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不死賢者の迷宮  作者: 漆之黒褐
第参章 『迷宮創世』
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第52話 ハーモニーの迷宮、レベル2

 人の命を弄ぶ行為を、世の理に反するとは思わない。

 人ではない者の命を弄ぶ行為を、世の理に反するとは思わない。

 理性と知識を得た人の種が、言葉を解さない人外の種の命を弄ぶ行為を、世の理に反するとは思わない。

 人の種が、同じ人の種の命を弄ぶ行為を、世の理に反するとは思わない。


 都合の良い解釈。

 自らの種が絶対であるという至極傲慢な思考を俺はしてきたのだと思う。

 動物の肉は何ら罪悪感を感じる事なく躊躇いなく口にする事が出来るというのに、同じ人の種の肉を前にすると、それが食べ物ではないという認識が先に立ち、食べようなどとは決して思わない。

 食べようとすると、恐らく身体も心も拒否する事だろう。


 それが身をもって覆されたあの日。

 禁断の術に手を出し、世の理に反する行為をほとんど躊躇いなく行ったあの日。

 クーという少女が死に、その命を蘇生させ、そしてその彼女に喰われかけたあの日。


 俺は自らの中にあった何かを失った。












「今度は6人で来たか。だんだんと慣れてきたみたいだな」

「そうですね。最近では迷宮の外でキャンプする方もいる様です。数日掛けてハーモニー様の迷宮に挑んでいるみたいですね」

「たった2階層しかないのに、そこまで攻略に時間が掛かるものか?」

「迷宮の攻略が目的というよりは、無限に発生し続ける魔者を利用した戦闘訓練もしくは駆除の方が目的なのではないでしょうか?」

「放っておくと迷宮内に溢れて、その内に外へと出て行ってしまうみたいだからな。下手をしたら封印される可能性も考慮しておかなければならないか」



 Xデーより約一月。

 どうしてそんなものまで用意されていたのかは全く理解出来ないが、死刑用と思われる電気椅子に座りながら俺は迷宮の状況を表している黒い靄で出来た画面を見ていた。


 勿論、その電気椅子からは動力と思われる物を取り除き、安全無事な椅子へと改造している。

 但し拘束用のゴム紐はまだ残している。

 頭部、胸部、胴部、両手首、両足首の計7箇所にあるそのゴム紐は今のところ使った事はないので新品同様だが、まさか自分自身を拘束する訳にもいかないので、戦利品の衣服をクッション代わりに使用してその裏に隠していた。

 尚、念のため椅子にはアース線を付けて地面に接地している。

 実はこの電気椅子は法術具であり、何らかの拍子に突然に電気を流し始める可能性を捨てきれなかったために。


 その心の底からはくつろげない椅子に深く腰掛けながら、眺めていること数分。

 迷宮内に侵入した6人パーティーは、最初の罠を難なく越えて左の脇道へと逸れていく。

 正面にはスライムで出来た大きなプールがあるためだ。

 幾度か被害を出したその悪質なプールの存在は既に知れ渡っている模様で、恐らくそのパーティーは初めてにも関わらず事前情報でそれを知っていたのだろう。

 『落下天井・軽/遅』の罠を利用してプールの一角に作り出した浮島。

 しかし実は『毒エリア・狭』と化したその場所に設置した宝箱。

 そかしその実『人食い箱』の罠……それに引っかかる様な事はなかった。


 左の道に進むと『枯れた花』を栄養にして育った『草の種』が芽吹いて生い茂っている道が現れる。

 その中には当然『痺れ草・微』も含まれている。

 左の壁際を通れば『隠し扉』で隠した『回転扉』の『一方通行路』によってスティンガー・クイーンのいる蜂地獄の間へとご案内され、右の壁際を通れば壁から矢が放たれる。

 その三つの選択肢に加え、天井付近には有限数型の若干強いタイプの魔者、超音波と吸血行動と毒付与による攻撃を行ってくるデューンバットが編隊を組んで襲いかかってくる様になっていた。

