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不死賢者の迷宮  作者: 漆之黒褐
第肆章 『魔者の軍団』
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第93話 死と殺人の理由

 その日、生まれて間もないグランティースの街は、恐怖に包まれた。


 新しく発見された迷宮を利用した迷宮街の基盤作りを着々と進めていた街に、突如として入ってきた凶報。

 迷宮の入口に建てられた暫定管理所『カオスの館』が、迷宮から出てきた魔者(ましゃ)達に僅かな時間で陥落し、占拠されたとの情報だった。


 事態を重く見た街の責任者はすぐに隣町へと使いを走らせ、住民に避難勧告をだす。

 しかしそれも既に時遅く。

 街は既に兇悪な魔者達によって攻撃を受けていた。


 馬を走らせ街から出ようとした使いの者は空から監視していた魔者によって真っ先に殺され、同じ様に街を出ようとした者達も次々とその餌食となっていく。

 街を守る衛士達は武器を手に迫り来る魔者達と戦ったが、見た目は雑魚クラスの魔者なのに実際に戦ってみると恐ろしく強く、ほとんど手が出ないまま凶刃に沈んでいった。

 たまたま街を訪れていた冒険者達も、孤軍奮闘するも力およばず。

 あっと言う間にグランティースの街は『カオスの館』同様に魔者達によって完全に占拠された。


 それから暫く経ったある日。

 グランティースの街からの連絡が途絶えた事を不審に思った隣町は、いつもより早く物資運搬の定期便を出発させ様子を見に行った。

 勿論、最悪の事も考えて冒険者も何人か雇い護衛につけてである。


 約五日かけて慎重に進んだ物資運搬隊は、ほとんど何事もなくグランティースの街へと辿り着いた。


 そして、そこで見たものは……。











「目標達成、おめでとうございます」



 その言葉の意味とは裏腹に、事務的にそう言ってきたウィチアへと俺はすぐに言葉を返す事は出来なかった。


 理解出来ないその状況に、身体がまるで彫刻の様に固まってしまう。

 放心か、忘心か。

 それとも驚心か。

 そんな心まで固まってしまった俺の姿を、数多の瞳が見つめていた。


 これがもし垂れ幕でもぶらさげた誕生日会じみた催しであったならば、言葉の意味は分からずともすぐに我へと返る事が出来ただろう。

 しかし現実として俺の瞳に映っていた光景は、アレーレの触手で埋め尽くされた部屋を総出で片付けていたら俺が突然現れたので振り向いた的な状況だった。


 なんというか、ドッキリを仕掛けようとしてコソコソと準備している所に誤って出くわしてしまった、そんなとてつもなく気まずい状況。



「ちょっとあんた、早く帰ってきすぎでしょ! もうちょっとゆっくりしてきなさいよ!」



 その沈黙を破ってくれたのは、最近生意気が板に付いてきたファムシェだった。

 但し、同時に手に持っていた触手を俺へとぶん投げてくるというおまけ付き。

 幸いにして避けるまでもなく触手は明後日の方向へと飛んでいったため、俺はダメージを受ける事はなかった。



「相変わらず空気の読めない奴だ。少しは気をきかせたらどうなんだ」

「想定外というものは得てして起こるものです。ブラックス様は何も知らなかったのですから、これは仕方のない事でしょう」



 今度はカチューシャとターチェユが口を開く。

 いつの間にヨリを戻したのか、二人はまるで恋人同士の様に仲良く手を繋いでいた。

 その繋いだ手の輪の中にはフォーチュラの姿がある。

 周囲にはゴブリンと人との間に産まれた姉妹4人もいた。


 その後も次々と思い思いの言葉を皆が吐いてくる。

 元ルリアルヴァの民だったエルフ達は勿論の事。

 赤髪ポニーと金髪ポニーの二人の姿や、俺と同じ様に状況をまだよく理解出来ていないらしい最近捕らえたばかりの少女。

 ペットな幼女と競い合うようにして御飯を食べているアリエス。

 ちょっと不満そうにしているアレーレ。

 そのアレーレの隣にいる、アレーレとよく似た容姿を持った褐色の女性。

 更にはルーンピクシーのキュイやピクシー達も、それぞれ一言ずつというか一鳴ずつ俺に言葉を浴びせかけてきた。


 というか、キュイ達はファーヴニル迷宮にいたんじゃないだろうか?

