だ。
武器だけを外し、意識のないままのその雌に悪戯を開始する。
程なくしてその雌は眼を覚まし、予想通りの甲高い悲鳴で鳴いてくれた。
同時に逃げ様とするが、極上の獲物を逃がしはしない。
後ろから羽交い締めにしたまま悪戯を続行し、存分にその雌の悲鳴を楽しんだ。
悲鳴を楽しんだ後はその唇を奪い、全てを奪い尽くす。
……少し戯れが過ぎた様だ。
捕まえたばかりだというのに、その雌は気がつくと物言わぬ骸と化していた。
ああ、勿体ないことをした。
もしかするとお気に入りになるかもしれなかったのに。
残念だ。
それからも新しい牢屋の入居者が増えては減る日々が続く。
迷宮の造りを罠重視に変えたせいか、侵入者達の捕縛率は格段に上がった。
だがその反動か、生存確率が下がった事と魔者の数が減った事で、迷宮への侵入者の数は下降の一途を辿っている。
折角、順調に課せられたノルマへと向けて着実にその数を増やしていたというのに、そのバランスが崩れてしまった様だ。
仕方なく迷宮の造りを少しずつ元に戻していくが、残念ながら一度失った信用を取り戻すには至らなかった。
雌の侵入者の数も随分と減り、一時期は満杯になっていた牢屋も今では閑古鳥が鳴いている。
今日もまた話し相手は従者の二人のみ。
ほとんど感情を持たない人形の様な従者は何をした所であまり反応を示さない。
面白くない日々が続く。
かつてお気に入りだったあの雌も、流石に長期間はその容姿を維持する事が叶わず、既に処分していた。
この様な行為が世間一般的に悪であるという事は理解している。
だが、その様な行為は外界では幾らでも行われている行為だという事も知っている。
力を持つ者と持たない者。
弱肉強食の世界では、弱い者は肉でしかない。
特に見目麗しき弱者の雌は最高の肉であろう。
また今日も新しい雌は手に入らなかった。
迷宮の造りを初期に近い状態へと戻し、再び最初からやり直そうと頑張っているのだが、逆に簡単に突破されて迷宮最奥に設置していた宝が奪われてしまう様な事が続く。
一度倒されてしまった迷宮ボスは二度と復活しない。
迷宮を簡単にした瞬間に運悪く強者が進入してきたらしく、苦労して作り出した自慢のその迷宮ボスは、初戦闘にて激戦を繰り広げた後に討ち取られてしまった。
それからは暫くやる気をなくし、踏破されてしまった迷宮を造り替えなかった事で迷宮攻略者が続出。
それに気がついた時には既に遅かった。
所持していた貴重な宝はあらかた奪われしまい、本当に初期の様に貧相な迷宮へと様変わりしてしまう。
最初の頃は新しい迷宮が発見された事で噂が噂を呼び放っておいても侵入者達は訪れたものだが、今は違う。
既に攻略済の迷宮であり、めぼしい宝もなくなってきたその迷宮にわざわざ進入してくる者は少ない。
かつて罠だらけだった事で、リスクの方が高いとも思われてしまったのだろう。
まずくてリスクの高い迷宮に好んで入ってくる者は、それなりに腕の立つ者が多い。
ますます新しい雌の捕獲は困難になっていた。
その苛立ちが、従者2人を殺してしまうという暴挙に繋がってしまう。
一人になった。
例え迷宮の中で誰かが気絶してもそれを回収してくれる者がいなくなったために、牢屋の価値はなくなってしまう。
レビスが新しい従者を追加してくれる様な事もなかった。
それどころかその姿を現す事もない。
叫び呼んでも現れない。
従者が用意してくれていた食べ物も、その従者がいなくなった事で手に入らなくなった。
その従者が素通りしていた壁を攻撃してみるが、何も起こらない。
あらゆる拷問器具を使って壁の破壊を試みるが、その全ては無駄に終わった。
誰もいない世界。
何も手に入らない世界。
一人は嫌だ。
このままここで朽ち果てていくのは嫌だ。
どうすればいい。
どうすればいい。
どうすればいい……。
そして思いついた。
迷宮を操作できる画面に向かう。
その一番右下に存在する、謎の黒いエリア。
その隣には牢屋を意味するパーツ。
この謎の黒いエリアには迷宮の通路を繋げる事は出来ないのは確認済だ。
しかし、隣の牢屋はどうだろうか?