 特にデューンバットの広域超音波攻撃は三半規管をいつの間にか狂わされるので、普通の人ならばこの悪質なエリアでリタイアになるだろう。


 とはいえ、実際にはこの第一関門ともいえる凶悪エリアの突破率はほぼ100%に近かった。

 その理由は、草が生えすぎて刈られてしまう事。

 草は刈られると暫く生えてこないので、壁際は誰も通らなくなる事。

 そして最後に、デューンバットごときに殺されてしまうような村人クラスの者は、基本この迷宮にはもう入ってこない事。

 故に、ここでスティンガー・クイーンの間に送られて殺された者はまだ一人しかいなかった。


 その通路を越えると四本の分かれ道。

 どの道を選んでも再び四本の分かれ道が現れ、その半分は『一方通行路』によって帰還を困難にさせる。

 その後も様々な罠が設置された通路や部屋が来訪者達を苦しめ、また要所要所では様々な魔者達が今か今かと獲物がやってくるのを待ちながら、自動的に少しずつその数を増やしていた。



「さて、どこまでもつかな」

「迷宮の攻略地図を持っているのでは?」

「だとしても、罠を解除するのはその攻略地図を持っている本人達だ。魔者と闘うのも彼等自身だ。一度でも油断してしまえば、もしくは失敗してしまったら取り返しのつかない事態になってしまう可能性はある」

「その場合には、いつも通り私の出番ですね」

「ああ、そうだな。その時は頼む」



 最初に少女2人の行方不明者を出し、その後にやってきた捜索隊11名も行方不明へと陥れてしまった俺の造った迷宮は、少なからず周囲の村や町に強い危機感を与えたらしく、数日すると本格的な調査団がやってきた。


 それが本格的なものであり、何かしらの目的を持った調査団だと分かったのは、迷宮の入口で彼等の取った行動と、迷宮内での行動方針が理由である。


 彼等は最初、迷宮の中には入る事はせず、まずは外に待機して一日を明かした。

 次は数人単位でパーティーを作って順に迷宮に入り、かなりゆっくりとしたペースで迷宮内を進んではすぐに引き返す行為を続ける。

 たまに罠に引っかかって傷を負ったり気絶する者も現れたが、総じて警戒心が強く決して無理をしようとしなかったので、誰一人として犠牲者は現れなかった。

 第一関門を抜けた先にある計16本の分かれ道で『一方通行路』を選んだとしてもすぐには行動せず、何らかのアクシデントが起こり帰還が困難になった事を知らせるためにその場で待機を続けた。

 暫くすれば別の道から『一方通行路』を進んでしまったその彼等の元に別のパーティーが辿り着き、無事に帰還していく。

 そういう慎重な迷宮捜索が数日にわたって続けられた。


 ただ、そんな彼等であっても、流石に迷宮の最深部までには到達出来ない。

 あまりにもゆっくりすぎた故に。

 数日後、予定の調査期間が終わったのか、彼等は迷宮から姿を消した。


 それからまた数日が経った頃。

 誰も訪れる事がなかったため迷宮内で増え続けた魔者達が、遂に迷宮の入口にまで辿り着き、外の世界へと大量に旅立っていく。

 その半分近くは恐らく不死者タイプの魔者だったので、日が昇ると同時に光を浴びて消滅してしまっただろう。

 が、そもそも彼等不死者タイプの魔者が迷宮を旅立っていったのは、日の光が沈んだばかりの夕方過ぎだったので、運が悪ければ明け方前に近くの村まで到達し、一騒動一悶着を起こしたと予想される。