 それとアレーレに似た女性は、もしかしてファーヴニル迷宮攻略の一応の立役者でもある魔の精(マギ)だろうか?

 名前を聞いたら、ウィルネルハアズラギリザベスというやたらと独特で長くて分かりにく名前が返ってきた。

 とりあえずアレーレ同様に省略して、ウィベスと呼ぶことにする。



「そろそろ落ち着かれましたか?」

「これ、を……どう見たら……そういう風に、見える……?」



 その大勢いる女性達の中で、俺に対して直近で大きな恨みを買っていた新入りの少女――名前はリナリーらしい。奴隷紋が身体に刻まれているのを既に見ているので、ポニー達同様に奴隷である――に首を絞められながら俺はイリアに答える。

 ついでにヤンチャ盛りのゴブリンハーフ姉妹も俺の身体へと噛み付いて遊んでいたが、ほとんど甘噛みレベルの痛みだったのでこちらは特に問題はなかった。

 但し、その合計5人の少女達がベッドの上に倒された俺の身体の上に乗っていたため、重い事この上なかったが。



「自業自得ね」



 そう言いながらもファムシェはすぐ近くでリナリーがやり過ぎないように見張っている様だった。

 リナリーの怒りがある程度収まってきた頃を見計らってファムシェはリナリーの肩を軽く叩き、ちょっと涙ぐんでいるリナリーを慰める。

 そのままファムシェはリナリーを連れて部屋の隅に向かい、膝を抱えて座ったリナリーの横に並んで座り、何やら一方的に喋り始める。

 何となくその内容は全て俺への悪口だろうと思ってしまったのは、さて俺の偏見だろうか。



「それでは、何からお話し致しましょうか? 私のお勧めは、ハーモニー様が行った数々の悪事をまずは順を追って確認して頂く事からはじめ……」

「御前達も、俺の知らない所で暗躍していたんだな」



 まだ俺の身体に噛み付いて遊んでいた子供達を引き剥がしながら、俺はイリアの言葉を遮って言う。



「いつから計画し始めた?」



 俺の認識とは明らかに異なる状況が俺の目の前にある。

 特にアレーレが取った行動と現状との符合はまるで一致していなかった。


 となると、単純に考えてアレーレは演技していたという事になる。

 何のためにか?