謎の黒いエリアに通路が繋がらなかった事で、それを試した事がなかった。
迷宮の一角から通路を伸ばし、牢屋へと繋げられるか試してみる。
通路を引く。
牢屋へに向けて一直線に通路を引いていく。
引いていく。
……繋がった!?
すぐに駆け出し、牢屋へと向かう。
牢屋の中を見渡し、それを探す。
そしてそれはあった。
ぽっかりと空いた穴。
それまで壁であった部分に空いた、迷宮へと続く穴。
その穴へと向けて走る。
これで自由を手に入れる事が出来る。
この隔離された生活からも抜け出す事が出来る。
やった。
やったぞ。
何でこんな簡単な事に気がつかなかったんだ。
牢屋を抜け、迷宮の通路に出る。
そこはとても歩きにくく、裸足のままだとかなり困難を極めたが、それでも無心になって前へ前へと走り続ける。
長い長い通路を抜けてT字路を左に。
道は覚えている。
何しろ自身で造った迷宮なのだから。
罠を避け、魔者達のいるだろう場所を迂回し、一路ひたすらに迷宮への入口へと向かう。
そして遂に光が見えた。
外の光だ。
そこは迷宮の外だ。
ついに。
ついについに。
あれほど望んでいた自由を手に入れる事が出来る!
ザシュッ!
「……あ?」
「思わず斬っちまったが、なんだこいつ?」
「魔者、じゃぁないよな。こんな魔者、見たことないぜ」
「だが今は誰もこの迷宮には入っていないからな。数十年前からずっとこの入口は管理されてるから、誰かが入ってれば名簿を見れば分かるし」
「まさか、かなり昔に迷宮に入った奴の子孫が今もこの中で暮らしてたとか?」
「そんな訳あるかよ。この迷宮はこれまで何百何千何万人もの奴等が入り、何人もの踏破者が出てるんだ。幾ら中の造りがたまに変わるといっても、一度も出会わなかったなんて事があるかよ」
「でも絶対なんてないだろ?」
「まぁそうだが。だとしても、これが人か?」
「どうみても人じゃないな。たった一撃で死んだから不死者でもないな。何だろう?」
「何でもいいよ。とっととお偉いさん方に報告して引き取ってもらえ。このままじゃ気持ち悪くて気分が悪くなるだけだ」
「違いない。んじゃ、ちょっといってくる」
「おう。寄り道すんなよ」
「前科のある御前にだけは言われたくないな。あの時は女を買ってたんだって?」
「ここは安いからな。その分、子供ばかりだが」
「最近じゃもうこの迷宮目当てで来るような奴もほとんどいないからなぁ。そういうのを相手にする娼婦もみんな引き上げちまってるからな。残ってるのは行く宛のない奴か、どこからか集まってくる飢えた子供ばかりか」
「奴隷商にとっちゃ狩り放題だな。お偉い方もここには賄賂ぐらいしか美味しい汁はないし」
「子供好きの御前に取っちゃ楽園だろう?」
「馬鹿野郎。子供好きの意味が違うだろ。俺は純粋に子供が好きなんだよ」
「あれのどこが純粋なんだか」
「うるせぇ! いいからさっさといけ! もしかしたらまた変な奴がこの迷宮の入口から出てくるかもしれねぇんだからな。一人ここに残される俺の身も考えろや」
「あいよ。ちょちょっと行って、ついでにお土産で子供も買ってきてやるよ」
「……驕りか?」
「……おい、本気にすんなよ。軽い冗談だろ?」
「っ!」
「ひゃー、怖い怖い。子供好きの変態叔父さんはやっぱり怖いね。僕、男の子で本当に良かったよ」
「誰が変態叔父さんだーーーっ!」
「……」
「……」
「……」
「念のため、もう何度か刺しておくか。まだ生きていたら怖いし」
ザシュッ!
ザシュッザシュッ!
そこで俺の意識は本当に途絶えた。
2014.02.14校正