 事実は分からなかったが、結果である程度分かった。

 毎日の様に迷宮から旅立っていく魔者達に脅威を感じたのだろう、すぐに討伐隊らしき者達が迷宮の入口までやってきて、その原因を知ってすぐに踵を返していく。

 次の日から、少しずつ迷宮に入っていく者達が現れ始めた。


 現在、俺が見ているこの6人パーティーも、その情報を聞きつけてやってきた者達なのだろう。

 腕試しとばかりに挑戦しているのか、それとも近くの村や町、もしくは国から依頼を受けて迷宮に巣喰う魔者達を討伐しにきたのか。

 難なく第一関門を突破し、続く第二関門である迷いの道で『一方通行路』になっていない道を迷いなく選んで進み始める。

 間違いなく攻略地図を持っている様だった。



「陣形からして、前衛4人の後衛2人か。男女比はどうだろうな」

「一人だけ動きに違和感を感じます。恐らくその方が女性なのでしょう」

「常に周りにいる男との距離を気にしているという事か?」

「いえ。動きに雑さが少ないと言いますか……女性の勘です」

「逆だと俺は嬉しいんだがな」



 女性の勘を男の俺に察しろというのは無理がある。

 俺が見る限り、その6人の動きには違和感はまるで感じなかった。

 どの辺りが雑なのかも分からない。

 それなりによく連携出来ている動きにも思えた。


 そうこう思っている内に、新たな侵入者2名が迷宮の入口に現れる。

 本日は千客万来。

 かなり前に侵入してきた3人パーティを入れて、これで3組の計11人が迷宮内にいる事になる。


 先行している3人パーティーは現在、四方八方から襲ってくる不死者の群れに足止めをされて暫く動けていない。

 動きは遅いが無駄に体力の多い腐った死体(アドルゾンビ)

 武器と防具を身に付けた少し侮れない骨戦士(ボーンソルジャー)

 人の形だけをした黒い影の様な存在である、名は体を表す黒い影(ブラックシャドウ)

 どの不死者もD級に属しているため単体の能力でみれば大した事はないが、数の暴力で攻めてこられれば決して油断は出来ない相手だろう。

 特にブラックシャドウはその姿と性質から死角や影からの奇襲を得意とする。

 持久戦になれば間違いなく彼等三人の命を最初に狩るのはその魔者だろう。


 ただやはり彼等の目的はその魔者達の討伐だったのか、何度か魔者の並が途切れたというのに彼等はそこから動く事はしなかった。

 英気を養い、その場で更に数を減らす予定なのか。

 それとも動けない事態に陥ってしまい、解決の糸口を探している間に次の並が来てしまっている状況なのか。

 直接彼等の状況を見る事が出来ないのが少しもどかしい。


 しかしその降着した状況も、もう少しすれば変わる事だろう。

 倒しすぎた不死者はその周囲に余計な瘴気を充満させる。

 瘴気濃度を上げすぎると上位種の特殊個体を低確率で呼び出してしまう。

 その特殊個体が、彼等にとってはとても運が悪くほぼ同時に三種。

 俺にとっては運が良いのかどうかは分からないが、画面上の縮小版迷宮図に設置されている魔者発生ポイントに、他とは異なる輝きと色をした点が現れた。


 早速、観察スキルを使用して確認する。

 アドルゾンビの発生地点から現れたのは首なし鬼人(ロストヘッドロード)

 ボーンソルジャーの上位派生で生まれたのは死骨騎士(デスズワイト)

 そして周囲のブラックシャドウを吸収して変異した大きな黒影(グレーターシャドウ)