 それは、俺の目を反らすためにである。

 物理的にも、思考的にも。



「いつからと聞かれましても、明確な時期は分かりません。計画したのも私達ではありませんので。ただ、その思いを抱いた時だけは分かっています」

「それはいつだ?」

「カチューシャ様達がこの空間に来られた日に、ハーモニー様が私に3回まわってワンと鳴か……」

「ウィチア」

「ハーモニーさんの口から、ここから解放されるための条件を満たす気がない事を聞いた時です」

「なるほど」



 やはり、俺が達成したという目標はその件だったか。


 不死賢者レビスにこの隔離空間へと放り込まれた際に、イリアとウィチアから聞いた条件。

 それは、この空間から解放されたければ、迷宮を作りそこで十日間連続で十人以上殺せという非道な内容だった。


 しかし俺にはその意思は全くなく、そのまま俺は今に至るまで自堕落な生活を日々続けている。

 なのに迷宮は造り、人を殺せる環境だけは造っていた。

 別に二人とも人殺しをしたいとは思っていなかったが、その俺の矛盾した行動には少なからず疑心は持ってしまったのだろう。

 当人である俺もその気持ちを持っているのだからな。


 それ故に、対策を練った。

 もしくはカチューシャ達に相談を持ちかけたのか。

 このままただ手をこまねいていても人は死んでいくばかりである。

 ならばいっそ、レビスが出してきた条件をさっさと達成してしまい、それ以上の被害が出てしまわない様にすればいい。

 迷宮管理者である俺がいなくなれば、もしかしたら……という期待もあったかもしれない。

 そんな所か。


 他の線を考えるとすれば、レビスの条件を達成する事で少なくとも俺だけは助かる見込みがあった。

 故に、助かる見込みがあるのならば助けよう、そんな思いを抱いてしまったか。


 流石に後者は犠牲が多すぎるため、普通ならばそんな思いは抱かない。

 しかしそもそもこの空間にいる事自体が普通じゃないため、そう思ってしまっても仕方がないと言えば仕方がないと言える。

 特にウィチアとイリアの二人は、ただ俺と少々関係をもってしまったために巻き込まれてしまった完全な被害者側の人間だ。

 彼女達の心境を思えば、どこへと転がっても俺には彼女達を責める事は出来ない。



「100人……殺したのか?」

「はい。殺しました」

「意図的にか?」

「はい。罪のない人も、罪のある人も、計画的にたくさん殺しました」

「何のためにだ?」

「ハーモニー様がレビス様より課せられた条件を達成するためです」

「違う。俺が聞いているのは、何のために御前はそれをしたのかだ。御前自身、何を望んでそれをした」

「それは……」



 責める事は出来ない。

 だが、だからと言って許せる筈もない。


 結果的に人が死に至る事と、意思を持って人を死に至らしめる事は違う。

 人が死ぬ可能性がある罠を作る事と、人を殺すために罠を仕掛ける事は違う。

 一見、どちらも同じ様にも思えるが、前者と後者は明らかに違う点がある。


 それは、被害者側から見た視点。

 前者は、被害者自身が選んだ未来の結果として死が訪れる事を意味している。

 しかし後者の場合、被害者自身にはほぼ選択肢がなく、理不尽な死が襲いかかってくる。


 例えば、落とし穴という罠があるとしよう。

 前者の場合、落とし穴はただの落とし穴であり、あまり深くもなかったり、落ちた後でも十分に登る事が出来たりする罠である。

 当然、落ちればダメージは受けるし、運が悪ければ死に至る可能性もある。

 だがそれは迷宮という場所において、いわば当たり前に存在する定番の様なものであり、むしろ無い方がおかしいと言えるだろう。


 しかし後者の場合の落とし穴は、その罠を発動させてしまった者の命を確実に刈り取りに向かう。

 落とし穴がある事を出来る限り発見出来ない様にしたり。

 穴の底に剣山を敷き詰めてみたり。

 落とし穴の床が開くと同時に天上が落ちてきたり。

 連鎖的に落とし穴を次々と発動させて、そもそも逃げられなくしたりなど。

 落とし穴に様々な追加要素を組み込む事で、より確実に命を奪えるように創意工夫が施される。


 俺が昔、迷宮造りを始めた際に仕込んだ罠も、実は後者だった。

 しかもその罠によって一度に多くの人を殺している。

 時期的に考えて、その者達はきっとペットな幼女の関係者だっただろう。

 俺は基本的に迷宮画面でしか情報を得る事が出来ないため、その詳細も実際にはどうたったかも知らない。

 だがそれでも、当時の俺がほとんどあまり何も考えずに命を奪うための罠を作っていた事には違いなかった。


 そんな俺が徐々に罠の造りや魔者の配置に気を使う様になっていったのは、きっとあの4人の少女達の死を間近で見てからだろう。

 そして、今もすぐ側にいるもう一人の被害者、記憶を失い完全に獣と化してしまったペットな幼女を見るたびに、俺は無意識の中で少しずつ苛まれていった。


 4人が死んでしまった原因については、既に判明している。

 そして当時の俺がその理由を知る事は出来なかった事も分かっている。


 原因は、迷宮入口付近の隠し部屋に配置した、D級昆虫眷属魔者一刺蜂(ビー・スティンガー)だった。

 別名、人死蜂と呼ばれるその魔者は、当然の事ながら毒針で敵を刺す。

 そしてそのビー・スティンガーの厄介な所は、音もなく近寄り、痛みも与えずに毒針を対象に刺す事が出来る点にあった。


 ただ、ビー・スティンガーの持っている毒は非常に弱く、毒を与えられてもほんの少しの間だけちょっと疲れた印象を受けるだけで、すぐに抵抗力によって無害化される。

 つまり、ほぼ無害にも等しい。

 そのため、ほとんどの者はビー・スティンガーの存在に気が付かず、いつの間にか毒針で刺され一時的にちょっと疲れやすくなっているものの、結局気が付かないままに終わる事がほとんどだった。


 しかし、ほとんど無害にも等しい蜂が何故魔者とされているのか。

 基本的に魔者は瘴気によって生まれるか、瘴気にあてられる事によって変異した悪しき存在の事を言う。

 ビー・スティンガーの場合は後者に部類される訳なのだが、他にいる普通の蜂に比べてほとんど大差ない存在である。

 スティンガー・クイーンと呼ばれる明らかに魔者だと言える兇悪な存在を生み出してしまう事はあっても、ビー・スティンガー自体は前述の通りほとんど害はない。

 むしろ魔者に部類されていない蜂の方が十分強力な毒を持ち合わせていたりする。

 なのに、ビー・スティンガーはD級魔者だとされている。


 その理由は、実はビー・スティンガーが持つ毒の効果が、ある一点において非常に留意すべき特性を持ち合わせているからだった。


 ビー・スティンガーの毒は、毒消し草などで簡単に解毒する事が出来る。

 薬草などでも解毒されるらしい。

 しかし解毒しない限り、毒は体内に残り続ける。

 抵抗力が毒の効果を上回り害をなさなくなっても、毒は体内に残り続ける。

 そしてある時において、その毒は突然に猛威を振るい始める。


 ほとんど無害であっても、毒は身体全身へと回っていく。

 抵抗力がある内は、毒は害をなさない。

 ならば、抵抗力が低下した時はどうなるか。


 体力が著しく低下すると、抵抗力も低下する。

 そうするとビー・スティンガーの毒は再度効果を発揮し始め、疲れやすくする。

 但し、その時には既に毒は全身へと回っているため、ビー・スティンガーに刺されたばかりの時とは比べ様もない疲労が襲い掛かってくる。


 毒が再度効果を発揮し始めるのは衰弱している時なので、そこに極度の疲労が襲ってくればいったいどうなるか。

 その疲労がまた更に体力を低下させ、毒の効果を上げてしまう。

 すると更に極大の疲労が襲い掛かる事になる。

 それはつまり……あっと言う間に人を死に至らしめるという事であった。


 ビー・スティンガーの厄介な所は、音もなく近寄り、痛みも与えずに毒針を対象に刺す事である。

 そして知らず知らずのうちに全身へと毒が回っていく。

 毒は薬草などでも簡単に解毒されるが、何らかの拍子にその解毒処理がされないと、ある時突然死が舞い降りてくる事になる。

 例えば、風邪を引いてしまった時などに。


 迷宮の入口に配置したビー・スティンガーは、迷宮へと訪れた者達全員をだいたい刺していると思うべきだろう。

 幸いにして日の光を長く浴びる事でも解毒されるらしく、迷宮の外にいる者達は刺されても問題ない。

 ビー・スティンガー自身が持っている毒も日の光を浴びる事で解毒されてしまうため、基本的に迷宮内などの日の光がない場所においてビー・スティンガーの脅威は発生する様だった。


 つまり、亡くなった4人の少女達は皆、迷宮の中でビー・スティンガーに刺された後、解毒されないまま著しく体力を消耗してしまったため亡くなったという事になる。

 逆に死ぬ事のなかった者達は、運良くビー・スティンガーに刺されていないか、刺された後で薬草などを使っていたかだろう。


 そしてその事を知った後で分かった事なのだが、カチューシャ達が迷宮内で気を失い捕らえられたのも、実はそのビー・スティンガーの毒が原因らしかった。

 薬草などの類を一切持たず(ヽヽヽヽヽ)迷宮内を随分と歩き回ったカチューシャ達は、疲れて休憩を取った所で睡魔が襲い掛かり、そのまま眠るように気を失っていったという。

 法術でも疲労はある程度回復出来るし、解毒も勿論出来るのだが、森の外では素人同然のカチューシャ達はそれをただの疲労だと勘違いし何もしなかったとか。


 後はイリアがせっせと回収し、気を失っているカチューシャ達の様子がちょっとおかしかったので適当に薬を飲ませてみたら、無事に解毒されて九死に一生を得たという訳である。


 ちなみに、カチューシャ達の前に捕らえていたまだ赤ん坊だったフォーチュラは、身体全体を布で覆っていたためビー・スティンガーには刺されなかったらしい。

 赤ん坊は元々抵抗力が低いため、ビー・スティンガーの毒は必殺となりうる。

 まぁ、他にいる普通の蜂に刺されても、赤ん坊なら普通にやばいとは思うが。


 ただ、原因が分かったからといって罪がなくなる訳じゃない。

 結果的に俺は4人を殺し、カチューシャ達を死に至らしめる寸前へと追い込んだ。

 それだけでなく、カチューシャ達の仲間も俺の迷宮が殺している。

 先に別の侵入者達の手によって捕らえられたり殺されていた者達もいた様だが、その彼等の命も俺の迷宮が奪った。


 命を奪った数だけで言えば、イリアとウィチアが今回意図的に殺した人数よりも俺の造った迷宮の方が遙かに多いだろう。

 そんな俺が、イリア達がしでかした事を責められる訳がない。

 だからといって、意図的に多くの人を殺す行為を許せるだろうか?