 この目で見る事が出来ないのがやはりもどかしい。


 その三体の特殊個体が、休憩をしているらしき3人に三方向から迫る。

 最初に殺られたのは右にいた者。

 近接戦闘になる前に遠距離からの攻撃法術を受けたのか、光が突然に消えた。

 それに構わず、左と上でも戦闘が始まる。

 両方共に1対1の戦い。

 そして戦闘が始まったと思った瞬間、すぐに残った二つの光点は消える事となった。


 ……まぁ、そんなものだろうな。


 呆気なく撃破されてしまった特殊個体3体に、俺は別に何も思うことはない。

 数の暴力で攻めている時に一緒に混じって攻めたなら兎も角、単体で三方向から時間差で仕掛けても各個撃破されるだけだろう。

 それ以前に単体としての能力が相手方3人の各個人能力に遠くおよばない様なので、一人一殺で対応される始末。

 所詮はD級魔者の上位派生か。

 俺がレビスの迷宮1階で出会った放浪の骸骨戦士スケルトンウォーリアーの上位種、放浪の骸骨(スケルトン)は直接戦闘では軽く倒す事が出来たくらいだ。

 期待するだけ無駄だろう。

 森で出会った彷徨う腐死者(ドレッドゾンビ)の上位種も、恐らく1対1で相対せば倒す事が出来た筈だ。


 その程度には弱い……筈だ。



「2階層への落とし穴に引っかかった模様です。切り替えますか?」

「あの罠にか? 珍しいな」

「粗悪な鉱石でも欲しいと思う人がいたみたいです」

「薬草と湧き水も設置していたからな。何かあると踏んだんだろう。他のパーティーはあまり動きがないし、2階層の中間部まで侵入したパーティーは初めてだから、今日はそのパーティーに標的を絞って暫く眺めてみるか」



 未だ入口付近で進もうとしない2人組と、1階層の中間地点より少し先でコツコツと魔者退治に精を出している3人組を見限って、2階層へと画面を切り替える。

 わざわざ電気椅子から立ち上がり大きな画面の右下まで行ってボタンを押さなければならないという手間が掛かるが、リモコンの様な物まで作ってあるとレビスに期待するのは酷な事だろう。