 それはもう人殺しではなく、殺戮者か殺人鬼である。


 ウィチアとイリアは何を思って人を殺したのだろうか?

 二人が直接手を下した訳ではない事は分かっている。

 いくら迷宮の中へと移動が出来ると言っても、二人に人を殺す力はない。


 それ以前に、迷宮内には毎日10人も侵入者達は入ってきていない。

 多い時には10人を越える事はあっても、だいたいは数人程度だ。

 0人の日だって普通にある。

 その状況をいったいどの様にして解決したのだろうか。


 いや、そんな終わった事を考えても詮無きことか。

 手段ならパッと思い付くだけで幾つか俺の頭にも浮かんでくる。

 ファムシェアやカチューシャの様子からでも、その方法は簡単に予想出来た。



「……いや、もう過ぎた事か。やはり理由は聞くまい。そもそも、そんなものを聞いた所で何も変わらないしな」



 むしろ気が滅入るだけだ。

 例え俺のために行った事だとしても、そんな事のために100人もの人を殺す様な輩から想われたくはない。

 もしキリングマシーンの如く無感情に行った行為だとしたら、それはそれでかなり落ち込むだろう。


 それに、見方によっては俺のしていた事の方がずっと残酷とも言える。

 相手が魔者だからといって奪って良い命ではない。

 それがただのゲームならば尚更だ。


 冗談半分で蠱毒の呪法が成立する様な迷宮構造を作ったり、それを繰り返して強力な魔者を作り出す行為は、十分に命を弄んでいる行為と言える。

 更に、ゲームの駒として魔の精(マギ)のウィベスなどをファーヴニル迷宮へと送り込んだりもしている。

 人の命でなければ問題がないと思うのは、いったいどれだけ命を軽く考えているのか。

 それはただの傲慢なエゴだろう。

 ウィチアとイリアがやった事と、いったい何が違うというのか。

 違わない筈だ。



「とりあえず、どうやってその条件をクリアしたのかは説明してくれ。ここに全員が揃っているという事は、何かしら関係があるんだろ?」

「はい」

「いいや、その前にアタイの報酬をよこしな。帰るのに随分と遠回りしてしまったけど、ちゃんと条件をクリアしたんだ。筋を通しな」



 そう横槍を入れてきたのはウィベス。



「報酬? いったい何の事だ?」

「なっ!? アンタ、まさかアタイを謀ったのかい!?」

「アレーレ、もしかして彼女のやる気を起こさせるために嘘を吐いたのか?」

「嘘と言われれば嘘かもしれないわね。でも、たぶんあなたは必ず叶えてくれるだろうと思ったから、嘘にはならないと思うわ」



 いやいや、例え俺が叶えたとしても嘘は嘘だろうに。



「俺が必ず叶える願い、か? それは……まぁ、あれか」

「そう、あれね」



 ウィベスとアレーレは似たような種族だからな。

 なのでやはり欲しいと思うものもやっぱり似ているのだろう。

 正直、アレーレみたいなのがもう一人増えるのは勘弁して欲しい所なのだが。

 ウィベスにはファーヴニル迷宮の攻略もしてもらっているし、それに断るのも決してやぶさかではない。



「早くくれ! すぐにくれ! アタイは気が短いんだ! アタイはアンタが欲しい!」



 そんなに強く求められたのは初めての様な気もする。

 しかし、今すぐにというのはな……。

 ここには大勢の視線があるし、それ以前に教育上宜しくない子供達もいる。

 さて、どうしたものか。



「まだお話の途中みたいだから、後にしてあげたら?」

「いやだ! アタイは今すぐに欲しい!」

「……仕方ないわね。なら、私のを少し分けてあげるわ。最近ずっと独占させてもらってたから、実はちょっと溢れ気味なの」



 そう言って、アレーレはウィベスの口を無理矢理に塞いで組み伏せた。

 その突然の行動にウィベスは勿論抵抗しようとするが、連日たっぷりと俺から力を吸い取り続けていたアレーレの力に適うはずもなく。

 あっと言う間に二人はアレーレの触手の海の中へと消えていった。


 ただ、そのままだと邪魔になると思ったのか、触手の固まりはゆっくりと壁際へと移動し、そのまま壁を登って天井の隅へと移動する。

 何となく部屋の景観が悪くなった気もするが、あまり意識しないでおくとしよう。

2014.02.16校正

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