 むしろリモコンがなくて安心したぐらいだ。

 この世界の世界観から逸脱した無駄にハイテク物はあまり見たくない。

 シンプルが一番。



「やはりモンスターハウスと化していたか」



 画面を切り替えてすぐ、修羅場という状況を早速察する。

 多少広めの部屋に落ちた5つの(ヽヽヽ)光点は、それ以外の無数の点に埋め尽くされて今にも光が消え入りそうな状態へと陥っていた。



「それを意図して造った訳ではないのですか?」

「増え方が異常すぎる。これも(ヽヽヽ)想定外だ」

「想定外だらけですね、この迷宮は」

「時に嬉しい限りの成果を出してくれるので、作り手としては複雑な気分だがな」



 と言っても、その嬉しい成果を出してくれたのは最初の一回だけではあるが。

 また、設置していない魔者が勝手に生まれていた事や、ボス級の存在が発生してしまった事などは想定外ではあっても別に成果は出していない。

 それらはスライムプールの直中にいるため、現状では活躍の場など訪れようもないだろう。

 勝手に活躍したのはそのプールを作り出した時だけだ。



「必要かどうか分かりませんが、回収に向かいます」



 間もなくして、6つの赤い光の色が全て薄明かりに変化した。

 落とし穴に落ちた時点で一人は隣の部屋へと落ち、その時のダメージで気絶。

 同じ部屋に落ちた5人は、落ちた先にいた魔者の群れがクッションとなってほとんどダメージを受ける事はなかったが、しかしその数に圧倒され敢えなく敗北。

 イリアは彼等が意識を手放す前に回収に向かった訳なのだが、既に一人は気絶しているので意味はある。

 とはいえ一人で6人全員を一度に回収出来る訳でもないので、ここからは時間との勝負になるだろう。

 回収が遅れれば気絶が死亡に変化してしまう可能性があるために。


 イリアの存在を意味する黒い点が2階層エリアに現れる。

 壁を無視して、壁の中を出来るだけ選んで進む。

 通路を進むと場合によっては魔者に遭遇してしまうため、それを避けての事だ。



「ん?」



 ……と、ここでまた予想とは異なる事が起きた。

 イリアは先に気絶した一人に近づいた後、その者は放っておいて隣の部屋にいる5人の方へと向かう。

 先に回収すると思っていたのだが、どうやらその者は後回しにした様だ。

 その者の近くには多少強めの魔者がいるので先に回収しなければ気絶中に喰われて殺されてしまう可能性があるのだが。


 ああ、男だったからか。

 男の場合は回収しても使い道がない。

 故に男は牢屋へは回収せずに、身包みを剥いだ後はスライムプールの中にでも放り込んで処分する様にと伝えていたのを思い出す。

 ただこの一ヶ月、死亡者は出ても回収出来る気絶者は一人もいなかったため、すっかり忘れていた。


 隣の部屋で気絶した五人のうち、まずは二人の回収を行うイリア。

 イリアの動き次第で、その者達が男か女かが別れる。

 牢屋まで戻れば女性、スライムプールに投げ込めば男性。

 回収を行う場合は女性優先とも伝えているので、この最初の行動が肝心だ。



「ふむ、当たりか」



 イリアは、回収した二人を牢屋まで連れて行った。

 途中、スライムプールに寄る事もなかったので、両方とも女性である事が確定する。

 後衛2人が女性だったか。



「なに?」



 と思っていると、次に回収した二人もイリアは牢屋へと連れて行ってしまった。

 まさかと思い牢屋へと足を運んでみる。

 本当にそこには4人の女性の姿があった。


 黒髪ロングに水色ロング、金髪ショート、金髪ツインテール。

 遠目にだったが、明らかに男性のそれとは異なる髪型をしていたので一発で分かった。



「これで最後になります」



 その4人の姿に少し感動していると、更に追加で一人の女性を背負ったイリアが奥から姿を現す。

 赤髪ポニーだった。



「――もしかして、全員があの血吸幼虫(ヒルワーム)の餌食になったのか?」

「その模様です。見ての通り外傷はほとんどありませんので、ほぼ精神的なもので気を失ったのではないでしょうか」



 部屋一杯に埋め尽くされたヌメヌメ感が半端ないヒルワーム達。

 男の俺でもその中には絶対に入りたくないと思うのに、男性である俺以上にそういうのを酷く毛嫌う年若い女性達がそれに耐えられる訳がない。

 外傷がほとんどないという事をイリアは少女の太股を俺に見せて証明しようとするが、そこにはヒルワームに吸い付かれた痕がまだ生々しく残っていた。


 まだ身包みは剥いでいないので、その赤髪ポニーの女性の服の中からポトリとヒルワームが一匹こぼれ落ちてくる。

 その女性の顔を良く見るために近づいた際についでとばかりに踏み潰しておく。

 ヌチャっという感触が靴裏から伝わってきて少し後悔した。



「少し可哀想な事をしたかな」

「この後の事を思えばまだ可愛いものでしょう」



 イリアのその言葉は無視した。


 気絶している赤髪ポニーは運動が好きそうな健康的な可愛い少女の顔をしていたので、その容姿を見ただけで前衛の一人だったのだろうと決めつける。

 細身の剣を腰に差していたので、細剣使いの赤髪ポニーと呼ぶ事にした。


 ……固有名(なまえ)を覚えるのは苦手だ。

 心を触れ合わせるつもりもないので、この方が気も楽である。



「牢屋は別々にしておいてくれ。一緒にしておくと相手をするのが面倒になる」

「そうしますと空きの牢屋がなくなりますが?」

「最初から拘束しておけば問題ないだろう」

「分かりました。以後はそう致します」



 早速、イリアは細剣使いの赤髪ポニーを牢屋の中に放り込んだ痕、拷問器具の中から磔を選んで彼女を逆さまに括り付ける。

 流石にそのままでは血が頭に上ってしまい健康に悪そうだったので、イリアが別の女性を拘束している間に横に倒しておいた。

 健康美な太股の上に見えた布地は少し刺繍の施された白。



「そういえば、残りの一人はどうしたんだ?」

「ご指示通り、スライムの餌に致しました」



 どれも美人もしくは可愛らしい容姿をした5人の女性を連れた一人の男性。

 いったいどうすればそんなパーティーを組む事が出来たのか。

 その理由は、後にその女性達の身体を隅々まで調べ尽くした時に発見した同じ形をした紋様によって知る事になる。


 この世には、強制的に服従させる事を可能とする奴隷紋というものが存在するらしい。

 彼女達は全員、その男が飼っていた奴隷達だった。

2014.02.14校正

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